生成AI「Claude (クロード)」が世界に衝撃を与えています。開発・運営しているのは、アンソロピック(Anthropic)という米国のスタートアップ企業。コードを書いた経験がまったくない人でもClaudeCodeを使えば簡単にアプリケーションがつくれるうえに、業界特化型の追加機能も続々発表。既存のソフトウェアの多くが置き換えられるのではないかとの見方が広がり、2026年2月には世界中でソフトウェアの開発や販売を手掛ける企業に売りが広がりました。
Claudeは、その機能の高さから、2026年3月時点でもファンを増やし続けています。しかし、アンソロピックは未上場で、直接的に投資をする手段はありません。そこで今回は、アンソロピック関連銘柄を買い付けて、同社への投資に近い経済効果を得る方法を整理したいと思います。(『株式市場の潮流を射抜くプロの眼|INVESTLEADERS 公式メルマガ』石塚 由奈)
プロフィール:石塚 由奈(いしづか ゆうな)
日本投資機構株式会社 経済メディア「インベストリーダーズ」編集、証券アナリスト(CMA)、テクニカルアナリスト(CMTA®)。国内株式、海外株式、外国為替の領域で経験豊富なアナリスト・ファンドマネージャーのもと、金融市場の基礎・特徴、マクロ経済の捉え方、個別株式の分析、チャート分析、流動性分析などを学びながら、日本投資機構株式会社では唯一の女性アナリストとして登録。自身が専任するLINE公式など各コンテンツに累計7,000名以上が参加。X(@yuna_investment)のフォロワー数も3万人を超える人気アナリスト。
アンソロピックはどんな会社か
アンソロピックは2021年に、ダリオ・アモデイ(Dario Amodei)とダニエラ・アモデイ(Daniela Amodei)の兄妹を中心に設立されました。ダリオはChatGPTを手掛けるOpenAIで研究副社長(VP of Research)を、ダニエラはビジネス担当副社長(VP of Operations)を務めていた人物です。
彼らがOpenAIを離れた最大の理由は、「AIの安全性に対する優先度や組織の方向性について意見の相違があった」からです。特に急速な商業化で、安全性の研究が後回しになることへの懸念が強かったと言われています。
創業者のダリオ・アモデイは、「私たちはAIが人類史上最も危険な技術のひとつになりうると信じている。それでも開発を続けるのは、どうせ誰かが開発するなら、安全を最優先にする組織が最前線にいるべきだという判断からだ」との考えを表明しています。
<アンソロピックの沿革:2021年に創業>
アンソロピックは、2021年にOpenAI出身者を中心として創業されました。この時点ではまだ一般向けの製品はなく、安全なAIの研究開発に集中していました。
2022年12月には「Constitutional AI(CAI)」と呼ばれる独自の安全性手法に関する論文を発表。
これはAIモデルに「憲法」のような原則を与え、人間のフィードバックに過度に頼らずに、より安全で誠実なAIを訓練しようというアプローチです。この研究がClaudeの安全性の根幹となっています。
2023年3月、AIアシスタント「Claude」のベータ版を一般公開。その後、7月に改良版のClaude 2をリリースし、長い文章の処理能力(最大10万トークン)で業界の注目を集めました。
同年9月には、アマゾン(AWS:アマゾンウェブサービス)がアンソロピックへ最大40億ドルの投資を発表。これはAWS史上最大規模の投資のひとつとされ、AWSのクラウド基盤でClaudeを展開する大型パートナーシップも同時に締結されました。
その後、10月にはGoogleもアンソロピックへの最大20億ドルの出資を発表しています(その後追加で10億ドルを出資)。また、2025年11月にはエヌビディアが最大100億ドル、マイクロソフトが最大50億ドルをアンソロピックに出資する方針を明らかにしました。
<アンソロピックの主要な研究と技術>
アンソロピックの最も重視する独自技術のひとつが、Constitutional AI(CAI)です。
通常のAI訓練では人間のフィードバックを大量に必要としますが、CAIでは「原則のリスト(憲法)」をAI自身が参照しながら自己改善を行う仕組みを取ります。これにより、人間のフィードバックへの依存を減らしながら、より一貫した倫理的判断ができるモデルの訓練が可能となりました。
