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いよいよ「危険水域」に入った東京都心3区のマンションバブル=大前研一

東京の千代田区、中央区、港区の人口増加が加速しています。この3区ではものすごい数のマンションが建っており建て過ぎの上に値段も強気、しかし実際には売れていません。(『グローバルマネー・ジャーナル』大前研一)

※本記事は、最新の金融情報・データを大前研一氏をはじめとするプロフェッショナル講師陣の解説とともにお届けする無料メルマガ『グローバルマネー・ジャーナル』2017年4月19日号の抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に定期購読をどうぞ。
※4月16日撮影のコンテンツを一部抜粋してご紹介しております。

プロフィール:大前研一(おおまえ けんいち)
ビジネス・ブレークスルー大学学長。マサチューセツ工科大学(MIT)大学院原子力工学科で博士号を取得。日立製作所原子力開発部技師を経て、1972年に経営コンサルティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニー・インク入社後、本社ディレクター、日本支社長、常務会メンバー、アジア太平洋地区会長を歴任し、1994年に退社。スタンフォード大学院ビジネススクール客員教授(1997~98)。UCLA総長教授(1997~)。現在、ボンド大学客員教授、(株)ビジネス・ブレークスルー代表取締役。

末期症状? 東京都心3区の人口増が加速、高額物件も急増中

【不動産】極端な人口集中、近い将来に問題化も

日経新聞が5日報道したところによると、東京の千代田区、中央区、港区の人口増加が加速していることがわかりました。職住接近を求める高所得者や、保育所を求める子育て世代が流入しているほか、郊外から利便性を求めて移り住む高齢者が増えていることなどが要因です。

介護の受け皿としては脆弱なため、保育所同様、近い将来の問題になる公算が大きいとしています。

これら3つの都心三区というところは、学校の生徒がいなくなりました。千代田区の人口は12万人いたのが、4万人を割り込み、3万人台になってしまいました。今は6万人台に戻ってきていますが、こうした状況が起きているのです。学校が余ってしまい、統廃合が進んだわけです。私の子供たちも、通っている間に統廃合で非常に大変な騒ぎとなりました。

また中央区も統廃合を進めてしまったので、今再び学校を作らなくてはならなくなりました。矢田区長はもう嫌だと言い、マンションはもう売るな、賃貸だけにしろなどという状況になっているのです。

年齢階層別の人口推移を見ると、千代田区でも15歳から64歳の人が増えているのです。それにより0歳から14歳の人口が構造的に上がってくるので、学校が足りない事態となるわけです。

建てすぎ、高すぎ、実は売れていない

そして、この都心3区についてはものすごい数のマンションが建っています。建て過ぎなのです。しかも値段も非常に強気です。

我が家のそばにも、一番町と三番町の間あたりに三井不動産がやっている物件のモデルルームがあります。現地は今建設中で、その辺を散歩で通ると完売御礼と出ています。ところがモデルルームに行くと、旗を振って案内をしています。実は売れていないのです。

予約をすればモデルルームを見せてくれると言うので実際に見にも行きました。私はモデルルームがあると必ず見に行く癖があるのです。そこで坪単価は700万円、それを聞いた途端に絶対売れないと思い、モデルルームを後にしました。今までは千代田区の一番いいところでも坪単価600万円が最高でした。それが今回は700万円というのです。これは売れないと思います。

買った場合に自分が住めば良いのですが、賃貸に出したときには逆立ちしてもペイしないはずです。中央区、港区あたりでも、坪単価400万から500万円くらいなら何とかなりますが、それ以上になると自分でお金が余っていて、死ぬときに捨てるというような人が、自宅として買う場合にしか買わないでしょう。

ただ、今とにかく大和ハウスなどを中心にこの辺は大ブームとなっています。麹町の日テレ通りにも24階建てのマンションが建っていますが、それほど高い値段ではないものの、その地下では有楽町線につながっています。そうした物件が、私の散歩道だけで40軒ほどあるのです。調子に乗って皆が建て過ぎている状況です。マンション業者はテンポが今ひとつ遅れるきらいがあります。

