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株価急騰後に失速「パワーエックス」今が買い?蓄電池需要の行方と投資判断のポイントを解説=金融ライター K.Y

系統用蓄電池メーカーとして急成長しているパワーエックス<485A>が、個人投資家の間で大きな注目を集めています。株価は2026年1月の安値611円から5月11日の高値5,577円まで、わずか数か月で約9倍以上に急騰。しかし、その後は急失速しており、今は押し目買いのチャンスなのか、今後を気にされている方も多いのではないでしょうか?そこで本記事では、パワーエックスに今後さらなる上昇の期待はできるのか。業績や受注残、成長テーマを順番に整理しながら、見通しをお伝えします。(『勝ち株ガイド | Invest Leaders公式メルマガ』金融ライター K.Y)

プロフィール:金融ライター K.Y
金融ライター、日本投資機構株式会社 経済メディア『インベストリーダーズ』執筆。2016年大手証券会社に入社、2018年に最大手オンライン証券会社に入社し、機関投資家部門(ホールセール)を立ち上げ、翌年2019年には同社シンガポール拠点設立。2022年より日系証券会社の運用部にてポートフォリオマネジャーの経験を得て以降、一貫して運用業務に従事。

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パワーエックスとは?設立わずか数年で上場した蓄電池ベンチャー

まずは、パワーエックスがどのような会社なのかを整理しておきましょう。

同社は2021年に設立されたばかりの蓄電池関連企業で、岡山県玉野市に本社工場を構えています。大型蓄電システム(BESS: Battery Energy Storage System)の製造・販売を中心に、モジュール型データセンター、電力供給サービス、EV充電サービスも手がけています。

代表の伊藤正裕氏はZOZOグループで新規プロダクト開発を担ってきた経歴があり、上場前から注目を集めてきました。

パワーエックス<485A> 日足(SBI証券提供)

2026年12月期第1四半期決算は赤字も、受注残が積み上がる

2026年5月14日に発表された26年12月期第1四半期(1-3月)決算の数字を見ると、利益は赤字が続いています。しかし、同社の業績は下期に偏る構造があるため、第1四半期の赤字だけで判断するのは適切ではありません。

さらに同社の業績を見る上で重要になるのが、受注残の積み上がりです。

<第1四半期は売上高19.4億円・営業損失6.97億円>

26年12月期第1四半期の実績は、売上高が19億4,500万円、EBITDA(利払い・税金・減価償却を除いた利益)は5億5,100万円の赤字、営業損失は6億9,700万円、純損失は10億700万円でした。数字だけ見るとかなり弱く映りますが、ここは季節性を正確に理解する必要があります。

同社は補助金の受給要件や顧客の予算消化の関係から、売上と利益が下期に偏りやすい構造になっています。
会社側も通期予想を据え置いており、26年12月期は売上高380億円、営業利益20〜25億円、純利益10〜15億円を見込んでいます。

第1四半期の赤字を見て業績が悪化したと判断するのではなく、通期予想の達成可能性を受注残から確認するのが正しいアプローチです。

<受注残889億円・通期売上予想の93.8%を確保>

さらに、今回の決算で最も重要な数字は受注残です。2026年5月14日時点の受注残高は889億6,200万円に達しています。うち26年12月期に売上計上予定の案件は378億7,900万円、正式受注ベースでも356億4,300万円があります。
通期売上予想380億円に対して93.8%まで積み上がっている計算です。

つまり、通期の売上を埋める案件がほぼ見えている状態であり、あとは計画通りに納品・検収・売上計上が進むかどうかが焦点になります。

ただし、蓄電池は大型設備であるため、生産・据付・検収・売上計上と各ステップで時期がずれるリスクがあります。
受注があることと、それが予定通り数字に変わることは別の話ですので、この点は引き続き注意が必要です。

<事業別にはBESS・EVCS・電力の3部門すべて黒字>

事業別の損益を確認すると、BESS(蓄電システム)事業が売上14億2,100万円でセグメント利益8,000万円、EV充電関連のEVCS事業が売上2億2,500万円で利益3,200万円、電力事業が売上2億9,800万円で利益8,200万円と、各事業はいずれも黒字です。

連結での営業赤字は、本社費用8億9,200万円を各事業の利益で吸収しきれていないことが原因です。今後、売上規模が拡大したときに、この固定費負担をどこまで薄められるかが収益改善の鍵になります。