また、「AIがなぜそのような判断をしたのか」を人間が理解できるようにすることを目指す解釈可能性(Interpretability)研究も行っています。AIは何をどう考えているか分からない「ブラックボックス」だと言われています。この中身を解き明かすことで、AIの暴走に歯止めをかけて、安全性を確保する手がかりになると期待されています。
アンソロピックの将来性を徹底分析
ここからはアンソロピックのビジネスモデルや直近のトピックを確認し、同社の将来性を考えていきます。
<アンソロピックのビジネスモデル>
アンソロピックの主な収益源はClaude APIとClaude.aiという2つのサービスです。
Claude APIは、アンソロピックのAIモデルをAPI経由でサービスに組み込む際に課金されるもので、利用量に応じたトークン課金モデルを採用しています。Claude.aiは、月額課金制のClaudeアシスタントサービスです。無料プランのほか、上位機能が使えるProプラン、チーム利用向けのTeamプランなどを提供しています。
特に成長が期待されるのは利用量に応じた課金モデルであるClaude APIの方です。検索エンジンの代わりとしての個人利用は利用量が限定的になりやすく、収益の天井も見えやすいです。
一方、企業がAPIを通じてサービスに組み込む場合は、エンドユーザー数に比例してトークン消費が積み上がるため、顧客一社あたりの単価が大きく、かつ解約コストも高い傾向があります。
一度プロダクトのコアにAPIが組み込まれれば、乗り換えには相応のエンジニアリングコストが伴うため、自然とロックインが生まれるのです。
<アンソロピック(Claude)を取り巻く競合環境>
競合環境を見ると、OpenAIのAPIやGoogle Gemini APIとの直接競合が続いていますが、アンソロピックは長い文脈長(コンテキストウィンドウ)や安全性・ハルシネーション(AIがそれらしい嘘をつく現象)率の低さを差別化軸として打ち出しています。特に金融・法務・医療など、精度と信頼性が問われる業種での採用実績を積み上げることが、単価維持と長期契約獲得の鍵になります。
投資家目線では、API売上の伸びをトークン消費量×単価の掛け算で捉えるのが基本となります。
モデルの性能向上に伴い単価は引き下げ圧力にさらされる一方、消費量の拡大がそれを上回るかどうかが成長の持続性を左右するでしょう。
この構図はクラウドインフラ事業における「価格低下×ボリューム増」のダイナミクスと本質的に同じです。規模の経済が効き始めるまでの投資フェーズをどこまで資本効率よく乗り切れるかが、アンソロピックの中期的な焦点となっています。
<急激な使用量増加でサービスが停止>
2026年3月2日には、Claudeのサービスが一次停止しました。これは、前例のない急激な需要の増加によって、サービス障害が発生したためです。
アンソロピックは2月に立て続けに新機能を発表し、ChatGPTやGeminiを普段から使っていたユーザーの関心を惹いていました。さらに2月24日には米国防総省が、Claudeの安全措置を解除するようにアンソロピックに要求。これをアンソロピックが拒否したことで、米国防総省は同社との契約を打ち切った上に、サプライチェーン上のリスクに指定し、話題となっていました。
アンソロピックは米国民に対する大規模な監視や完全自律型兵器開発へのClaudeの使用禁止を固辞しており、これが契約の打ち切りにつながりました。
しかし、米国防総省が実際に他社のAIサービスに乗り換えるまでの猶予期間は6か月とされ、米国が2月28日に開始したイランへの攻撃にはClaudeが使われたと伝わっています。こうしたニュースが立て続けに報じられたことも、Claudeへの関心の高まりにつながった可能性が高いです。
米国防総省との取引停止で、アンソロピックは最大2億ドル規模の契約を失うことになります。それでも同社の年間売上高は200億ドル近くに達しつつあると伝わっており、成長は揺らいでいません。
Next: アンソロピック上場の予定は?関連銘柄を狙う投資戦略もあるが…
アンソロピック上場の予定は?
