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山本幸三大臣「命取り」の釈明。疑惑の1億5千万円はどこに消えたのか=新恭

「アベノミクスの仕掛け人」として知られ、8月の内閣改造で初入閣を果たした山本幸三地方創生相に一大スキャンダル! 一部週刊誌の報道によると山本大臣は、衆院予算委分科会で、“知人”が嫌疑者となっているインサイダー取引事件に言及し、その調査の中止を求めるかのような質問を行いました。さらには大臣自身が当時、事件の関係先である投資会社の代表取締役に就いていたとのこと。メルマガ『国家権力&メディア一刀両断』の著者・新 恭さんはこの疑惑について「解かねばならない謎はまだまだある」として、国会における野党の厳しい追求を求めています。

カネで繋がった“知人”を擁護し、証券取引等監視委員会を“恫喝”

アベノミクスの仕掛け人・山本幸三新大臣に重大疑惑

地方創生大臣として初入閣した山本幸三にかかわる見過ごせない記事が、週刊文春と週刊新潮、ライバル二誌の9月8日号に、掲載された。いずれも、内容はほぼ同じ。知り合いのエリート銀行員が金融業者にインサイダー情報を流し証券取引等監視委員会の強制調査を受けたことに対し、山本が国会質問のなかでクレームをつけた話を中心に、まとめられている。

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山本幸三といえば、日銀にマネーをどんどん刷れ、とけしかけている「アベノミクスの狂信的応援団のひとりだが、ときに大蔵官僚時代からの過剰なエリート意識が災いするのか、人を小馬鹿にした言動をとる。だが、こういう人物ほど、タコツボにこもりやすく、怪しげな話に乗りやすい。

彼がブルーエコノミー・ホールディングという投資ファンド運営会社の代表取締役に就いたのは同社設立時の2010年3月11日のことだ。投資ファンドに資金を集め大儲けしようとたくらんでいた旧知の榊原康寛という人物に話を持ちかけられた。

「非常勤、無報酬かつ一時的」という条件で引き受けたと山本は週刊誌の記者に語っている。結局この会社はうまくいかず、実際に報酬を出すどころではなかったようだが、そもそも代表権のある社長までやって、そんな言い訳が通用するはずもない。

ただ、山本らが儲かろうと儲かるまいと、そんなことはどうでもいい。問題はこの投資会社に、前述したインサイダー取引事件の金融業者とエリート銀行員がからんでいたということだ。金融業者は横浜市に住む加藤次成という。エリート銀行員とは三井住友銀行から子会社の日興コーディアル証券(現SMBC日興証券)に執行役員として出向していた吉岡宏芳のことである。

Next: 山本氏はインサイダー取引事件の調査にどんな「圧力」をかけたか



山本氏はインサイダー取引事件の調査にどんな「圧力」をかけたか

吉岡は日本を代表する銀行の行員としての仕事とは別に、危ない客を加藤に紹介する裏の仕事に手を染めていた。のちに裁判で、広島や横浜の暴力団とつながりのある客に数億円規模の融資をあっせんしたことが明らかになっている。

ブルーエコノミー・ホールディングを設立した榊原康寛も、吉岡の紹介で加藤から融資を受けた一人だ。2010年3月4日に2億円を借り、5,000万円の資本金でブルー社を設立した。

山本が代表取締役になり、愛知和男元環境庁長官が最高顧問として名を連ねた。年利10%で運用するというふれこみで盛大にパーティーを開き、華々しく会社がスタートしたが、後に粉飾事件で破産したジャスダック上場企業、ゲートウェイホールディングスに出資するなど、ことごとく運営に失敗した。

ブルー社や暴力団関係への融資が焦げついたため、加藤から厳しく追及された吉岡は、出向していた日興コーディアル証券のインサイダー情報を加藤に提供し、株取引で儲けさせて埋め合わせしようとしたが、その悪事がバレて、二人とも証券取引等監視委員会の調査を受けるハメになった。榊原の紹介で山本幸三と知り合いになっていた吉岡は、証券取引等監視委員会の調査にネをあげて、山本に泣きついたようだ。

当時まだブルー社の代表取締役だった山本からみれば、吉岡は会社の設立資金を調達するのに力を貸してくれた、いわば恩人といえる。資本金の原資について知らないと山本は言っているが、それが本当だとすれば、なんと杜撰な人物であろうか。むろん、榊原から救済依頼もあったに違いない。

2012年3月5日の衆議院予算委員会第一分科会で、山本は次のような質問をした。

インサイダー取引の事件があり、嫌疑者は金融関係の会社の社長だが、その情報伝達者として、ある証券会社の部長が同時に強制調査の対象になっている。部長は私の知人で、全く身に覚えがないということだが、いつまでたっても結論が出ない、これが大問題だ。会社は、主幹事を外されるとか…実損が出ている。個人も退任に追い込まれる状況になりつつある。…犯則行為にならないということになれば、誰がその責任をとるのか…。許可状もなしに書類を押収している。これは金商法違反としていずれ裁判になれば大問題になる。…こういう調査のやり方しかできない監視委員会というのは本当に必要なのか…これから私は監視委員会のあり方についてじっくり検討していきたいと思っている。