2つの利権

また、築50数年経ったあるビルは、3.11の後、タイルを1つずつ叩いて剥離しないか確認するという作業が行われています。これはものすごい利権です。3.11便乗利権とも言えます。こうしたことも私の近所だけで数多く見られます。そんなにタイルは剥がれてきたりしないはずですが、10年に1回はこれをやりなさいということで、かなりのお金がかかるのです。

もう一つの利権は、除染です。例えば学校の校庭における基準として20ミリシーベルトで十分にもかかわらず、1ミリシーベルトとしたために、南相馬だけでも膨大な除染費用がかかるのです。これがものすごい利権になっていると言えるのです。ゼネコンはこうしたところで便乗でやっているわけです。

除染はいずれは終わりますが、タイルは10年に一度、永遠に続くことになるでしょう。中に人が住んでいるビルも足場が組まれ、泥棒が入りやすい状況になります。我が家はそれを拒否したら、上からぶら下がってくるやり方で作業が行われました。そうでなければ、防犯上非常に危ないことになります。

さらに、作れば売れるという状況が数年前にあったために、今、立ち退き物件にマンション業者が群がる状況も起きています。築20年程度になると立ち退きの専門家が出てきて、おっかない人たちもやってきて、立ち退きの交渉が迫られます。

まだいくらでもいけるという頭のようですが、私の感覚では既に建ち過ぎです。いくらなんでもこれほどの数は全部埋まらないと思います。値段も彼らが考えているような坪単価500万、600万といった場合でも上限を超えていると思われます。その間給料は上がっていないので、賃貸が成り立たないわけです。マンション業者の中には調子に乗って悪いことをするところも出てきている状況なのです。

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【コンビニ業界】大手ローソンの玉塚会長が退任する本当の理由

コンビニ大手ローソンの玉塚元一会長が、5月末に退任します。玉塚氏はファーストリテイリング社長などを経て、2010年にローソンに入社、2014年から社長、16年から会長として経営を率いました。このタイミングでの退任について玉塚氏は、三菱商事を巻き込んで総合力をつけられたとし、ローソンの今後の業容拡大への道筋は整ったと強調しました。

これは商社同士の戦いのようなもので、伊藤忠対三菱商事ということで、三菱商事としてはローソンを完全に子会社化し、コントロールして、自分のところから人材を送り込んでいきたいのです。

もともと三菱商事にいた新浪氏がローソンへ行き、三菱商事から送り込んでくる圧力を死ぬほど嫌っていたのです。玉塚氏を呼んできて私の後継者だと早めにアナウンスをし、それなりの影響力のある人なので無視できず、玉塚氏が後を引き継いだという訳なのです。

しかしながら三菱は資本比率を増やし、自分のところから送り込み、実質的には玉塚氏は祭り上げられていたということになったのです。そして予定通り、三菱商事直営の会社になったということなのです。

新浪さんがいたからここまで来たわけですが、玉塚氏には三菱商事のそうした圧力をはねのける力が、株も含めてなかったというわけです。新浪さんに頼まれてきたものの、これ以上抵抗しても無駄だということで、これから先は三菱商事コンビニエンス部門としてやっていけば良いと判断したのです。

直接的なトリガーになったのは、コンビニエンスストアの国内店舗数の推移です。セブンイレブンがダントツに強く、ローソンも成城石井などを買ったりしたものの、あまり大きな効果はなかったわけです。一方、ファミリーマートは合併を繰り返し、ローソンよりも数を増やし、伊藤忠の直接の影響力が前面に出てきたので、三菱商事も焦ったというわけなのです。玉塚氏はその点では、抵抗力なくここで退任、ある意味詰腹を切らされたということです。

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グローバルマネー・ジャーナル』(2017年4月19日号)より抜粋
※記事タイトル、太字はMONEY VOICE編集部による

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