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マクロン仏新大統領に敗れたルペン氏の経済音痴ぶり/混迷するBrexit =大前研一

仏大統領選はマクロン氏が勝利しましたが、敗れたルペン氏の経済音痴ぶりに皆があきれた結果です。ルペン氏は通貨ユーロからの離脱を主張しましたが、ひどい素人考えです。(『グローバルマネー・ジャーナル』大前研一)

※本記事は、最新の金融情報・データを大前研一氏をはじめとするプロフェッショナル講師陣の解説とともにお届けする無料メルマガ『グローバルマネー・ジャーナル』2017年5月10日号の抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に定期購読をどうぞ。
※5月7日撮影のコンテンツを一部抜粋してご紹介しております。

プロフィール:大前研一(おおまえ けんいち)
ビジネス・ブレークスルー大学学長。マサチューセツ工科大学(MIT)大学院原子力工学科で博士号を取得。日立製作所原子力開発部技師を経て、1972年に経営コンサルティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニー・インク入社後、本社ディレクター、日本支社長、常務会メンバー、アジア太平洋地区会長を歴任し、1994年に退社。スタンフォード大学院ビジネススクール客員教授(1997~98)。UCLA総長教授(1997~)。現在、ボンド大学客員教授、(株)ビジネス・ブレークスルー代表取締役。

プーチン氏の助け船も手遅れに。ルペン氏、敗北の理由とは

【フランス】ルペン氏の主張「脱ユーロ」は危険な素人考え

フランス大統領選について、ルペン氏はEUだけではなく通貨ユーロも離脱するとし、フランスの給料取りにはフランスのフランで支払うと主張してきました。また大企業はユーロを使い続けたら良いなどという、素人っぽいことを言いました。しかし、ユーロはフランスの国力、つまりGDPに比例して何枚刷っていいということが決まってくるのですが、そのことを知らないのです。

給料を勝手に刷ったフランで支払うと、超インフレになり、フランの価値が暴落します。これはとんでもない素人考えであり、これはダメだと皆が思ったわけなのです。経済に詳しいマクロン氏からも攻撃を食らいました。

また、予想通りルペン氏とロシアのプーチン大統領は友人であり、ルペン氏は忙しい選挙戦の中わざわざロシアまで行き、EU離脱、大いにやろうなどと語っていたわけです。そして最後にマクロン氏側がサイバー攻撃にあったのです。ちょうどアメリカのクリントン候補と同じような状況となったわけなのです。プーチン氏の助け舟がちょっと遅かったというわけです。

結局今回の選挙については、どちらの候補も大したことはないという印象をフランス人は強く持ちました。ここからマクロン氏が決戦投票で勝って大統領になっても、盛り上がらないという印象です。(※決選投票前の内容です。決選投票ではマクロン氏勝利となりました。)

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【英国】混迷するBrexit 12兆円を超える分担金とは?

イギリスのメイ首相は3日、「この数日の動きをみると、EUはイギリスの総選挙の結果に影響を与えようとしている」と述べ、EUを批判しました。先月26日に首相官邸で開いた夕食会で、ユンケル欧州委員長が「イギリスのEU離脱は成功しない」と語ったとされることが発端とみられます。

これはドイツの新聞に内容が全部出てしまったものです。メイ首相は「うまくいった、良い話し合いだった」と言っているにもかかわらず、ユンケル欧州委員長は、メイ氏は基本的にとんでもない幻想を抱いているとしてことごとく反対し、「イギリスのEU離脱は成功しない」と言ったというのです。また、かなりきつい条件を明確にしたということです。

メイ首相は、官僚やEUの政治家が脅しを仕掛けていると言いますが、実はEUは委員会で、イギリスと交渉するにあたってはこのような指針でやりなさいという交渉指令を出さざるを得ないのです。その中で、EUの市民がイギリスに320万人おり、イギリス人がEU圏に120万人暮らしていますが、この人たちの権利や地位の保護を求めるとしています。