売上が伸びれば固定費比率が下がり、営業利益率が一気に改善する可能性がある一方で、想定より売上が伸び悩んだ場合は赤字が長引くリスクもあります。

今後の成長テーマ|政策が追い風・新製品への期待も

パワーエックスは現在、政策の追い風があり、新製品への期待も高まっています。
ただし、中長期では継続的に収入が積みあがるかどうかという見極めるべき事項も存在します。
整理しておきましょう。

Next: パワーエックスへの追い風は続くか?中長期目線でプロが解説



<第7次エネルギー基本計画が追い風>

2025年2月18日に閣議決定された第7次エネルギー基本計画では、2040年度に向けて再生可能エネルギーを発電電力量の4〜5割程度にする方針が示されており、蓄電池活用の促進も明記されています。
パワーエックスの決算短信でも、この政策が事業環境の追い風として説明されています。

再エネの比率が高まると、天候に左右されやすい太陽光・風力の出力変動を吸収するための系統用蓄電池の重要性が増します。電力会社に「蓄電池を系統(送電網)につなぎたい」と申し込む接続検討受付の件数が大幅に増加していることも、この追い風を裏付けています。

国策として蓄電池の普及を後押しする方向性が明確になっているため、市場全体の成長への期待は高い状態が続くとみられます。

<AIデータセンター向け「PowerX Energy Blade」>

新製品として注目されているのが、データセンター向けラック型蓄電システム「PowerX Energy Blade」です。
2027年の提供開始を目指して開発が進んでおり、AIデータセンターの電力コスト管理需要を取り込み、需給調整市場(電力の需要と供給のバランスを調整するための市場)への参加を狙う製品です。

AIサーバーの普及に伴い、データセンターの電力消費は急増しています。
電気代を抑えながら安定稼働させるために蓄電システムの活用が広がっており、パワーエックスはこの領域にも進出しようとしています。

これが普及すると、単なる蓄電池メーカーではなく、AI時代の電力インフラ企業として評価される可能性が出てきます。まだ2027年の話であり、足元の業績に直接貢献するわけではありませんが、将来の成長材料として注目に値します。

<電力運用サービスの積み上がりが鍵に>

中長期の視点で重要なのが、電力事業や蓄電所運用サービスのような継続収入の積み上がりです。
現状の主力は大型蓄電システムの機器販売ですが、単発の販売だけだと業績が案件ごとに振れやすく、受注の有無で株価が大きく振れる構造になります。

電力運用サービス・メンテナンス・ソフトウェア収入のようなストック型の収益が増えてくると、業績の安定性が高まり、投資家からの評価も変わってきます。

26年12月期第1四半期時点で電力事業は売上2億9,800万円・利益8,200万円と規模はまだ小さいですが、今後の拡大が確認できれば、収益の質が評価される可能性があります。

日光蓄電所向け大型受注をどう見るか|正確な理解が重要

直近の株価急騰のきっかけになった日光蓄電所向け受注について、正確に理解しておく必要があります。報道や市場の受け止め方と、実態が少しずれている点があるからです。

<72台受注・162.4MWh・運転開始2029年予定|案件の規模と位置づけ>

今回の発表は、栃木県日光市に新設される日光蓄電所向けに、系統用蓄電システム「Mega Power 2500」を72台受注したというものです。定格蓄電容量162.4MWh、PCS(直流電力を交流に変換する装置)出力40MWで、運転開始は2029年を予定しています。

案件の規模自体は大きく、蓄電池インフラが実際に形になってきたことを示す具体的なニュースです。ただし、冷静に捉える必要があります。この案件は2026年2月13日にすでに開示済みの、2027年度売上予定の受注見込みに含まれていたものです。

まったく新しい上乗せというよりは、将来の受注見込みが実際の案件として可視化されたことが評価された、というのが正確な見方です。株価が急騰した背景にある「期待」の性質を正しく理解しておくことが、投資判断の精度を上げることにつながります。

Next: なぜ株価急騰?パワーエックスは買いか?投資家が注視すべきこと



投資判断のポイント|高バリュエーションで見るべき3つのチェック項目

<上場初日の安値から約15.8倍|急騰の背景にある3つのテーマ>

パワーエックスの株価上昇は3つの成長テーマが重なっていることが最大の理由です。2024年12月の上場後、上場初日の安値353円から2026年5月11日の高値5,577円まで、約15.8倍になっています。

