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【今週の展望】目先は「夏枯れ」商状も、総じて明るい動きが継続か=馬渕治好

今週は、内外の各市場を大きく動かしそうな材料が見当たりません。そうしたなか、世界市場は動意に乏しくとも、方向は引き続き明るいだろうと考えています。(『馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」』)

※本記事は有料メルマガ『馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」』2016年8月14日号の抜粋です。毎週いち早く馬渕氏の解説をご覧いただくには、今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

先週の振り返りと今週(8/15~8/19)の注目ポイント

過ぎし花~先週(8/8~8/12)の世界経済・市場を振り返って

世界市場は総じて明るいが、週末の米小売統計が軽い冷や水、米ドルは対主要通貨で軟調

(まとめ)
先週の世界市場は、おおむね明るい動き(株高、対円での外貨高)が持続しました。ただ、既にPERなどでみた割高感が強い米国株は、史上最高値を主要指数が更新しながらも頭が重く、米ドルも主要通貨に対して軟調に推移しました。また、週末(8/12)発表の米小売売上高統計は、想定より内容が悪く、米株や米ドル相場に軽い冷や水を浴びせました。

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(詳細)
先週の世界市場は、その前の週末(8/5、金)に発表された、7月の米雇用統計が堅調であった、という材料を継続して好感し、米国を中心とした世界経済改善シナリオに沿って、総じて株高・外貨高(対円)の展開となりました。

ただし、米国株は、既に予想PERでみて、割高感が強まっており、米国の主要株価指数は、時折史上最高値を更新する動きがあっても、上値の重さも目立ちました。また米ドルは、主要通貨と比べて、軟調気味で推移しました。

ここで、先週の世界の主要な株価指数について、騰落率ランキング(現地通貨ベース、原則1か国1株価指数だが、日本や米国などは複数指数を採用)をみてみましょう。

株価指数騰落率ベスト10は、順に、日経平均、TOPIX、ドイツ、アイルランド、ポルトガル、トルコ、香港、スウェーデン、中国(上海総合)、メキシコでした。日本株が好調でしたが、これは述べたような世界的な株価上昇や、円高が大きく進むことがなかったことによります。また日銀の株価指数ETF買い入れ増額も、それが良い政策であるかどうかは別として、株価支持材料として話題になり続けています。

一方、先週株価が下落した国は、5か国しかありませんでした。それは下落率の大きかった順に、デンマーク、アルゼンチン、インドネシア、フィリピン、ペルーでした。ここから、先週は確かに世界的に株価が上昇傾向であったと言えます。

なお、株価が週を通じて上昇はしたものの、米国については、S&P500指数が騰落率ワースト6位、ニューヨークダウ工業株指数が8位、ナスダック総合指数が9位と、極めて上値が重い展開でした。これは、米国経済・企業収益の基調が強いため、たびたび主要な株価指数は史上最高値を更新するものの、予想PERの高さが上値を抑えたためだと推察されます。

主要な外貨相場(対円)の先週の騰落率ランキングでは、上昇率ベスト10は、コロンビアペソ、ノルウェークローネ、メキシコペソ、南アランド、トルコリラ、カナダドル、アイスランドクローナ、スウェーデンクローナ、ニュージーランドドル、アルゼンチンペソでした。日本の投資家にもFX取引あるいは外債・外貨建てファンド等で、なじみが深い通貨が含まれています。

一方ワースト10は、英ポンド、マレーシアリンギット、インドルピー、米ドル、ベトナムドン、中国元、インドネシアルピア、タイバーツ、スリランカルピー、シンガポールドルで、日本円やユーロなどの主要通貨に対して、米ドルが軟調気味であったことがわかります。

ここで米ドル対円の先週の推移だけを取り出して振り返ってみると、先週の滑り出しは、その前週末の7月の米雇用統計を受けた地合いを継続し、米ドルが上昇気味で推移し、一時102.60円を超えました。しかし、特に何か材料が出たわけではありませんが、米ドルは勢いを失い、対円で反落しました(日本時間で8/10(水)夜に一時101円割れ)。

