マネーボイス メニュー

【米雇用統計】円高へのトレンド転換はまだ先か。トレード戦略は「押し目買い」が吉=ゆきママ

今月も月に1度のお祭り相場、雇用統計の時間がやってまいりました!特に今回は注目度高めのイベントとなっておりますので、しっかり数字を確認していただければと思います。それでは、現状の相場と本日の展望、具体的なトレード戦略について解説していきますので、よろしくお願いします。(ゆきママ)

市場の注目はインフレから景況感へ

これまでは、金融当局の金融政策、特に期待されていた金利の引き下げに関しては、インフレが落ち着くことが必要条件だったため、CPI(消費者物価指数)を中心としたインフレ指標が注目されていました。

しかしながら、インフレに関しては期待を裏切り続ける粘り強い数字が出続け、市場も早期の利下げ期待については諦めモードになりました。

逆に、最近はしつこいインフレから高金利が継続することで、いわゆる引き締め過ぎへの懸念が強まりました。

高金利政策とは、経済にブレーキをかけると同時にインフレを抑制することを意味しますから、ブレーキのかけ過ぎで、どこかで景気が急激に悪化するのではないか、という見方です。

したがって、マーケットにとってしつこいインフレは想定内となっていく中で、景況感への懸念、注目度が高まっており、これまでやや脇役となっていた雇用統計への注目度が増しているという状況になっています。

雇用指標は弱め、ドル円は株価次第か

先行して発表された雇用関連の指標は、全体的に弱めの数字が並んでいます。もっとも、極端に悪いというほどではなく、ISMなどの先行データ(調査機関が実施したアンケート調査の結果に基づく、景況感などを示す経済指標)を見る限り、まずまずの数字が期待できそうか。

雇用指標の結果(青は改善・赤は悪化、数値はいずれも速報値)

米国の早期利下げを確信させる、市場の警戒する景況感の大幅な悪化が示唆されるような数字が出るかどうかが、今回も焦点となります。

景況感という意味では、最も重要な非農業部門雇用者数の予想が+19.0万人となっており、そこそこ強めの数字が意識されています。

最近のドル円・クロス円の値動きを見ると、金利が低下してもさほど下落にはつながっておらず、どちらかというと株安のリスクオフ(回避)の値動きに反応して円高になっていますから、雇用者数で弱い数字が出て株価が崩れることが、下落の必要条件となりそうです。

また、前月比+0.3%・前年比+3.9%と予想されている平均時給(賃金上昇率)が予想を大幅に上回り、利上げの可能性を意識させるような数字となって、株価が極端に崩れることになれば、米金利が上昇していても円高になる可能性があります。

直近のドル円・クロス円は日本と海外の金利差との乖離が強まっていますから、本日の雇用統計もそれを踏まえた上で戦略を考えていきたいところです。

Next: 極端な円高にはなりにくい?押し目狙いで1ドル=154.50-156.50円



極端な円高にはなりにくい?押し目狙いで1ドル=154.50-156.50円

仮に雇用が悪化したら悪化したで、いよいよ景気減速なのだから利下げを織り込むことになるわけで、株高からの円安継続パターンもあり得るわけで。

逆に雇用が良いなら良いで、まだ景気は大丈夫ということで株高、このところ下がっていた米金利も上昇して、一段とドル高・円安が加速するパターンも考えられます。

いずれにせよ、楽観気味で上がり続けている株価がドル円・クロス円の下支え、円売りをサポートするわけで、極端な円高というのは想定しにくい状況にあります。

もちろん、平均時給があまりに強過ぎて株式市場が動揺して株価が暴落というパターンなら円高になり得るわけですが、可能性としては低いでしょう。

というわけで、強い弱いにせよ、トータルでかなりクリティカルな数字が出てこない限り、なかなか米国の継続的な利下げというのも見えてきませんから、そう簡単に円高トレンドになるというのは早計かなと思います。

実際にカナダ中銀やECB(欧州中央銀行)が利下げを行いましたが、継続性が見込めないということで、さほど円高にはなっていませんからね。むしろ、ユーロ円は歴史的な高値水準にいるほどです。

ドル円・日足チャート

したがって、基本的には軽く買いつつ押し目を狙っていくスタイルで問題ないように思います。

上値に関しては、156.30-156.50円レベルがレジスタンスゾーン(抵抗帯)となっており、ここを抜け切れるかどうかがポイントとなります。

逆に下値に関しては、50日移動平均線が155.00円のちょうど大台節目まで競り上がっており、ここの攻防がポイントとなります。

155円の大台を割り込んで、直近の安値となった154.50円を割り込んでいくようだと、5月中旬の安値となった153円台半ばぐらいまでは下値が広がりやすくなります。

具体的なトレード戦略としては、発表前に155円台半ばぐらいにいるのであれば、軽くロング(買い)して発表を待ちたいところでしょう。

非農業部門雇用者数が10万人台を割り込むとか、極端な数字が出ない限り、株安にもなりづらく、下値は限定的と考えています。

155.00円前後からは厚めに押し目を拾いつつ、154.50円割れで一旦損切りでしょうか。その後は株価や金利次第ですが、まずは下値を確認したいところ。

逆に利食い目標は156円台で、156円台半ばをあっさり抜けていくような強さがなければ来週の日銀会合待ちで1ドル=154.50-156.50円レベルのレンジが継続しそうなので、そのつもりで。

いよいよトレンド転換といった声も増えてはいますが、株価が上がっている限りは決定打が足りないといったところでしょう。

むしろ、日銀会合を通過すれば円売り加速の可能性も十分です。スワップも踏まえると、まだ押し目買いスタンスで良さそうです。

【関連】日銀「マイナス金利解除」で日本は長い苦難の道へ…政府・企業・私たちの生活はどう変わるか=岩崎博充

【関連】マイナス金利解除で株価や私たち生活はどう変わる?誰もがやっておくべき資産防衛=栫井駿介

【関連】なぜ今「FX投資」に脚光?ドル円の歴史的変動を味方に付ける投資術〜ゼロから始めるFX(1)=安恒理

image by: Shutterstock AI Generator / Shutterstock.com

本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2024年6月7日)
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

シェアランキング

編集部のオススメ記事

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MONEY VOICEの最新情報をお届けします。