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「こども保険」の正体。これは保険ではなく富裕層に有利な税金だ=新美昌也

政府は、保育や幼児教育を無償にするための「こども保険」を創設する構想を発表。児童手当と合わせれば無償化が実現しますが、富裕層に有利な税金という側面もあります。(『お金を殖やす、貯める、今日からはじめる節約テク』新美昌也)

プロフィール:新美昌也(にいみ まさや)
CFP/1級FP技能士。2004年よりフリーで活躍。民間の介護保険に詳しいFPとして、新聞や雑誌などの取材に多数協力している。ライフプランに基づいたマネーアドバイスも好評。

社会保険料に上乗せ徴収。「こども保険」は不公平な税金だった

政府案の「こども保険」とは

政府は、保育や幼児教育を無償にするための「こども保険」を創設する提言をまとめました。その財源として、企業と従業員が支払っている厚生年金保険料の料率にそれぞれ0.1%ずつ上乗せして、保険料を徴収します。

具体的には、会社員の場合、30代の年収400万円の世帯で「月240円程度」加算されます。自営業者は、国民年金に「月160円程度」を加算することが想定されています。これにより、未就学児への児童手当を1人当たり月5千円増額できるといいます。

この保険料率は、段階的に各0.5%まで引き上げられます。年収400万円の世帯で「月1200円程度」、自営業者は「月830円程度」の負担増になりますが、児童手当は1人当たり月2万5千円まで増額できます。

保育園や幼稚園の平均保育料は月1万~3万円程度のため、現行の児童手当と合わせて、幼児教育の実質無償化が実現することになります。

「子ども・子育て拠出金の拡充」「教育国債」という方法もある

一般の方はご存じないかもしれませんが、児童手当の財源として、事業主は厚生年金被保険者全員の標準報酬月額を合算したものに料率を掛けた金額を、厚生年金保険料と一緒に納めています(子ども・子育て拠出金)。平成29年度の「子ども・子育て拠出金(旧名称:児童手当拠出金)」は、0.23%です。

児童手当の増額が目的であれば、現行の「子ども・子育て拠出金」を拡充すれば良いのではないでしょうか。

個人的には「教育国債」を支持しています。これに関しては、「赤字国債と同じだ」「将来世代への負担の先送りに過ぎない」などの批判がありますが、教育は投資効率が高いですし、子どもたちは教育を受けるという受益がありますので、将来、その負担を受けても問題ないと思います。また、教育国債の発行の時期として、今のデフレ下は最適だと思います。

Next: 政府案の「こども保険」は保険ではない。これは富裕層に有利な税金だ



「こども保険」は保険ではなく税金

さて、「こども保険」は保険なのでしょうか。答えはノーです。

保険って、そもそも何でしょうか。保険とは、たくさんの人が少しずつお金を出し合って、大きな共有の準備財産を作り、参加者に万一のことがあった場合に、本人や残された家族にまとまったお金を出して、経済的に助け合うという仕組みです。つまり、お金を出しておけば、病気、死亡、長生きなどといったリスクに備えることができるものを「保険」と言います。

政府案の「こども保険」が保険だとすると、保険料を支払っておくと将来の幼児教育が無償となるということになりますが、出産がリスクというのも変ですし、誰でも給付が受けられるわけではありませんので、保険とは言えません。

本質は、保険というよりも税金です。また、厚生年金保険料は上限が決まっていますので、富裕層は相対的に保険料の負担が軽くなるというデメリットもあります。所得税であれば課税される所得の上限はありませんが、「こども保険」は富裕層に有利な税金と言えます。

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お金を殖やす、貯める、今日からはじめる節約テク』(2017年4月2日・7日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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