自民党総裁選で女性として初めて総裁に選ばれた高市早苗氏が、経済政策の方向性を明らかにしました。掲げるのは「給付付き税額控除」による中低所得者支援と、「国家主導型の戦略的資本主義」による積極財政。アベノミクスの路線を引き継ぎつつも、より国家主導の色を強めた「サナエノミクス」は、財政規律を緩めるリスクと表裏一体です。国債増発による景気刺激策は、果たして成長の起爆剤となるのか、それとも英国で起きた“トラス・ショック”のような財政危機を招くのでしょうか?(『 らぽーる・マガジン らぽーる・マガジン 』原彰宏)
※本記事は、『らぽーる・マガジン』 2025年10月7日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はこの機会に今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
自民党新総裁・高市早苗氏の政策は…
自民党総裁選は、女性初となる高市早苗前経済安全保障担当大臣が総裁に選ばれました。
イデオロギー的にどうかという問題はさておき、唱える経済政策をチェックすることはとても重要です。
高市早苗自民党新総裁は、党本部で記者会見し、中低所得者を支援する「給付付き税額控除」について党内での議論を始めるよう指示する考えを明らかにしました。近く召集する臨時国会で物価高対策を盛り込んだ2025年度補正予算案を編成する構えです。
(参考:給付付き税額控除議論へ 物価高対策、臨時国会で – 日本経済新聞)
「給付付き税額控除」を皮切りに「社会保障と税の一体改革」の議論を求めると立憲民主党も提起しています。
これには、自民党、公明党、立憲民主党に加え、日本維新の会も前向きの姿勢を示しています。
7月の参院選では立憲民主党が導入を訴えており、自民・公明・立民の3党は9月19日の党7会談で、制度設計に向けて協議を進めることで合意していました。
ただ、実現には課題も多いとしています。
日本では収入や資産を網羅的に把握する仕組みがなく、公平性を担保することが難しいとされていて、納税額は少ないが、多額の資産を持つ人を支援対象にした場合、批判が高まる可能性があるとされています。
制度設計には数年かかるとみられ、恒久的な財源の確保も必要となります。
(参考:総裁選 自民党:高市早苗氏・小泉進次郎氏らが導入に言及、「給付付き税額控除」とは…低・中所得者に支援届きやすく : 読売新聞)
なんのための「マイナンバー制度」なのでしょうかね…。
例えば、負担軽減額が10万円の場合、
・納めるべき所得税額が10万円の人は納税が免除される
・所得税額が5万円の人は納税が免除され、さらに5万円の給付を受ける
・所得税が非課税の人は10万円が給付される
という仕組みです。
減税しきれない分を給付で補うことで、納税額が少ない人ほど恩恵を感じやすいというものです。
さらに高市氏の経済政策をおさらいしておきましょう。
サネエノミクス……「アベノミクス」を継承するかの印象を植え付ける表現で、確かに金融政策はアベノミクスを引き継ぐことになります。
大胆な金融緩和?アベノミクスを踏襲か
金融政策に関しては、アベノミクスを踏襲するようで、専門家は、これで「日銀による“利上げ”は遠のいた」と見ています。
事実、高市早苗氏は、前回の総裁選(石破総裁誕生)のときの公開のインターネット番組で、日銀の金融政策運営を巡り「金利を今、上げるのはあほやと思う」とけん制していました。
日銀との関係に関して「金融政策の方向性は政府が決める、日銀はその“手段”を決めるものだ」と断言しています。
日銀主導による「利上げ」は難しくなると判断できるでしょう。
Next: 株価は上がる?サナエノミクスで生活はどう変わるのか…
日銀が「利上げ」をすれば個人消費や企業の設備投資に悪影響との認識を示し「長いデフレに戻る不安がある」と強調していました。
コストプッシュ型インフレ下は「インフレ」ではない、まだ「デフレ」だ……と高市新総裁は明言しています。
円安についてもメリットがあると指摘しました。
高市氏は「消費マインド、投資マインドを下げることは今しては駄目だ」と明言しています。
