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富士山「通行料2000円」条例が山梨県で成立も今後は静岡が混雑?深刻化する観光公害…米国の観光ガイドではすでに「避けるべき旅行先」に選出済み

富士山への登山者のうち、山梨県側から登る者に対して1人当たり2,000円の通行料の支払いを義務化する条例が、山梨県議会において可決・成立したと報じられたことが、大きな波紋を呼んでいるようだ。

去年の夏山シーズンにはコロナ禍前とほぼ同じ水準に回復した富士山への登山者だが、いっぽうで夜通しで一気に山頂を目指す“弾丸登山”や、登山者のマナー違反が問題視されることに。山梨県は登山者の適正な管理が必要だとして、吉田口登山道からの通行料の新設や登山者数の制限などを盛り込んだ条例案を提出していた。

条例では、5合目にゲートを新設したうえで、新たに1人当たり2,000円の通行料の支払いを義務づけるとともに、ゲートを通過できる1日当たりの登山者数に上限を設けるとのこと。条例は今年7月1日の山開きに合わせて施行されるという。

静岡側は新たな通行料徴収の予定は特になし?

南は静岡県、北は山梨県に挟まれる形でそびえる富士山。富士山の登山口と登山ルートは、山梨県側の「吉田」にくわえ、いずれも静岡県側の「須走」「御殿場」「富士宮」の4つが存在するわけだが、道中の山小屋の多さにくわえ東京都内からのアクセスが良いなどの理由で、富士登山者の約6割が山梨県の吉田から山頂に向かうのだという。

そんな富士山も、2013年に世界遺産として登録されて以降、日本を訪れる外国人観光客の間でもさらに人気が高まった感があるのだが、そのいっぽうで来訪者が急増したことによるトラブルが、特に昨年の夏山シーズンにおいては多く伝えられることに。

先述した“弾丸登山”に関しては、あたかもピクニックに行くような軽装で臨んだ挙句、登山中に寒さしのぎに山荘に無断で侵入する者や、暖を取るために焚火を勝手に始める者も続出。また、その手の人間は当然のようにゴミを持ち帰ることはせず、トイレなどに大量に捨てていくといった光景も連日のように展開された。

【関連】その多くは技能実習生?迷惑な“弾丸登山”“野宿”の横行でカオス化する富士山。入山者数“調整”のため安すぎる入山料の大幅値上げもやむなしとの声も

重大な事故の発生も懸念されるようなそんな状況を受け、それまでは富士山の保全協力金としてひとり1,000円、しかも任意でしか徴収していなかった入山料を、より高額にしてしっかりと義務付けることで、お気楽な気持ちでの登山者を少しでも抑えたいといった思惑のよう。

それだけにSNS上では、今回の条例施行を「当然のこと」と捉える向きが多いようで、さらには2,000円という通行料の価格が「安すぎる」といった声も多くあがっているところ。しかしその反面で、静岡県内の地元メディアからは、山梨県が通行料徴収を始めれば、とくにそういった予定のない静岡県側の各登山口が今後混雑するのでは……といった懸念も浮上しているようだ。

避けるべき旅行先としてあがった「Mount Fuji」

そもそも富士山に関しては、2013年の世界遺産登録に際してユネスコの諮問機関であるイコモス(国際記念物遺跡会議)から「人が多いので来訪者のコントロールが必要」などといった懸念点を指摘されていたとのこと。

そういった意見に対して今回、いわば10年越しでようやく応えるといった格好となったわけだが、その背景にはここに来てインバウンドらの間でも“富士登山は危険”との見方が俄かに広がりつつあるといった状況もあるようだ。

というのも2023年11月、アメリカの観光ガイド専門出版社であるフォーダーズ社が「NO LIST 2024」、世界中の観光スポットの中で旅行先として避けるべき9か所のリストを発表したのだが、そこにはしっかりと「Mount Fuji, Japan」の名が。

その端的な理由としては「訪問者は富士山登山のリスクと悪影響を十分に認識しておらず、神聖な山頂に超満員で身体的な危険にさらされています」とあり、まさに今回取沙汰されている問題そのものを指摘されている格好だというのだ。

ちなみにこの「NO LIST 2024」には、富士山と同様にオーバーツーリズムによる環境悪化がかねてから取沙汰されているイタリアのベネチアも名を連ねているのだが、そんなベネチアといえば昨年、世界遺産の登録が下手をすると取り消される可能性を孕む「危機遺産」への登録を、ユネスコによって取沙汰されるまでに至ったことが。

同様の問題を抱える富士山も、下手をすれば世界遺産の取り消しといった事態を招きかねない……ということで、ここに来て焦って入山者のコントロールを試みる施策を始めたといったところだが、先述の通り山梨県側の取り組みだけでは片手落ちとなる可能性も大いにあるということで、今後は山梨・静岡の両県がどう足並みを揃えるのかも大きな課題となっていきそうだ。

Next: 「静岡側もやらないと…」



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image by:Guitar photographer / Shutterstock.com

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