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注目を集める「ロボアドバイザー」の資産運用アルゴリズムを理解しよう=小屋洋一

ウェルスナビ社が、ロボアドバイザーの資産運用のやり方(アルゴリズム)をWeb上で公開しています。個人投資家にとっても参考になる点がありますので、ご紹介いたします。(『億の近道』小屋洋一)

プロフィール:小屋洋一(こや よういち)
ファイナンシャルプランナー。株式会社マネーライフプランニング代表取締役。1977年宮崎県生まれ。慶應義塾大学経済学部を卒業後、総合リース会社に就職。2008年、個人のファイナンシャルリテラシーの向上をミッションとした株式会社マネーライフプランニングを設立。

ロボットの資産運用アルゴリズムに学ぶポートフォリオ作り

ロボアドバイザーの資産運用方法が公開されている

私が昨年から関わっている仕事の1つに、ロボアドバイザーサービスのサポートがあります。ウェルスナビ社の柴山社長が中学校からの同級生であり、そのつながりでアドバイザリーをさせてもらっています。

今回ご紹介するのは、ロボアドバイザーの資産運用方法についてです。

ウェルスナビ社では、資産運用方法のやり方(アルゴリズム)をホワイトペーパーとしてWeb上に公開しています。
※参考:Wealth Naviの資産運用アルゴリズム(PDFファイル) – ウェルスナビ

個人投資家でも参考になる点がありますので、ご紹介していきましょう。

【運用プロセス】

まず、運用のプロセスですが、下記の手順で行われます。

  1. 資産配分(アセット・アロケーション)の選定
  2. 各資産クラスに対する対象銘柄の選定
  3. ポートフォリオのモニタリングとリバランス

これは極めて基本的な手順で、資産運用を検討する方は、この(1)~(3)の手順で考えているのでなければ、それはかなりマイナーで我流なやり方だと思った方が良いです。

【資産配分のやり方】

次に、資産配分の具体的なやり方です。ウェルスナビ社では、資産クラスを下記に分類しています。

特徴としては、すべてを米ドルベースで考えているところです。これは、このサービスが主にNY取引所のETFを利用していることと、世界の資産運用業界の標準が米ドルベースになっていることが主な理由です。すべての運用を、米ドルベースで考える考え方は、日本の個人投資家にはなじみが薄いとも思います。

【リスク・リターンの推計】

そして、リスクとリターンの推計。

リスク(標準偏差)と各資産ごとの相関係数の推定は、過去のデータを基に割り出しています。ただし、直近のデータを重視するために、過去のデータのウェイトは落としているようです。

例えば、ここではリスク(米ドルベース)が下記などのように計算されています。

(リスク)
米国株:12.4%
日欧株:14.8%
新興国株:18.4%
米国債券:2.8%
物価連動債:4.8%
金:17.9%
不動産:14.9%

そして、リターンの推計。リターンに関しては、単純に過去の数字を利用するということではなく、ブラック・リッターマンモデルを利用して推計しています。
※参考:ブラックリッターマンモデルの解説(PDFファイル) – ニッセイ基礎研究所

簡単に説明すると、現在の市場の時価総額に応じて、その比率がポートフォリオ上で最適化されているという前提を置いてリターンを推計するモデルです。この結果、米ドルベースで下記のように推計しています(2016年10月時点)。

(リターン)
米国株:6.5%
日欧株:7.5%
新興国株:8.5%
米国債券:1.9%
物価連動債:2.3%
金:3.9%
不動産:5.8%

これでようやく、「リスク(標準偏差)」「期待リターン(推計)」「相関係数」が出そろいましたので、最適化の計算ができ、個々人のリスク許容度に従って最も効率的な運用が行われるというプロセスになります。

冒頭にもお話したように、この手法は特別でも何でもなく、むしろ年金を中心とした機関投資家では極めてオーソドックスな手法です。もし、ご自身の運用がこの手法から外れているのであれば(それは決して悪いということではありません)、一度こうしたオーソドックスな資産運用手法についても検討されてみると良いと思います。

Next: リスク許容度に応じて自分に合ったポートフォリオを構築しよう



ポートフォリオの構築

次に、算出した各資産のリスク・リターン・相関係数を組み合わせてポートフォリオを構築し、リスク量に応じてリターンが最大になるような構成を計算します。

例えば、保守的でリスクの低いポートフォリオでは、

米国株:14.7%
日欧株:5.0%
新興国株:5.0%
米国債:35.0%
物価連動債:30.3%
金:5.0%
不動産:5.0%

積極的なリスクの高いポートフォリオでは、

米国株:35.0%
日欧株:31.8%
新興国株:13.2%
米国債:5.0%
金:10.0%
不動産:5.0%

などとなります。

投資する商品(ETF)を選ぶ

そして、次に投資する商品(ETF)を選びます。ETFを選ぶ基準は、下記の順番でスクリーニングをして選んでいきます。

  1. パッシブファンド
  2. 純資産総額が一定以上
  3. 流動性が十分である
  4. 外国投資信託の届け出がある
  5. 低コスト

ここでは、NY上場の下記が選ばれています。

米国株:VTI(Vanguard)
日欧株:VEA(Vanguard)
新興国株:VWO(Vanguard)
米国債券:AGG(iShares)
物価連動債:TIP(iShares)
金:GLD(SPDR)
不動産:IYR(iShares)

やはりETF大手の「Vanguard社」と「iShares」のシリーズが選ばれているのも納得です。

その後は、定期的にリバランスをしていくことになります。ここでのリバランスのルールは、下記となっています。

また、上記で説明した最適ポートフォリオも、時間とともに変化していきますので、3か月ごとに最適ポートフォリオも計算し直すことになっています。

ホワイトペーパーを読めば個人投資家も真似できる

ここまでWealthNavi社の運用アルゴリズム(ホワイトペーパー)について解説してきました。結論としては、

とも言えると思います。

もしも、自分でローコストに組み立てようと思うのであれば、このホワイトペーパーを見ながら自分でNYでETFを購入すれば同じことができます。それが面倒だ、とても継続できそうにないという人は、ロボアドを使ってみれば良いのではないでしょうか。

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億の近道』(2017年4月19日・5月10日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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