これがまた日本時間8/12(金)午後7時頃まで米ドル高に転じ、102.20円超えまで反発しましたが、その背景材料として指摘されているのは、8/11(木)までの米国株価の堅調展開と、同日の米サンフランシスコ連銀ウィリアムズ総裁の発言(ワシントンポストとのインタビューで「FRBは年内に利上げを実施する必要がある」)です。

こうした世界株価上昇のなかでの米株価の堅調さや、米ドルの持ち直しに、ちょっとした冷水を浴びせたのが、8/12(金)発表の7月の米小売売上高統計でした。総売上高は、7月は前月比で0.4%増えると市場が見込んでいたところ、実際には横ばいに終わりました。

この数値は自動車販売増で支えられていたため、自動車を除く小売売上高は、市場が前月比0.1%増と予想していたのに対し、実際は0.3%減でした。

ただ、悪い内容ばかりではなく、6月分の小売売上高総計は、前回発表の0.6%増から0.8%増に、上方修正されています。

このため、米主要株価指数については、ニューヨークダウ工業株指数やS&P500指数は、前日比で下落しながらも下落は極めて限定的で、ナスダック総合指数はごく小幅ですが上昇しています。小売売上高の発表を受けた米ドルの対円相場は、先週2回目の101円割れとなりましたが、その後はやや持ち直して週を終えています(週終値は101.29円)。

この他先週目に付いた動きとしては、国内株式の物色が、前号の当メールマガジンで述べたように、決算実態の優劣とは別に、先々週までは外需優位、内需劣位の様相が強まりましたが、先週は逆に内需株に買い戻しの動きが目立ちました。

また、前号のメールマガジンでは、8/8(月)発表の7月の景気ウォッチャー調査が悪い内容となり、先々週の内需株劣位の様相が強まるのではないか、と懸念していましたが、結果は逆で、現状判断DIは6月の41.2から45.1へ、先行き判断DIは41.5から47.1へと、大きく改善しました。

Next: 【今週の展望】「夏枯れ」商状か、明るさは底流で持続すると見込む



来たる花~今週(8/15~8/19)の世界経済・市場の動きについて

材料乏しく、「夏枯れ」商状か、明るさは底流で持続すると見込む

(まとめ)
今週は、内外の各市場を大きく動かしそうな材料が見当たりません。経済統計では、日本では4~6月のGDP統計や7月の外国人観光客の訪日数、米国では同月の住宅着工件数や鉱工業生産などが発表されますが、よほど想定外の数値にならない限りは、市場は動きにくいものと見込みます。

そうしたなか、世界市場は動意に乏しくとも、方向は引き続き明るいだろうと考えています。

(詳細)
今週は、内外の各市場を大きな材料が乏しいです。企業決算についても、日本企業の4~6月決算の発表は、ほとんどすべて終わってしまいました。

もちろん、何のイベントもないわけではなく、たとえば経済統計等の発表はあります。

日本では、8/15(月)に4~6月期の実質GDPが発表されます。前期比年率ベースの実質経済成長率は、1~3月期は1.9%増でしたが、4~6月期は0.7%増と、2期連続のプラス成長ながら減速すると見込まれています。

このほか、8/17(水)には7月の訪日外国人客数、8/19(金)には同月の全国百貨店売上高が公表されるなど、小売業の現況に注目が集まるでしょう。

米国では、8/16(火)発表の7月の住宅着工件数や鉱工業生産など、いくつか主要統計が発表されます。

ただ、こうした統計数値も、驚くほど想定外の結果にならなければ、内外諸市場を大きく動かすようなことになるとは考えにくいです。

このため、今週の世界市場は、動意に乏しい展開が見込まれます。ただ、先週多くの国の株価が上昇したような明るい地合いが、そのまま継続すると予想します。

外貨の対円相場も、上値が重くとも底固さもあり、大きく外貨安・円高に振れるようなことにはなりにくいでしょう。

盛りの花~世界経済・市場の注目点

金融庁から飛んできた、日銀に対するけん制

既に8/13(土)付の日本経済新聞などで報じられていますが、金融庁は、日銀のマイナス金利政策が、メガバンク3行の今年度決算に、少なくとも3000億円の減益要因として、のしかかると試算したそうです。こうした収益悪化が、銀行の貸出抑制につながりうると、金融庁が日銀に懸念を示した、とも報道されています。