これだけ短期間に急騰した背景には、再エネ拡大に欠かせない系統用蓄電池への需要拡大、AIデータセンターの電力需要増加、そしてEV充電インフラの整備という3つのテーマが同時に重なっていることがあります。

特に系統用蓄電池は、太陽光・風力などの再生可能エネルギーが増えるほど需要が高まる設備です。電力の需要と供給のバランスを保つために欠かせないため、再エネ普及が加速するほど蓄電池メーカーへの期待が高まる構図になっています。

<予想PER264倍・PBR47倍|株価は2027年以降の成長を先取り>

テーマが強い一方で、株価評価の水準は高くなっています。2026年6月5日終値時点で足元の時価総額は3,300億円台まで膨らんでおり、予想PERは264倍、PBRは47倍という水準です。

PER(株価収益率)とは、株価が1株当たり利益の何倍になっているかを示す指標で、一般的には15〜25倍程度が目安とされます。264倍以上という数字は、2026年の業績だけでなく、2027年以降の成長まで先取りしていることを意味します。

テーマの強さと将来への期待は本物ですが、それだけに今後の業績進捗に対する市場の見方は厳しくなります。好材料が出ても「期待通り」であれば株価は動きにくく、少しでも数字がずれれば大きく下落しやすい水準だという点は、投資判断の前提として理解しておく必要があります。パワーエックスへの投資を検討する場合、現在の株価水準では「テーマの強さ」だけでなく、「業績が期待に追いついているか」を継続的に確認することが必要です。

<チェック①:下期の納品・売上計上が計画通り進むか>

まず投資家として見るべきポイントは、2026年下期の納品が計画通り進むかどうかです。受注残は通期予想の93.8%まで積み上がっていますが、蓄電池は大型設備です。

生産・据付・検収・売上計上と、ステップごとにずれるリスクがあります。受注があることと、それが予定通り数字に変わることは別の話です。決算発表ごとに、売上計上予定の受注残が計画通りに進んでいるかを確認する習慣が重要です。

<チェック②:売上が伸びても粗利率がついてくるか>

次に注目したいのが粗利率(売上から材料費などの直接コストを引いた利益の割合)です。大型案件が増えれば売上は伸びますが、材料費・為替・輸送費・施工コストが利益を押し下げる可能性もあります。

売上が伸びても利益がついてこなければ、予想PER264倍という高い評価を維持するのは難しくなります。Q2以降の決算で、売上とともに粗利率が改善しているかどうかを確認することが重要です。

<チェック③:株価の動きで見るエントリーの考え方>

パワーエックス<485A> 日足(SBI証券提供)

株価は2026年5月11日の高値5,577円から調整が入り、足元は2,900円前後の水準です。1月の安値から見るとまだ約4倍であり、相当な期待が先行して入っています。こういう水準になると、好材料が出ても「受注があるかどうか」ではなく、利益率・納期・売上計上の確度を厳しく見られます。

買いを検討するなら、決算発表や材料発表の直後に飛びつくより、出来高を伴って高値を更新できるかを確認するか、2,300〜2,700円台で下値を固める動きを見てからでも遅くありません。

まとめ|パワーエックスの株価と今後の見通し

パワーエックスは、系統用蓄電池・EV充電・電力運用・データセンター向け蓄電池と、複数の成長テーマの中心に位置する企業です。2026年12月期Q1は赤字でしたが、受注残は通期売上予想の93.8%まで積み上がっており、下期に向けた業績の視認性は比較的高い状態です。第7次エネルギー基本計画による政策追い風も、中長期の成長シナリオを支えています。

一方で、株価は上場からわずか数か月で大きく上昇し、予想PER264倍・PBR47倍という水準まで来ています。日光蓄電所向けの大型受注も、すでに受注見込みとして開示されていた案件が可視化されたものであり、まったくの新材料ではない点は冷静に理解しておく必要があります。

これからの投資判断では、テーマ性だけでなく、下期の売上計上・粗利率の改善・継続収入の積み上がりをひとつひとつ確認していくことが重要です。成長の可能性は十分魅力的ですが、この高値圏では期待と実績の差を慎重に見ていく姿勢が求められます。

image by:zhu difeng / Shutterstock.com

本記事は日本投資機構が運営する金融メディア『INVEST LEADERS』からの提供記事です。
※タイトル・リード・見出しはMONEY VOICE編集部による

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