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コメ価格が2倍に高騰…なぜ備蓄米放出も止まらない? 背景に「農家が儲からない」構造=原彰宏

価格高騰が続くコメ。備蓄米の放出という政府の対策も、今のところ効果は見られません。1年前と比べて2倍以上に跳ね上がった価格の背景には、単なる需給バランスの乱れだけでなく、日本の農業が長年抱える構造的な課題が横たわっています。なぜコメは高くなったのか?なぜ生産量が増えないのか?その根っこにある「農家が儲からない仕組み」を読み解きます。(『 らぽーる・マガジン らぽーる・マガジン 』原彰宏)

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※本記事は、『らぽーる・マガジン』 2025年4月21日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はこの機会に今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

なぜ?備蓄米放出後も値上がり中…

お米の値段は高騰したまま、備蓄米放出後も下がりません…。

政府の備蓄米は1回目の入札で14万トンあまりが落札され、3月下旬から順次、店頭に並び始めています。

備蓄米が店頭に並び始めた期間を含む3月30日までの1週間の全国のスーパーでの平均価格は、5キロあたり税込みで4,206円と、13週連続で値上がりしました。

今のところ備蓄米による価格押し下げの効果はみられません。

そもそも1年前の2024年2月の段階では、コメ5Kgの値段は平均で2,030円ぐらいでした。

一般的に物の値段は、市中の「需要と供給のバランス」で決まります。供給過多だと価格は下がり、供給が需要に追いつかなければ価格は上がります。

ちなみに、いま日本で起きている「物価高」は、仕入れや人件費などの“生産コスト”の高騰による販売価格上昇によるもので、好景気により需要が旺盛になったことにより物価高ではありません。

備蓄米を増やしてもコメの価格が高騰している理由として、「コメの流通」の問題と、「コメの需要」の問題が考えられます。

コメの流通に何らかの問題があるということで、それは、生産者から消費者に届くまでの間に、何らかの“目詰まり”があるというものです。

投機、買い占め……。
将来の値上がりを期待しての買い占め、飲食店等の業者による直接買い付けが考えられます。

たしかにコメの流通にも問題がありますが、そもそも、需要が伸びているというよりも供給不足であるということがあります。

パン食の普及や人口減少によりコメ消費は減少しています。それでも供給不足であるとは一体どういうことでしょう。

需給バランスが崩れることによる価格高騰……このコメ価格の高騰を受けて、根本的な“日本の農業のあり方”が問われているように思えます。

増産しても農家は儲からない?

コメの生産量を増やせば需給バランスは改善されるのでしょうが、生産量を増やしても農家は儲からないという構造上の問題があるように思えます。

・兼業農家が大半を占める
・小規模農家が多い
・IT化遅れなどによる非効率的な生産過程
・農業従事者の高齢化
・後継者問題の深刻化
・販売ルートが拡散していない
・輸出に非積極的
・競争(特に海外との)意識のなさ

ひいては、農業の競争力のなさ……これは悪循環を招き、儲からなかったら新規参入者が増えない業界になってしまい、特に若者が魅力を感じなくなります。

農家の収益を生産調整で確保しようとしてきた政府制作政策に問題があるのではないでしょうか。

Next: どうすれば農家が儲かる?今後、お米の値段はどうなっていくのか…



どうすれば農家が儲かる?

農家が儲かるということは、生産物(コメや野菜)が高く売れるということです。

市場におけるコメ価格が崩れることが、農家の収入の安定を妨げているというわけで、その市中価格を、国の主導のもと調整してきているのです。

かつては生産調整、具体的には減反政策を取っていました。

1970年頃から本格的に始まり、2018年度に廃止されるまで、約50年間実施されました。田んぼの面積を減らすことで米の生産量を減らしたり、米の代わりに、麦、大豆、飼料作物などを栽培することを奨励してきました。

減反や転作を行う農家に対しては、補助金が支給されました。

2018年度に廃止されてからは、政府は米の生産量の目安を示し、転作する農家への補助金も継続しているためコメの生産量を間接的にコントロールしています。
※参考:減反とは 廃止後もコメ生産量の減少続く – 日本経済新聞(2022年7月2日配信)

実際には、米の生産量は減少傾向にあり減反政策廃止後もコメの生産量は減少しています。

生産量自体を調整すること、ましてや水田を“潰して”しまう政策だと、いざコメ不足のときには迅速に対応できません。

日本全国の1年間のコメの消費量は、年々減ってきていて700万トンぐらいになっています。

備蓄米放出量は21万トンです。備蓄米全部を出すわけにはいきません。災害大国の日本ですからね。何が起きるかわからないですから。

なのに、市場価格の安定が減反政策などの生産調整だなんて…。

農家の生活を守るのは大事だが……

農家側も、補助金で生活ができています。補助金で生活できている間は積極的に後継者を育成する必要もありません。

補助金が、今の農家の生活を支えてはいますが、農業の未来を潰していると言っても過言ではありません。

農業に携わる若者が減り、自由な発想が生まれてこなければどうなるか。

この先農業の自由化が進み、海外から米が輸入されるようになった際に、日本の生産者が競争に負けてしまいかねません。

米農家を中心として、米に携わる人々の中から、こうした未来志向の考え方が生まれにくい情勢を作ってしまったと言えるでしょう。

・農家の収益を守るための減反政策
・農業の経営所得安定対策制度

いずれも農家を守るもので、非正規労働者やフリーター、中小の商店主など世の中にたくさんいる経済的弱者の人たちへの所得補償という制度が出されたことは、いまだかつてありません。

しかし農家にだけは、平日は会社勤めで週末だけ農業に従事する兼業農家に対しても、所得確保のための交付金が税金から支払われるのです。

農村の貧困を克服しようという思いからでもあるのでしょうが、うがった見方かもしれませんが、自民党の絶大な票田を守るためではないでしょうか。

農村部選挙区の国会議員が、TPPに“反対”表明するのも理解できますね…。

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らぽーる・マガジン らぽーる・マガジン 』(2025年4月21日号)より
※記事タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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