アンソロピックの企業価値は2026年3月現在で3,800億ドル程度に膨らんでいると伝わっています。同社は2025年12月に新規上場の準備に入ったと報じられており、早ければ2026年中にもIPO(新規株式公開)が実施される可能性があります。
そうなれば、アンソロピックの株を直接市場で買えるようになりますが、2026年3月時点では、まだアンソロピックに直接投資はできません。
<アンソロピックに間接的に投資する方法>
それでもアンソロピック(Claude)に投資をしたい場合にはまず、出資企業を通じて間接的に投資を行う方法が考えられます。
アンソロピックに出資を行っている上場企業としては、前述のようにアマゾン・ドット・コム(AMZN)やアルファベット(GOOG)、マイクロソフト(MSFT)、エヌビディア(NVDA)などがあります。
ただし、Claudeが人気になれば、アルファベットの株価は、同社が開発するGeminiのシェア低下の思惑から下落してしまうリスクもあります。ChatGPTを手掛けるOpenAIに大きく出資しているマイクロソフトやエヌビディアも同様です。
そのため、この方法ではアマゾン・ドット・コムがもっとも理にかなった投資先と言えるでしょう。とはいえ、アマゾン・ドット・コムのアンソロピックへの出資はAI戦略の1つという位置づけであり、やはりアンソロピックの評価の高まりが企業価値向上に直結するとは言い難い面があります。
<アンソロピック関連銘柄探しの難しさ>
ChatGPTを手掛けるOpenAIに投資するのであれば、多額の出資をしているソフトバンクグループ(9984)に投資を行う方法があります。Geminiに期待するのであれば、アルファベット(GOOG)を買うのが良いでしょう。
そうしたClaudeの評価の高まりが企業価値向上に直結する企業が無いのが、ファンにとっては悲しいところです。とはいえ、Claudeの普及過程で恩恵を受けるであろう関係の深い企業が全くないわけではありません。
そこでここからは日米のアンソロピック関連株を取り上げていきます。
アンソロピック(Claude)関連とされる米国株
まずは米国から、アンソロピックとの提携や出資関係を持つ上場企業をご紹介していきます。
<クラウドフレア(Cloudflare / NYSE: NET)>
クラウドフレア 日足 2025年3月10日~2026年3月7日 出典:TradingView
クラウドフレアは、インターネットをより速く・安全にするためのインフラを世界中に提供している米国企業です。
ウェブサイトへの攻撃を防いだり、世界中のユーザーに素早くコンテンツを届けたりするために、世界中のインターネットトラフィックの一部が同社のネットワークを通過しています。
このクラウドフレアが、様々なサービスがClaudeと安全に連携する仕組みを手掛けています。
複数の大手SaaS(Software as a Service:サービスとしてのソフトウェア)企業がClaudeとの連携でクラウドフレアと協力しており、これにより、ユーザーはアプリを直接操作することなく、Claudeとの会話を通じてこれらのサービスを利用できるようになっています。
<SKテレコム(SK Telecom / NYSE: SKM)>
SKテレコム 日足 2025年10月22日~2026年3月6日
SKテレコムは韓国最大の携帯電話会社で、5GやAI関連事業への転換を精力的に進めています。
日本でいえばNTTドコモに近い存在です。
同社は2023年8月にアンソロピックの資金調達ラウンドに参加しており、出資額は1億ドル(約150億円)とされます。
アンソロピックとの資本関係が改めて注目されたことで、同社株は2026年1月中旬以降に約1か月で60%超という大幅な上昇を記録しています。
厳密に言うと韓国株ですが、ADRを通して日本の証券会社の米国株口座から投資が可能です。
<データドッグ(Datadog / NASDAQ: DDOG)>
データドッグ 日足 2025年10月13日~2026年3月6日
データドッグは、企業のITシステムの「健康状態」をリアルタイムで監視するためのソフトウェアを提供している米国企業です。システムがどこかで遅くなっていないか、エラーが起きていないかを常時チェックし、問題があればエンジニアにすぐ知らせる役割を果たしています。大量のAIモデルを常時稼働させているアンソロピックのような企業にとって、こうした監視ツールは欠かせない存在です。
データドッグは直近の決算において「主要なAIファンデーションモデル企業との、同社史上最大規模となる8桁(1000万ドル以上)の新規契約を獲得した」と発表。複数の市場関係者が、この契約相手がアンソロピックであると指摘しています。
アンソロピックがClaudeの開発・運用に使っていた複数の監視ツールをデータドッグのプラットフォームに一本化したとみられています。
アンソロピック(Claude)関連とされる日本株
Claudeがいくら便利だからと言って、知識のない企業が導入するに不具合やセキュリティへの懸念が大きいです。そのため、実際に導入が広がる過程では、既存のシステム開発会社やソフトウェアサービス企業が重要な役割を果たすと考えられます。
こうした企業は「Claudeに仕事を奪われるのではないか」との懸念から大きく売られる場面も見られました。しかし、実際にはClaudeの普及過程で重要な役割を果たし、収益を拡大させる余地があるのであれば、今後買い戻される期待が高いでしょう。
代表的な企業をご紹介します。
Next: Claude関連として注目される日本企業は?投資の注意点も