円安を巡り「輸出産業はどんどん輸出できるチャンスだ」と言及し、円安で外国為替資金特別会計の剰余金が増加するとも説明しました。
防衛費増額に伴う増税にも反対し、財源として公共事業費などに使う建設国債を充てると主張していました。基礎的財政収支(プライマリーバランス)を2025年度に黒字化するとの政府目標にも苦言を呈し、戦略的な財政出動を訴えました。
増税は反対財源は国債プライマリーバランス黒字化にはこだわらない……。
うん?どこかの野党と同じだな…。
(参考:高市早苗氏、日銀をけん制 「今、利上げはあほ」【自民党総裁選】 – 日本経済新聞)
アベノミクスでの第二の矢「機動的な財政出動」、第三の矢「民間投資を喚起する成長戦略」に関しては、サナエノミクスでは少し修正されます。
もっともアベノミクスでは、第二、第三の矢が放たれたかと言えば疑問が残りますけどね。
サナエノミクスでは、国家自らが主役として“財政出動”して、市場に積極的に関与しながら戦略的分野を決めて積極的に投資するという「国家主導型の戦略的資本主義」を取ります。
AIの答えですが「国家主導型の戦略的資本主義」とは、市場原理を活かしつつも、国家が経済の長期的な競争力強化や特定分野の発展を戦略的に推進する資本主義の一形態です。
特に戦後日本の経済発展を分析する中で用いられ、市場メカニズムに沿いながら国家の戦略的な関与によって国際的な競争力を高める体制を指します。
中国の社会主義市場経済も、共産党支配を維持しつつ市場原理を活用して富を増やすという点で、国家が経済を主導する典型例として挙げられます。
「国家主導」のワードに高市早苗色を強く感じる一方で、「国家が選ぶ」という観点に、一抹の危うさをも感じますね。
「責任ある積極財政」とは
高市早苗氏は、選挙に向けての公約を、ネットサイトで公開しています。経済政策に関してそこでは「責任ある積極財政」という文言が出てきます。
(参考:総裁選公約 – 【公式】高市早苗 自民党 総裁選 特設サイト 2025|日本列島を強く、豊かに。)
「危機管理投資」と「成長投資」という文言も出てきます。
高市氏が唱える「国家の使命」とは、国民の皆様の生命と財産を守りぬくこと領土・領海・超空・資源を守り抜くこと国家の主権と名誉を守り抜くことを掲げています。
これに彼女が公言している「日本国憲法の改正」「皇統の護持」をかけ合わせ、さらに彼女の強力な支持母体である「岩盤保守層」や党内保守系議員グループの指示で支えられているということからこの「国家の使命」を眺めると、また違った景色が見えてきそうではあります。
経済における「危機管理投資」の「危機」の捉え方にも含みがあるようです。
「成長投資」は、AIや量子分野などが挙げられるでしょう。
経済が成長すれば税収は増える……高市氏の経済政策の根本にこれがあるようです。
だから「プライマリーバランス黒字化にはこだわらない」という考えで、財政出動に積極的な姿勢になるのでしょう。
財政規律の凍結です。財務省デモの主張通り、庶民の感情を掴んだような政策ですね。
ただ、海外投資家による「日本売り」が浴びせられないか、トリプル安に見舞われないか。英トラス・ショックの再来にはならないのか……といった根本的な、超最悪シナリオが思い返されます。
参院選で争点となった消費税の引き下げについては自民党内で多数派意見とならなかったことを踏まえ「選択肢として放棄しないが、すぐに対応できることを優先したい」と述べました。 ※2025年10月中に初月無料の定期購読手続きを完了すると、以下の号がすぐに届きます。 ※本記事は、『らぽーる・マガジン』 2025年10月7日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はこの機会に今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。 ※初月無料の定期購読のほか、1ヶ月単位でバックナンバーをご購入いただけます(1ヶ月分:税込330円)。
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