トランプ大統領の「グリーンランド買収」発言が話題になりましたが、実はその背景には米中の覇権争いがあります。特に、地球温暖化によって注目を集める北極海と、豊富な資源を持つグリーンランドを巡る争いは、単なる突飛な発言では片付けられません。2019年にも取り上げた「氷上のシルクロード」と「北極の宝」を改めて掘り起こし、米中関係の変化とともに分析します。(『 らぽーる・マガジン らぽーる・マガジン 』原彰宏)
※本記事は、『らぽーる・マガジン』 2025年1月28日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はこの機会に今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
トランプ大統領の「グリーンランド買収」発言とその背景
トランプ大統領の唐突とも思える「グリーンランド買収」発言は、彼の独特なキャラクターの延長線上にあるものとして受け止められ、デンマーク領グリーンランドがどのようなところかも含めて注目を集めました。
しかし、この発言の背後には、米中の安全保障や経済的な争いが隠れています。
「グリーンランド × 安全保障」で思い出すのが、2019年3月に書いた記事「中国の野望『北海開発』と『宇宙戦争』」です。第一次トランプ政権において、すでにグリーンランドを巡る中国と米国との争いを記事にしていました。
当時、中国は勢いに乗り、米国は財政的に厳しい状況。ビジネス志向のトランプ氏と、野心を全面に押し出す習近平氏の対立が世界的な関心を集めていました。
このときのメルマガの目次は次のようになっていて、マネーボイスにもアップされています。
・地球温暖化が呼び覚ます北極海の価値
・中国による「氷上シルクロード」計画
・対立だけでなく協力も
・2040年原子力宇宙スペースシャトル開発
当時に指摘した「北極海の宝」について、いま一度、掘り起こしてみましょう。
「地球温暖化……これが眠れる氷海『北極海』を呼び覚ましました。氷の下に眠る、天然ガスや石油など豊富な資源が、大きなビジネスのターゲットとなったのです」と記事で指摘しました。
北極は「第二の中東」…北極海には、石油・天然ガスの地下資源が豊富に眠っていると報告されていて、それが地球温暖化でクローズアップされたということです。
そして地球温暖化は、これら天然資源の存在を表に出しただけでなく、海氷面積が縮小したことにより、輸送航路としての北極海の価値も高まってきました。
極東と欧州を結ぶ場合、インド洋からスエズ運河を通る航路だと2万キロに対し、北極海航路だと1万3,000キロと6割強しかなく、輸送時間も10日間ほど短縮することができます。
北極海をめぐる経済的価値(権益)は、「北極海航路」と「地価資源」にあると言えます。
この内容を最初に取り上げた2019年当時は、中国に勢いがあったでしょうが、今は当時と比べて、体力が落ちています。
当時の米中関係のパワーバランスは変わっているのではないでしょうか。
中国の北極海への関与に関して、当時に書いた文章をそのまま掘り起こしますと……
<中国による「氷上シルクロード」計画>
中国主導の広域経済圏構想「一帯一路」に関しては、以前に当メルマガで取り上げました。
「一帯一路」には、「陸のシルクロード」と、南シナ海を通って南下する「海のシルクロード」があります。そして実はもう1つ、地球温暖化で氷が解けており、船舶の通航や資源開発が容易になった北極海で権益拡大をめざす「氷上のシルクロード」計画があるのです。
中国外務省は2018年1月26日、白書「中国の北極政策」を発表し、北極海における天然資源や新航路の開拓に意欲を示しました。
これまで北極圏の開発は、沿岸国のアメリカ、カナダ、ロシア、ノルウェー、デンマークが中心となってきました。そこに中国が、新たに参入してきたのです。
中国は白書で「北極圏に最も近い国の1つ」と自国を位置づけ、経済や環境など幅広い分野で北極の利害関係国だと明示しています。具体的に「企業が北極海航路のインフラ建設や商業利用に参加することを奨励する」「企業が石油や天然ガス、鉱物資源の開発に参加することを支持する」と盛り込んでいます。
<中国が狙うのは「グリーンランド」>
中国が狙いを付けているのが「グリーンランド」です。
国土の大部分が北極圏に属するグリーンランドは、デンマーク領ですが、自治政府があります。日本のおよそ6倍の面積がある世界最大の島ですが、人口はわずか5万6,000人ほどで、国土の80%以上が氷に覆われています。
その氷の下には、希少資源のレアアースなど豊富な天然資源が眠っていることが確認されています。
中国は、グリーンランドへの投資を加速しています。
2019年時点で、すでに中国はグリーンランドの3か所でレアアースやウランなどの開発に投資していて、グリーンランド側も中国からの投資に前向きだと指摘しています。
グリーンランドは、デンマークからの独立を悲願としているのですが、目立った産業がなく、行政予算の半分をデンマーク政府からの補助金に頼っているのが実情です。
それゆえ、中国からの投資によって経済的に自立できれば、独立への道が開かれるとの思いが広がっています…。
Next: 狙いは宇宙開発?トランプはグリーンランド買収に本気だ
第2次トランプ政権と宇宙開発の行方
これらの内容は2019年に指摘した内容です。この記事は第1次トランプ政権真っ只中のときに書きましたが、当時の予測が現実味を帯びてきました。
トランプ氏が米大統領に返り咲いてすぐにグリーンランドに関して言及することには、頷けますね。
2019年の記事では、「北極開発」と並行して「宇宙開発」についても述べています。第2次トランプ政権でも、「スペースX」率いるイーロン・マスク氏の存在を見ても、宇宙開発に力を入れていることが伺えます。
トランプ大統領にとっては、時間は4年しかありません。組閣も迅速に行われそうで、ここからはスピーディーに物事が進みそうな感じです。良い悪いの評価は別にして…。 ※2025年1月中に初月無料の定期購読手続きを完了すると、以下の号がすぐに届きます。 ※本記事は、『らぽーる・マガジン』 2025年1月28日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はこの機会に今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。 ※初月無料の定期購読のほか、1ヶ月単位でバックナンバーをご購入いただけます(1ヶ月分:税込330円)。
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