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韓国議員が竹島上陸。それでも日本は日韓通貨スワップ再締結に応じるのか?

今回は日韓通貨スワップ協定が再開される可能性を検討する。結論として筆者は協定再締結の可能性は50%と見ているが、なぜそう言えるのか、いくつかの視点で考えてみよう。(『2011年 韓国経済危機の軌跡(週間 韓国経済)』)

日韓通貨スワップ協定再締結の可能性は50%、その理由とは?

慰安婦問題の最終的解決が与える影響

昨年の12月末に突如、合意となった日韓慰安婦問題。これによって日本は、韓国政府が作った元慰安婦の支援財団に10億円を支払うことになった。

残念ながら、日本人が求めているソウルの日本大使館前の慰安婦像の撤去はされていない。岸田外相によると慰安婦像の撤去は今後も求めていくというが、韓国政府が慰安婦像の撤去に「努力」したとはどう見ても思えない。ただ、10億円を支払えば日本と韓国の間にある慰安婦問題はすべて最終的に解決する。

まあ読者も「韓国はすぐに蒸し返すんじゃないか。おかわりを要求するんじゃないか」と考えているだろうし、管理人も、もって朴槿恵政権の間までじゃないかなとは思う。

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しかし、世界中のメディアが今回の日韓慰安婦合意を報道し、歓迎した以上、韓国が問題を蒸し返そうとしても世界が覚えている。

これまでは1965年の日韓基本条約で解決していると主張しても、50年以上も前の話であり、それを外国人に言ったところで通じなかった。でも今回はしばらくは大丈夫だろう。後は韓国挺身隊問題対策協議会の元慰安婦が合意に反対しているが、あれはもう韓国内の問題なので日本には何も関係ない。

このように韓国が擦り寄りを見せている状況なので、日韓通貨スワップ協定の再開が8月の日韓財務対話で話し合われる恐れがある。

しかし、韓国は8月15日に超党派の国会議員らが竹島への不法上陸を予定しており、これによって財務対話が流れたり、または日本側の心証を悪くすることがあるかもしれない。とは言え日本の態度は甘く、韓国が要請すれば通貨スワップ協定の再開を検討するということは、以前から麻生財務大臣が述べていたことでもある。

麻生大臣の発言について、筆者はこのままだと日韓通貨スワップ協定はいずれ再開するだろうと述べたが、その「いずれ」が近い将来のことなのか、そうでないのか、それはまだわからない。

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韓国経済の「復活」が与える影響

日付 KOSPI ウォン KOSDAQ 先物
08日 2031.12 1108.30 696.43 254.20
09日 2031,12 1108.30 696.43 256.00
10日 2044.64 1195.40 707.46 255.40
11日 2048.80 1099.50 703.33 256.05
12日 2050.47 1101.33 705.00 256.25

上記は先週の韓国市場の動き。注目は12日に2050を突破しているKOSPI(韓国総合株価指数)である。

筆者は、韓国経済が好調か不調かを見極める際にKOSPI2000台は大きな意味を持つと何度も述べているわけだが、この観点からすれば韓国経済には復活の兆しが見えていることになる。

韓国KOSPI指数 週足(SBI証券提供)

そして、それを裏付けるのが「国家格付け」の動向である。

米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は、韓国の国債格付けを「ダブルAマイナス」から上から3番目の「ダブルA」に1段階引き上げた。今後の見通しは「安定的」で維持された。韓国企画財政部が8日、明らかにした。

S&Pが韓国の国債格付けを引き上げたのは昨年9月以来。韓国がS&Pの国債格付けで「ダブルA」と評価されたのは初めてとなる。中国(ダブルAマイナス)より1段階、日本(Aプラス)より2段階高い。

出典:S&P 韓国格付けを初めて「ダブルA」に引き上げ – 聯合ニュース

引き上げ理由なんてどうでもいい。でっち上げにすぎないからだ。問題は、韓国の格付けが中国や日本より上ということだ。これに伴い外国人が韓国株を購入したのが先週の動きであり、それにつれてウォン高傾向となった。

Next: 韓国の慢心は、日韓通貨スワップ協定を物別れに追い込むか?



韓国の慢心は、日韓通貨スワップ協定を物別れに追い込むか?

いくら「格付け会社は信用できない」と日本人が正論を述べても、その格付けの影響はまだまだ大きい。外国人がこうして何の好材料もない韓国株を購入しているのは事実であり、そして、KOSPIは2050まで上昇した。

しかし、これによって韓国経済にはまだ余裕があると韓国自身が錯覚すれば、日韓通貨スワップ協定の再開要請がなくなるかもしれない。韓国経済が好調に見えることは、日韓通貨スワップ協定締結に懐疑的な立場にとっては朗報となる。だから、確率的には50%と最初に述べた。

日本の立場として、「韓国は日本より国家的な格付けが2段階も上。それなら通貨スワップ協定の再開なんていらないですよね。まさか、要請なんてしませんよね?」と言える。まあ、本当なら麻生大臣あたりに皮肉たっぷりに述べてほしいのだが。

韓国市場に全幅の信頼を寄せるのは難しい

では、実際に韓国経済は好調なのだろうか?貿易黒字だけを見れば今月は100億ドルを突破した。輸入が減っての不況型黒字ではあるが、それでも100億ドルは大きい。けれども、在庫もそろそろ切れてくる頃なので輸入しないと製品が組み立てられない。そういった意味で今後の韓国経済については、輸入がどのように推移するかを見守る必要がある。

実際のところ、好調とも不調とも、どちらにも見えるから不思議である。少なくともKOSPIで2050あるのだから、これで不調だと述べるわけにはいかない。ただ、不安材料もないことはない。

THAAD(終末高高度防衛ミサイル)の配備決定による中国からの経済報復は、韓国経済においてはかなりの不安材料だ。市場の投資家はそれほど影響しないと考えているようだが、中国経済そのものだって今後、順調に推移するとは言いがたい。中国経済の悪化は韓国経済にもダイレクトに影響するのでこれも動向が気になるところだ。

また、北朝鮮のミサイル開発、発射実験も断続的に行われている。東亜の情勢は一瞬即発とは言わないが、尖閣諸島の接続水域への中国船の侵入など、かなり危険な状態が迫っているのは確実だ。武力衝突は起きないかもしれないが、そういった地政学的なリスクを無視した投資は考えものである。

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2011年 韓国経済危機の軌跡(週間 韓国経済)』(2016年8月14日号)より一部抜粋・再構成
※太字はMONEY VOICE編集部による

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数年ごとに起きるデフォルト危機。世界経済が後退すれば、投資家が真っ先に資金を引き揚げていく新興国市場。輸出依存が96%という恐ろしい経済構造。ヘッジファンドに玩具にされる韓国市場。中国の属国化へと突き進む2014年。並行してスタグフに悩まされる現実。そして、1100兆ウォンを超え、雪だるま式に膨らむ家計債務の恐るべき実態。経済の問題点とは何なのか?なぜ、また、第四次経済危機が迫っているといえるのか。それは読めばわかる!投資、ビジネス、教養、雑談ネタにも最適な、最も韓国経済の実情を知ることが出来るメルマガ。

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