当メールマガジンや筆者によるセミナーでも、日銀のマイナス金利導入は、金融機関の背中を後ろから蹴り倒すようなもので、銀行の収益悪化につながっても、実体経済の浮揚にはつながりにくい、と批判してきました。そうした批判は、既に銀行からも挙がっています。

ただ、今回のように、金融監督を担当する省庁からも懸念が示されたとなれば、日銀が9月の金融政策決定会合で、これまでの政策の総括とともに、諸資産の買い入れを少しずつ増額する、という追加緩和策は打ち出すことになっても、マイナス金利の拡大を行なうことは、極めて難しくなった(もともと難しいですが)と考えられるでしょう。

Next: よく聞く「夏枯れ」相場って?~世界経済・市場の用語などの解説



理解の種~世界経済・市場の用語などの解説

夏枯れ

「夏枯れ」は、市場動向などについて、夏場に投資家の動意が薄くなることで、売買高が減り、値動きも乏しくなることを指します。

これと異なる夏場の相場付きを示す言葉では、「サマーラリー」があります。サマーラリーが本当にあるのかどうかは、拙著「勝率9割の投資セオリーは存在するか」(東洋経済新報社)で述べていますので、ここでは解説しませんが、夏枯れについては、もともと実体経済が(特に小売業で「2・8(ニッパチ)」と言って商売が動きにくいことを指すように)振るわないこともあって、市場が動意づきにくそうです。

加えて、もともと投資家の多くが夏季休暇を取りがちなうえ、国内ではリオデジャネイロオリンピックや甲子園での高校野球に関心が奪われそうで(笑)、今年はますます夏枯れ商状が強まりやすいのかもしれません。

脇道の花~道草の話題

那須とガイドブック

当方、零細自営業なので、24時間365日営業していますが(営業しているからと言って、毎日売り上げが立つわけではありませんが)、さすがに元日は休みました。その後、1週間ほど前に、久しぶりに1日だけ休みました。ただ、夏休みのシーズンでもあり、たまたま仕事の間が空くことがあったので、先週1泊2日で、那須高原に行ってきました(次の休みは、来年初の元日だと思います)。

事前に那須高原のガイドブックをいくつか書店で立ち読みしたり、実際に買って読んだりしたのですが、ほとんどが、宿泊施設やレストラン、お土産物屋さん、博物館やアミューズメント施設といった商業施設ばかりの掲載で、茶臼山や殺生石、温泉神社、町営の無料の足湯、つつじヶ丘のつり橋など、自然を無料で楽しめる場所については、本では取り上げられていないか、取り上げていてもごくわずかなページしかありません。

これでは、よく観光地に置いてある、無料の商業施設案内と大差がないように思われ、お金を払ってガイドブックを買う価値を感じませんでした。こうしたガイドブックは、商業施設から、何らかのインセンティブを受け取っているのでしょうか…。

セミナーのお知らせ

※当面の各地での自主開催セミナーは、下記の通りです。すべて有料セミナーです(参加費、時間などは、それぞれ異なります)。学生の方には、学生無料枠もあります。
カッコ内の数字は、(現時点での参加お申し込み数/定員)です。

8/21(日)浅草(東京都台東区)(15/25)
8/27(土)大阪(大阪府大阪市中央区)(6/25)
9/17(土)高岡(富山県高岡市)(5/25)
9/24(土)名古屋(愛知県名古屋市中村区)(7/25)
10/1(土)横浜(神奈川県横浜市中区)(6/25)

以上の諸セミナーについての、詳細やお申し込みは、
http://bd-fleurettes.eco.coocan.jp/sub3.html
のページの下の方にある、セミナーのスケジュールから、それぞれのリンク先をご覧ください。

上記以外のセミナーも、公開可能なもの(有料、無料にかかわらず、参加者が限定されていないもの)は掲載しています。セミナーの受付が開始され次第、順次掲載していきますので、お手数ですが、こまめに上記ページをご確認いただければと思います。


※本記事は有料メルマガ『馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」』2016年8月14日号の抜粋です。毎週いち早く馬渕氏の解説をご覧いただくには、今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

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馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」』(2016年8月14日号)より抜粋
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