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年始からバブル後高値更新の日経平均、今は売るべき?買うべき?株価が上がった3つの要因。長期投資家が取るべき戦略=栫井駿介

2024年に入ると、日経平均株価が大きく上がって、3万5,000円を超えました。これは34年ぶりの高値となっています。なぜここまで上がっているのでしょうか?そして、今、投資家はどのように動くべきかということについて考えてみたいと思います。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』栫井駿介)

プロフィール:栫井駿介(かこいしゅんすけ)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。

日経平均、なぜ上がった?3つの要因

これは年明けからの日経平均株価の推移です。

日経平均株価 15分足(SBI証券提供)

3万3,000円台のところから一気に3万5,000円を超えるほどとなりました。
2023年から調子は良かったのですが、今年に入るとさらに上がった形です。

株式市場には多くの投資家がいて、それぞれの思惑あるので、株価が上がった要因を一概に示すことはできませんが、「株価が上がる」ということを「より高値でも買いたい人がいる」点にしぼると、いくつか要因が考えられます。

<要因その1:新NISA>

2024年から新しいNISAが始まって、成長枠と積立枠を合わせて年間360万円までNISAで買えるようになりました。
これによって、個人投資家が買いに動いていることももちろんありますが、特にお金持ちの人たちが今年のNISAの成長枠240万円をいち早く埋めてしまおうとしたことが、この株価上昇の一因であることは間違いないと思います。

中・小型株ではなく、日経平均を構成するような大型株が上がっていることから、大きなお金を持っている人がとりあえず買っているという動きが見て取れます。

<要因その2:ご祝儀相場>

新年は「ご祝儀相場」と呼ばれて、株価が上がりやすい傾向にあります。

これはファンドの仕組みによるものです。
ファンドは年ごとのパフォーマンスを評価されます。
昨年は調子が良く、それがもし年末に株価が下がると年間のパフォーマンスが落ちてしまうので、そうならないように利益確定をして一度手仕舞いをすることが多いです。

特に外国のファンドマネージャーだと、年末はクリスマス休暇があり、その前に手仕舞い売りをします。

そして新年になって、今年の投資を始めるにあたってまず買うということになります。

<要因その3:日本が好調>

世界から見ると、日本株はアジア株に含まれます。

これまではアジア株といえば中国が大きかったですが、現在の中国は状況が良くありません。
習近平国家主席の元、市場経済というよりは共産主義寄りの政策が行われていることに加え、不動産バブルも崩壊し、人々が裕福というわけでもなくなりました。

中国が投資先として適さなくなり、その中でアジアに投資をするなら日本が選ばれているということです。
日本はコロナからの回復が遅れたこともあり、ヨーロッパなどよりも経済状況が堅調で、さらに円安なので日本企業は業績を伸ばしやすくなっています。

Next: このままバブル超えまで行く?今は売るべきか、はたまた買うべきか



今は売るべき?買うべき?

これだけ株価が上がっていると、今売ったほうが良いのではないかと思えるかもしれません。

しかし、過去の事例や投資の偉人の言葉を考えると、今は売るべきではありません。
なぜなら、今のような上昇局面では株価は上がるところまで上がるからです。
そもそも長期投資では「売らない」という大前提がありますが、その前提を考えないとしても今は持ち続けて上昇に乗っておくべきだと思います。

逆に買うべきかというと、少し慎重になる必要があります。

長期投資では、数年後には今よりも株価が上がっているだろうということで投資をします。
しかし、数か月という中期的な期間で考えると、株価が今よりも下がっている可能性もあります。
株価が上がる想定で投資を始めたのに下がってしまって、投資を辞めてしまうことになるともったいないということです。

日経新聞にこのような記事も出ています。

10年以上にわたり上場投資信託(ETF)を購入し、事実上の株価下支えという異例の取り組みをしてきた日銀が、2023年に株式の売り手に転じたもようだ。暦年ベースで株式の売り手になるのは、10年のETF買い入れ開始後では初めてだ。

23年は、日経平均株価が28%上昇するなど日本の株式市場の環境は良好だった。海外投資家の資金のほか日本企業の自社株買いも株価を支えた。日銀の買い手としての存在感が低下する――

出典:日銀、2023年は株式の「売り手」に ETF購入開始後で初 – 日本経済新聞(2024年1月9日配信)

これまで日銀は日本株を買い支えるために日経平均のETFを買ってきていました。
このETF自体を売っているわけではありませんが、銀行の財務整理のために日銀が買っていた株を売り始め、売り越しに転じたということです。
日銀が売り手にまわることで、少なくとも株価の上昇を抑制することになりますし、日経平均は今上がっているので日銀としては買ったETFを処分するには良いタイミングとなっています。
実際にETFの売却計画が発表されたわけではありませんが、投資家はそれを意識して買うことを躊躇して株価の上昇がストップする可能性もあります。

 

また、新NISAの始まりで1月に買いが集まり、2月以降は買いの需要が少なくなることも考えられます。

とにかく、今ほどの上昇がいつまでも続くわけではなく、どこかで下がるタイミングもあるでしょうし、悪いニュース等で突発的に大きく下がることもあるということを分かった上で投資するべきだということです。

ただ、数年以上の長期で考えると上がっているだろうという自信を持って投資することも大切です。

Next: 「稲妻が輝く瞬間」に居合わせることが大事?どういうことか



「稲妻が輝く瞬間」に居合わせることが大事

チャールズ・エリス氏の『敗者のゲーム』という本に、「稲妻が輝く瞬間」という概念があります。

敗者のゲーム』(著:チャールズ・エリス/刊:日経BPマーケティング)

30年間株式投資を行ったとして、大きく株価が上昇した期間は限られていて、その期間(稲妻が輝く瞬間)である、合わせてわずか10か月のに株式を持っていなかったとすると、30年の投資のパフォーマンスが3分の1になってしまうということです。

つまり、「タイミングを計ろうとするな」ということです。

どうしても、安い時に買って高い時に売ろうとしてしまいますが、そもそも株価の動きは読めるものではなく、タイミングを計ろうとしている間に大きく上がる瞬間を逃してしまうことになってしまいます。

一時的には下落するかもしれないというリスクを負いながら、持ち続けることで高いパフォーマンスを出すというのが私が選ぶ長期投資です。
もちろん、銘柄は厳選する必要はありますが、とにかく買って持ち続けることで、今回のような株価上昇の恩恵を受けることができるのです。

(※編注:今回の記事は動画でも解説されています。ご興味をお持ちの方は、ぜひチャンネル登録してほかの解説動画もご視聴ください。)


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バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』(2024年1月16日号)より
※記事タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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