2022年5月27日に公表された国の調査では、全国の6割余りの自治体で防災担当部署に女性職員が1人もいないことが明らかになっていました。そして2024年1月1日、内閣府の調査によると、能登半島地震で被害が大きかった石川県の19市町のうち、防災・危機管理部局に女性職員が1人もいない自治体は10市町もあります。さらに、防災担当部署の女性の割合が10%以上の自治体と避難所の備蓄品を比較したところ、女性職員がいない自治体では「女性用の下着」や「生理用品」「哺乳瓶やおむつ」「簡易トイレ」などの項目で備蓄が進んでいない傾向が見られたということもわかっていました。(『 らぽーる・マガジン らぽーる・マガジン 』原彰宏)
※本記事は、『らぽーる・マガジン』 2024年2月19日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はこの機会に今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
防災担当部署「女性職員ゼロ」の自治体が6割
「避難所で突然生理が始まったが、生理用品が足りずにもらえなかった」
「避難所に仕切りがなく、みんながいる場所で授乳しなければならずストレスを感じた」
……東日本大震災や熊本地震などの被災地では、こうした女性の問題が相次ぎました。豪雨や地震などが相次ぐなか、女性の視点を取り入れた災害対策は喫緊の課題となっていました。
そして、今年の令和6年「能登半島地震」でも、当時と同じことが起きてます。なんの反省も改善もされてはいません。
2022年5月27日に公表された国の調査では、全国の6割余りの自治体で防災担当部署に女性職員が1人もいないことが明らかになっていました。
そして2024年1月1日、内閣府の調査によると、能登半島地震で被害が大きかった石川県の19市町のうち、防災・危機管理部局に女性職員が1人もいない自治体は10市町もあります。
避難所を開設した13市町では、半数近い6市町で女性ゼロでした。東日本大震災や熊本地震災害が起きた後の調査(2022年5月、初めての全国1,741の自治体を対象に防災担当部署の女性職員の割合調査)の結果、全体の61.9%(1,078自治体)で防災担当の部署に女性の職員が「ゼロ」、つまり1人もいないということが明らかになっていました。
今回、被害が大きかった能登地方の9市町では、珠洲・輪島・七尾の各市と中能登町が「女性ゼロ」。他の市町も割合は違いますが、女性は1人だけ。
県内の全市町で、防災・危機管理部局の女性管理職はいなかったとのことです。
また、地方防災会議の女性委員割合について、石川県内で政府目標の30%を達成しているのは野々市市(33.3%)のみ。大半が20%を下回り、輪島市は職員とともに女性ゼロでした。
2022年調査では、たしかに石川県全体では、防災担当部署に女性職員がいない割合が高い自治体という認識は薄いながらも、奥能登においては、女性職員が少ないという事実が浮き彫りになりました。
県全体の数字からは見えない実態です。
2022年調査でも、防災担当部署にいる女性職員の割合は全国平均で9.9%という低い実態が明らかになっていて、 2018年度時点での一般行政職の地方公務員全体の割合(31%)と比較すると、女性の配置が遅れている状況がわかっていました。
さらに、防災担当部署の女性の割合が10%以上の自治体と避難所の備蓄品を比較したところ、女性職員がいない自治体では「女性用の下着」や「生理用品」「哺乳瓶やおむつ」「簡易トイレ」などの項目で備蓄が進んでいない傾向が見られたということもわかっていました。
女性の困りごとやニーズは男性より女性の方が気づきやすく、被災した人の体調の悪化や精神的な負担を防ぐためにも、自治体は重く受け止めて対策を考えるべきだという指摘がありました。
首都圏の女性ゼロの割合は茨城・栃木・群馬・千葉の各県で全国より高かったようですが、東京都は15市町村(24.2%)で女性がいなかったという結果です。
Next: 災害時にもジェンダーギャップ……どうすれば見直されるのか
災害時にもジェンダーギャップ
日本の大きな課題である男女不平等…。
「防災とジェンダー」について研究する静岡大学教授の池田恵子さんは「防災の現場に女性が少ない現状は、いざ災害が起こったときにさまざまなリスクをもたらす」と警鐘を鳴らしています。
※参考:女性ゼロが6割の防災分野「根底にある性別分業意識は、災害後の女性のキャリアも脅かす」 – 女の転職type
すでに過去の反省が、今回の災害でも生かされていない、指摘された女性職員の少なさが改善されていませんでした。
日本社会における、女性職員の必要性に対する意識の低さの表れでしかありません。
またこの記事で池田教授は「ジェンダーギャップは災害後の女性のキャリアにも深刻な影響を及ぼす」と指摘されています。
記事にはこうあります。
電気やガスが止まった状況下で、誰が家族のために水や食糧を確保するのか。
保育園が被災して休園になった場合、誰が家に残って子どもの面倒を見るのか。
共働き夫婦がこの選択を迫られたとき、大半の家庭では男性が出勤し、女性は仕事を休むことになる。
また保育園が再開しても、女性自身が「なるべく子どものそばにいたい」と考え、自らキャリアダウンを選ぶケースも少なくない。
池田さん「震災発生後は地震や津波の記憶がトラウマになってしまう子どもが多く、母親のそばを離れたがらない。母親にべったりになることが多いんです。
これは普段から父親が育児に参加していないことも影響していると考えられますが、母親も「怖がっている子どもと離れていいのか」と思い悩み、役職に就いていた人が降格を申し出たり、フルタイム勤務の人がパート勤務に切り替えたりする事例が見られます。
私も母親なので気持ちは分かりますが、一方でこれは女性自身にも「私がケアを担わなくてはいけない」という刷り込みがあることを示しています」。
確かに、震災後の失業率も男性より女性の方が高い傾向にあるのも事実です。
女性は非正規雇用の割合が高く、震災によって一時的に業務が減ったり、企業の業績が落ち込んだりした場合、真っ先に非正規雇用の人材が解雇の対象になるためであって、平時から社会に潜んでいる課題が災害時には増幅されて表面化すると、池田教授は指摘しています。
Next: 日本のジェンダーギャップ指数は146カ国中125位
日本のジェンダーギャップ指数は146カ国中125位
いざというときに家庭を守るのが女性の役目だ……宗教保守が言いそうな表現で、産後に現場復帰した女性キャリアの保証と同じ問題ですね。
女性が……という言葉にすべてを押しつけるものではありませんね。
男女平等の達成度を測るジェンダーギャップ指数で日本は、調査対象146カ国中125位で過去最低でした。
いろんな場面で、異常事態であればあるほど、日本社会はジェンダーギャップが露呈するものが秘められているのですね…。
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