カタールがサウジアラビアを始めとするアラブ諸国から国交断絶された本当の理由と今後の影響について、国際政治経済学者・フューチャリスト(未来予測家)として活躍し、有料メルマガ『浜田かずゆきの『ぶっちゃけ話はここだけで』』を好評配信中の浜田和幸氏が解説します。
※本記事は有料メルマガ『浜田かずゆきの『ぶっちゃけ話はここだけで』』2017年 6月9日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にご購読をどうぞ。当月配信済みのバックナンバーもすぐ読めます。
プロフィール:浜田和幸(はまだ かずゆき)
国際政治経済学者。前参議院議員。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。『ヘッジファンド』『未来ビジネスを読む』等のベストセラー作家。総務大臣政務官、外務大臣政務官、2020年東京オリンピック・パラリンピック招致委員会委員、米戦略国際問題研究所主任研究員、米議会調査局コンサルタントを歴任。日本では数少ないフューチャリスト(未来予測家)としても知られる。
迫る中東危機。カタールとサウジアラビアの根深い確執を読み解く
アラブ諸国が一斉にカタールと国交断絶
ぶっちゃけ、中東の雲行きが怪しくなってきた。
アラブ産油国の元締めであるサウジアラビアが突然、隣国のカタールに国交断絶を宣言。事前にすり合わせができていたようで、すぐさま同調したのが、エジプト、アラブ首長国連邦(UAE)、バーレーン。そして、遅れてはならじと、リビア、イエメン、モルジブもカタールと断交。
カタールにとっては「油断」だったのか。それとも断交覚悟で、敢えてサウジアラビアの尻尾を踏んだのか。
発端はカタールの「イラン賛美」
事の発端は、カタールに本拠を構えるアルジャジーラ放送局が流した「ハマディ・アル・タニ首長がイスラエルとイランを賛美した」という記事である。
サウジアラビアにとっては宗教的ライバルで、事あるごとに対立してきたイランを褒め称えることは「万死に値する」というわけだ。もちろんカタール政府は即座に否定し、「イランに関する首長の発言はウソだ(フェイクニュースだ)」とサウジに釈明。
ところが、その数日後、イランの大統領選挙で再選されたハッサン・ロウハニ師に対して、ハマディ・アル・タニ首長が直接電話を入れ、再選のお祝いを述べたのである。
カタールとすれば、目と鼻の先に位置するイランであり、儀礼的な祝意の表明だったのであろうが、サウジアラビアとすれば、許し難い行為と映ったようだ。
積もり積もった両国の不信感
実は、積もり積もった不信感が両国の間にはあった。
厳格な戒律を重んじるイスラム国のサウジと比べ、同じイスラム国とはいえ、カタールは自由度において飛びぬけた存在。
豊富な天然ガス資源のお陰で、世界有数の金満国家となったカタール。ぶっちゃけ、人口は40万人と少ないが、1人当たりのGDPでは世界1だ。しかも、女性の社会進出がアラブ世界では突出しており、黒いアバヤを着ている女性は少ない。サウジとは対照的なお国柄である。
しかも、カタールはイスラム過激派集団アルカイダなどへの物心両面の援助を提供してきたとも言われてきた。そのため、テロとの戦いを鮮明に打ち出したトランプ大統領が最初の外遊先であったサウジアラビアで、今回のカタール封じ込めの作戦に合意した可能性もある。
Next: カタールの混乱は日本に「エネルギー危機」をもたらすか?
カタールの混乱は日本に「エネルギー危機」をもたらすか?
いずれにせよ、食糧の全てを輸入に頼るカタールでは、サウジとの国境線を遮断されたため、食糧の陸路輸入がストップし、混乱状態に陥り始めている。
湾岸地域最大の米軍基地を提供しているカタールがアメリカと対立することになれば、1991年の湾岸戦争以来の最大の危機に発展しかねない。
わが国にとって天然ガスの最大の供給国であるカタール。今後の展開次第では、日本にもエネルギー危機として火の粉が飛んでくる恐れもある。
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『浜田かずゆきの『ぶっちゃけ話はここだけで』』(2017年6月9日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による
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