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米雇用統計の展望と戦略〜上振れに期待して押し目買いが吉?数字を見てからの有効なドル円トレード戦略も=ゆきママ

2024年は米国の利下げでドル安、そして円高になると言われていましたが、蓋を開ければ年明けからドル円は大きく切り返し、上昇を続けて1ドル=150円台の大台に迫ろうかという場面も。今日の雇用統計は、今年のドルを占う上でも重要なイベントとなりそうです。展望と戦略について、しっかり解説して行きますので、よろしくお願いします。(ゆきママ)

年末からのシナリオが大きく崩れ、絶対的な日米金利差を意識か

そもそも昨年末に急激にドル安・円高が進んだことで、年明け以降も同様のトレンドが続くといった想定でした。

しかし、昨年末のトレンドの背景となった日銀のマイナス金利解除からの金融政策正常化で円高というシナリオは、能登半島地震の発生を受けて後退。経済へのダメージを見極めるまでは、解除はできないという見方が優勢に。

そうこうしているうちに1月23日の日銀会合後の記者会見で、植田日銀総裁が「マイナス金利解除も極めて緩和的な金融環境続く」として、解除はしても利上げといった金融引き締めは当面行わないことを明言。

また、世界的なインフレが終了し、米国も景気の下振れリスクが意識されたことで、FRB(米連邦準備制度理事会)はかなりのハイペースで利下げを行うのではという見方となり、22年、23年と買われ過ぎていたドルが一気に売られました。

ですが、年明けからの米国の経済指標は目を見張るような強さで、多くの経済指標が予想を上振れ、これを受けて前のめりで利下げを織り込む動きが一気に後退し、ドル高に。

結局、日本が利上げして米国が利下げをすることで、大きく縮小すると予想されていた日米金利差が、長期にわたって維持される公算が高くなり、ドル円は高い水準が維持される結果となっています。

️雇用の需要そのものは多く、季節調整からも上振れに警戒

今週行われたFOMC(米連邦公開市場委員会)で、パウエルFRB議長は3月利下げの可能性は高くはないと思うとしたことで、5月からの利下げ開始が織り込まれています。

一方で、雇用が悪化すれば早期利下げもあり得るとして3月の利下げに含みを残しており、本日発表される雇用統計は非常に重要な意味を持つことになります。

雇用指標の結果(青は改善・赤は悪化、数値はいずれも速報値)

直近の雇用指標を見ると、やや悪化しており、雇用が鈍化傾向にあることが伺えます。実際に、最近はハイテク企業を中心に人員削減のニュースが目立っています。

とはいえ、大企業の人員削減は続いているものの、JOLTS(米雇用動態調査)の求人件数が上振れして高水準を維持していることからも分かるように、相変わらず職を選ばなければ仕事がある状況は継続しています。

雇用統計の雇用者数の数字は、副業や兼業が寄与しているという指摘があるように、引き続き雇用そのものの数字はそれなりに堅調さが維持されそうです。

さらに、例年1月分の雇用者数は上振れしやすいことが指摘されています。昨年も今年と同様に解雇の増加や悪天候などが指摘されていましたが、蓋を開けてみれば+51.7万増というビッグサプライズでした。

季節調整(時期的要因を排除するために調整する)の影響が指摘されていますが、今年も当然この影響があるため、上振れには警戒しておきたいところでしょう。

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️上振れに期待して押し目買いも!今夜の想定は1ドル=145.00〜148.00円

初動の動きは非農業部門雇用者数の数字次第となりますが、予想の+18.0万人を大きく下回り、+10万人以下の数字にでもならない限りは、3月利下げを強く織り込むこともないでしょう。

そういった意味で、今の1ドル=146円台半ばという水準は、まずまずニュートラルな水準と考えられます。

弱い数字が出ると、昨日の安値となった146.00円前後が意識され、割り込むと145.00円の大台節目を試すことになるでしょう。

ドル円チャート(日足)

逆に強めの数字となった場合は、147円台乗せから148円台を試すことになりそうです。

ただし、流石にFOMCでは利上げスタンスは正式に修正されており、次は利下げということが確定していますから、強い数字が出たところで以前のような利上げを警戒する動きにはなりにくく、上値も限定的と考えられますので、強い数字が出ても初動で利食いすることを心がけましょう。

昨年もそうでしたが、+30万人増、+40万人増といった非常に強い数字が出ても、初動こそは大幅なドル買いで反応しますが、徐々に季節調整要因といった、いわゆる“バグ”であることが意識され、最終的には結論先送りで全戻しになりがちですからね。

強めの数字が出たからといって、上昇トレンドには繋がりにくいので注意しましょう。再び1ドル=150円といった水準に戻すためには、二の矢、三の矢が必要な状況です。

結論としては、発表前に146円台半ばから下の水準では、強めの数字に期待してロング(買い)で入っても良さそうです。強めの数字が出れば、初動で利食い。逆に弱い数字が出た場合は、損切りしていったん撤退でしょう。3月利下げを織り込むことになると、ズルズル下げていく展開も考えられます。

数字を見てからの場合は、どちらかというと天井を確認して戻り売りも試したいところ。特に148円台では上値が重たいですから、軽めに売って全戻しを期待したいところです。

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image by:Dasian / Shutterstock.com

本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2024年2月2日)
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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