いかにも、証券取引等監視委員会はけしからん、自分があり方を厳しく追及して行くぞ、と脅しをかけるような言いぐさである。

Next: ブルー社代表を辞任して逃亡する山本氏、週刊誌の追求に苦しい言い訳



週刊誌の追求に苦しい言い訳

事件は、2011年9月、証券取引等監視委員会から加藤、吉岡の二人に強制調査が入り、その半年後に山本がこの国会質問をした。そして、質問から3か月後に二人とも横浜地検に逮捕起訴されるという経過をたどった。

山本は、吉岡らが逮捕された後、ブルー社の代表取締役を辞めている。これはあきらかに身の危険を感じたがゆえの逃亡」といえよう。

加藤は容疑を認め、執行猶予つきの有罪判決が確定したが、無罪を主張している吉岡は1、2審で有罪判決を受け、最高裁に上告中だ。

週刊新潮によると、山本は十数年前に地元・福岡出身の大物右翼の紹介で榊原と知り合った。榊原は政財界や芸能界に顔が広く、女優の杉本彩らを山本に引き合わせたこともあったという。

エリート銀行員の吉岡がなぜ、金融業者である加藤と知り合ったのかについては、よくわからないが、どうやら十数年前、三井住友銀行では対応できない借り手を連れて、いきなり横浜の加藤のもとを訪れたのが最初だったらしい。当時、資金調達力で金融業の世界に名をはせていたのが加藤だったようだ。

吉岡が自分の銀行をパスして榊原を市中の金融業者に紹介したということは、榊原が銀行から見てどのような人物であったかを如実に物語る。そして、その融資の内容そのものも、尋常ではなかった。

2010年3月に2億円を榊原が加藤から借り、その3か月後に2億5,000万円にして返すという契約だ。あまりにもベラボーな利息のため、融資の形では利息制限法にひっかかる。そこで、書類上不動産を売買するように見せかけたというのだ。

しょせんはウソの取引で榊原が手にした2億円のうち5,000万円がブルー社の設立資金として使われ、山本が代表権を持つ社長に就任したというわけだ。

この怪しげな人脈と経過について、山本は週刊文春の取材に書面で回答している。

─吉岡氏との関係は?
「大人数の会合にご指摘の方が一度だけ参加されたことがあると思います」

─加藤氏との関係は?
「全く面識がありません」

─ブルー社の社長に就任した経緯は?
「X氏(榊原氏)から『非常勤、無報酬かつ一時的』という条件で引き受けました」

自分は榊原に利用されただけ、と言いたいようである。だが、昔からの知り合いであれば、榊原に投資会社を運営する経験や才覚があるかどうかわかるはずではないか。

Next: 「残り」の1億5,000万円の行方は?



「残り」の1億5,000万円の行方は?

ローマクラブの準会員とかいわれる榊原の経歴ははっきりしないが、ZERI財団パン・パシフィック代表部代表理事という肩書が常についてまわっている。

廃棄物を資源として再利用するための研究や事業を行う目的で国連開発計画(UNDP)とスイス政府の出資で設立された財団の環太平洋地域における責任者らしいのだが、その仕事の実態に信用が置けるのなら、吉岡は三井住友銀行からの融資を進めればいいのであって、なにも高利の金融業者を紹介する必要などあるまい

また、山本が会合で一度しか会っていないと主張する吉岡のことを国会で「知人」とし、証券取引等監視委員会の調査方法に文句をつけたのはどういうことなのか。

榊原の甘言に乗って投資会社の代表取締役におさまり、きわめて私的な問題を、証券取引等監視委員会のあり方の問題にすりかえて国会質問するという、山本幸三の人間としてのレベルの低さには驚くほかない。このような人物が「アベノミクスの仕掛け人」と称され、この国の経済に大きな影響を及ぼしていると考えると、暗澹たる気分にさせられる。

あえて付言するなら、榊原が加藤に借りた2億円のうち5,000万円が設立資金として使われたとして、残りの1億5,000万円はどこに消えたのだろう。まさか山本に資金の一部が流れたとは思いたくないが、そのような疑いを持たれてもしかたがないのではないか。

そもそも単に、投資資金集めの広告塔として使われるために責任ある代表取締役などに就くはずがない。山本はブルーエコノミー・ホールディングの社長になることに、どんな「うま味」を期待したのだろうか。

この件について、解かねばならない謎はまだまだある。国会における野党の厳しい追及を待ちたい。

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国家権力&メディア一刀両断』(2016年9月8日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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