これは何を意味するかと言うと、その人たちはいま税金を払っているので、将来の年金なども支払うべきだということなのです。しかし、こういう人たちの年金まで含めてイエスと言うと、イギリスが圧倒的に不利になってしまいます。またこの後この人たちの家族や親戚が来るということになれば、それは自動的に受け入れなさいという内容もあるのです。

さらに、EUの組織的な支部が決済銀行的なものなどを含めてイギリスにもいくつかあり、それらは離脱すればEU圏に戻すことになるので、その移転費用・引っ越し代も払いなさいと言っています。それらを全て足すと、未払い分担金7兆円と言われていたものが、しめて12兆円となると言うのです。イギリスの離脱相は、当然これは払わないと言っていますが、これが払えないのであれば交渉は始まらないとEU側は主張しています。

イギリスに在住するEU市民は、ポーランドを筆頭にかなりの数に上り、この問題はかなり尾をひくと思われます。そしてこの前提条件が解決しないと、離脱の条件の話し合いが始まらないと言うのです。

イギリスにおける外国人労働者の推移を見ると、EU加盟国出身が数を伸ばしており、非EU加盟国出身の伸びが頭打ちとなっています。つまりイギリスは、EUに入っているが故に、住みやすいイギリスにヨーロッパ大陸からやってくる人たちがいやがうえにも増していたという状況になっているわけです。

そしてこの状況に対して、年金まで含めてイギリスはちゃんと支払いなさいと言われているわけなのです。一方、イギリス人もスペインやアイルランドなどに多く住んでいて、この問題については話せば話すほど不安に感じる人も多いのです。お金の額に直してみると、将来の年金まで払わされるとなると結構大変なことですが、そうは言っても、いま彼らは税金を払っているので、年金を払わないというわけにもいかないのです。

Next: 【ハンガリー】首都に置く中央ヨーロッパ大学を閉鎖へ。右翼的発想でEUと衝突



【ハンガリー】中央ヨーロッパ大学閉鎖の意味

フィナンシャル・タイムズは先月27日、「ハンガリーはEUの価値を遵守せよ」と題する社説を掲載しました。ハンガリーのオルバン政権が教育法を改正し、外資が設立した教育機関の認可基準を厳しくしたことで、首都ブダペストにある中央ヨーロッパ大学が閉鎖に追い込まれる見通しです。

オルバン首相は、EUの価値観に対してあからさまの攻撃を仕掛ける一方、EUから多額の助成金を搾り取っており、オルバン首相と東欧全域の非リベラル思考の波を食い止めるには、EUは代償を課さねばならないとしています。

私もこのヨーロッパ委員会の議論を見ましたが、オルバン首相は総攻撃にあっていました。基本的にハンガリーは貧しい国なので、EUから補助金などいろいろなものをもらっています。今後は地域別に補助金が出てくるという順序になっているのですが、ハンガリーはかなり右翼的な発想でやっているのです。

中央ヨーロッパ大学というのは、ハンガリーからイギリスに逃亡し大成功したジョージ・ソロス氏が、彼はある意味自由主義のスポークスマンのような人ですが、自由主義教育をするという目的で作った学校です。その大学を自分たちハンガリーのためにはならないとして、閉鎖するとしているのです。

ヨーロッパ中からいろいろな人がやってきて教育を受けることも、自分たちのためにはならないと主張しています。こうしたことで、ヨーロッパ委員会でオルバン氏は、一体誰の代弁をしているのかと吊るし上げられていたわけですが、彼は平然としてそれを聞いていました。

いずれにしても、ハンガリーという国は非常に重要な位置を占める国で、東ヨーロッパでも中核的な国です。しかし、報道の統制をするとか、インターネットに課税をするとか、様々な情報操作をしようという動きが顕著です。また特に、難民の受け入れについてもはっきり拒否しており、ヨーロッパの中ではやや行き過ぎではないかと言われているのです。今後ヨーロッパから来る予算についても、ハンガリーはもらう側なので、態度をはっきりしないとEUは予算は出さないと言っていますので今後に注目です。

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グローバルマネー・ジャーナル』(2017年5月10日号)より抜粋
※記事タイトル、太字はMONEY VOICE編集部による

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