<野村総合研究所(4307)>
野村総合研究所(4307) 日足 2025年9月8日~2026年3月6日 出典:TradingView
2025年11月にアンソロピック認定リセラープログラム契約を締結。これによって、AWSを活用したClaudeの企業導入支援体制を強化するとしています。
株価は、2026年1月29日の26年3月期第3四半期(4-12月)決算を受けて急落。海外事業が低調で業績が市場予想を下振れており、今後は事業の構造改革を進め、第4四半期にこれに関連した損失を計上するとしています。
ただし、足元では見直し買いも入り始めており、構造改革の進展とともに再評価される余地もあります。
<エクサウィザーズ(4259)>
エクサウィザーズ(4259) 日足 2025年6月25日~2026年3月6日 出典:TradingView
ChatGPTやGemini、そしてClaudeなど複数の最先端AIモデルが利用可能な高いセキュリティ対策を施した生成AIサービスを法人向けに展開しています。多くの大企業との取引実績を有しており、26年3月期第3四半期累計(4-12月)の売上高は前年同期比17.1%増の83億5,400万円、営業損益は前年同期の2億3,800万円の赤字から10億2,700万円の黒字に浮上と着実に収益も積み上げています。
今後も生成AI導入に欠かせない企業として、成長を続ける期待ができるため、目が離せません。
<Finatextホールディングス(4419)>
エクサウィザーズ(4419) 日足 2025年4月23日~2026年3月6日 出典:TradingView
Finatextホールディングスは、証券・保険・貸金のライセンスを自ら保有する金融SaaS企業です。
単なるシステムベンダーではなく「自分で金融業を運営しながら他の金融機関にインフラを貸す」点に特徴を有しています。
同社は、CTO直下に「AI+チーム」を新設し、全社員にCursorとClaude Codeを配布。MCP(Model Context Protocol:AIアシスタントと外部のデータソース・ツールを繋ぐための共通接続規格)をセキュアに利用できる環境も整備するとしています。そして、自社でAIを使うだけでなく、自社の金融インフラを通じて取引先の金融機関がClaude等の生成AIを使いやすくする環境を整備しようとしています。
<マネーフォワード(3994)>
マネーフォワード(3994) 日足 2025年7月2日~2026年3月6日 出典:TradingView
マネーフォワードは、個人向けには家計簿・資産管理アプリ、法人向けには会計・給与・請求書・経費精算などのクラウドサービスを一気通貫で提供する企業で、一時はClaudeに仕事を奪われるとの懸念から大きく売られました。
一方で同社は、アンソロピックのAI開発ツールを組織の中核に据えた「ユーザー企業」として、日本でもとりわけ先進的な事例を持っています。アンソロピックが提供するコーディング支援ツールClaude Codeを、エンジニア組織全体に徹底して導入しています。
まだユーザー段階に留まっていますが、Claude Codeを使いこなすエンジニアが早いスピードで開発を進めることで、今後は生成AIを取り入れた新機能をよりユーザーにフィッティングさせた形で提供する役割を担う余地があります。
アンソロピック(Claude)関連銘柄への投資の注意点
アンソロピック関連銘柄に投資を行う際には、とにかく変化のスピードが速い業界であることを忘れてはいけません。競争が激化するなかでChatGPTやGeminiのより高性能のモデルが発表され、Claudeへの期待感が一気に萎むリスクは常に意識されます。
また、アンソロピック関連銘柄を買っても、アンソロピックに投資をするのと全く同じ経済効果を受けられるわけではありません。その企業自体がどのように変化の激しい現状をチャンスとするかに大きく左右される点も忘れずに、投資判断を行う必要があります。
これらの点を意識しながら、成長の余地があると判断できる企業に投資する必要があります。
まとめ|アンソロピックの今後に注目
アンソロピックが手掛けるClaudeは2026年3月現在もユーザーを増やし続けています。同社は未上場ですから直接投資はできませんが、関連銘柄を通じた間接投資という選択肢はあります。
米国株では、ClaudeとSaaSサービスを繋ぐインフラを担うクラウドフレア、アンソロピックへの出資関係を持つSKテレコム、アンソロピックとの大型契約が指摘されるデータドッグが代表的な銘柄として挙げられます。
日本株では、国内初のアンソロピック認定リセラーである野村総合研究所 、複数のAIモデルを法人に提供するエクサウィザーズ、金融業界へのClaude普及を担うFinatextホールディングス、そしてClaude Codeを全社導入し開発速度を大幅に高めているマネーフォワードなどが注目されます。
ただし、関連銘柄への投資はアンソロピックへの直接投資と同一ではありません。AI業界は競争と技術革新のスピードが極めて速く、ChatGPTやGeminiの動向次第で状況が一変する可能性もあります。そのため、各企業がこの変化をいかにビジネスチャンスとして活かすかを見極めたうえで投資判断を行うことが重要でしょう。
本記事は日本投資機構が運営する金融メディア『INVEST LEADERS』からの提供記事です。
※タイトル・リード・見出しはMONEY VOICE編集部による
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