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ヒラリー勝利で「ドイツ銀行危機」再燃? トランプなら日経1000円下げも=斎藤満

今や市場に最も大きな影響を与える要因となっている米国大統領選挙。その結果が最初に見えてくるのは9日(水)の東京市場です。選挙結果と市場の反応を予想してみましょう。(『マンさんの経済あらかると』斎藤満)

※本記事は、『マンさんの経済あらかると』2016年11月7日号の抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:斎藤満(さいとうみつる)
1951年、東京生まれ。グローバル・エコノミスト。一橋大学卒業後、三和銀行に入行。資金為替部時代にニューヨークへ赴任、シニアエコノミストとしてワシントンの動き、とくにFRBの金融政策を探る。その後、三和銀行資金為替部チーフエコノミスト、三和証券調査部長、UFJつばさ証券投資調査部長・チーフエコノミスト、東海東京証券チーフエコノミストを経て2014年6月より独立して現職。為替や金利が動く裏で何が起こっているかを分析している。

アメリカ大統領選後の市場はどう動く? 短期予測と長期予測

足元はヒラリー優勢も予断許さず

事前予想で両者の支持率は接戦となっていますが、州ごとに勝った方が選挙人を総取りするので、前回のオバマ大統領のように、接戦のわりに結果はどちらかの大勝となることも考えられます。

足元の「州ごとの星取表」では、クリントン氏がリードとの結果となっています。11月3日時点でのロイター・イプソスの調査では、251対185でクリントン優勢です。

CNNの同じような分析でも、最終的にはクリントン候補が310人前後と、過半数の270人を大きく超えて勝つとの予想をしていました。

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もっとも、ロイター・イプソスの調査では1日で12票の差が縮小しているので、トランプ氏の追い込み如何では、スイング・ステイツをとって逆転の目も否定できません。何せ、最注目のオハイオ州でトランプ氏がリードとの調査もあります。

クリントン勝利は「売り場」、トランプ勝利は「買い場」

そこで、選挙結果による相場の動きと、投資家の立場での対応を考えてみましょう。

まず、現在有利と見られるクリントン氏が勝った場合、短期的に株やドルが買われると見ますが、「安心」の買いは長続きせず、むしろ変わらない米国の閉塞感から、次第にドルも株も下げやすくなると見ます。

従ってクリントン勝利の場合は、株もドルも「売り場」とみます。

逆にトランプ氏が勝った場合は、ブレグジットと同様、先の読めない不安から、一旦はドルも株も大きく下げると見ますが、売り続けるだけの材料もないので、大きく下げた場合は、一旦「買い場」になるとみます。

不安先行で、短期的には市場は混乱する懸念がありますが、ネオコンなど背後の勢力が次第に手なずける可能性がありますし、突飛な策には議会が賛同しないでしょう。

「ヒラリー・クリントン大統領」誕生で相場はどうなる?

もう少し補足しましょう。クリントン勝利の確率は55%程度と見ますが、クリントン大統領の場合、わけのわからない「お化け」が飛び出す不安はないので、一旦は安心の買戻しが入ると思いますが、これまでの延長線上の政策で、米国は「変化」の期待を失います。

そして二分された米国をまとめることが難しく、不平不満が噴出しやすい中で、ロシア、中国との軋轢も懸念されます。

経済的にはドル高を回避し、軍産複合体向けの外交軍事戦略がとられるとみられます。日本の対ロシア戦略は難しくなり、北方領土の返還問題は厳しくなります。

ドル円はいったん105円を超える円安となる可能性もありますが、次第にドル安、円高に向かうと見られます。米国経済も閉塞感が強まり、成長率が低下し、利上げは難しくなります。

Next: トランプ勝利なら、短期的に日経平均1000円下げ・1ドル95円割れも



トランプ勝利なら、短期的に日経平均1000円下げ・1ドル95円割れも

トランプ大統領となる確率は45%程度と見ますが、この場合、市場はまだ織り込み切れていないので、一旦はドル安円高が進み、ドル円は95円割れの可能性があり、日経平均は1万6千円を割り込むと思われます。これは何が起こるかわからない不安によります。

しかし現実問題としては、トランプの現在のイメージ、主張通りには進まないと見ます。

つまり、彼の背後にいる勢力は、かつてのレーガン大統領のように、いずれは彼らの都合の良い形に手なずけようとすると見ます。

ネオコン勢はすでに「偉大なアメリカを再び」と洗脳しています。この場合、最初はドル安円高が進むものの、強いアメリカが実現するとなれば、いずれドル高となり、株価も上昇すると思います。

読みにくいのは、アメリカ第一主義(保護貿易)、移民排斥がどこまで実現するのか、見えないことです。

トランプの主張通りに不法移民を抑制し、メキシコ国境に壁を作り、中国に高い関税をかけ、貿易協定を見直せば、大恐慌時に近い世界貿易の縮小が起きますが、議会が承認するとは思えず、背後の勢力もさすがに抑えにかかると思います。それでも不透明さは残ります。

それがブレグジットのように、「先のことは先にならないとわからない」と割り切れば、短期的に不安は収まり、不安で落ちた相場はいったん反発の可能性があります。

トランプ大統領となれば、日本の安保体制、中国戦略は見直しが必要となり、対ロシア戦略はむしろ前進する可能性がありそうです。

Next: ヒラリー・クリントン勝利で、ドイツ銀行への「報復」が始まる?



ヒラリー・クリントン勝利で、ドイツ銀行への「報復」が始まる?

クリントン氏は反欧州、反ロシア、反中国の色合いが強く、これを警戒するロンドン拠点の国際金融資本バチカンゴールドマン・サックスなどが、メール問題などを使ってクリントン叩きをしました。

それだけに、クリントン氏が勝てば、欧州勢への報復としてドイツ銀への罰金など、欧州向けには厳しい態度に出ると見られ、欧州銀行リスクが高まります。

トランプ氏にとって厳しいのは、支持基盤の「恵まれない白人」層が地盤低下にあり、彼が敵視するマイノリティが、実は米国で主流となってきていることです。

女性蔑視、人種差別を批判されるトランプ氏には、人口動態的に逆風が強まります。また、背後の勢力に妥協すればよいですが、あまり独自路線を通すと、暗殺リスクが高まります。

従って、トランブ氏が勝った場合は、短期的に相場急落の後反発が予想されますが、その後、中期的にはどこまで背後の勢力に妥協するかで読めない面があり、その都度改めて評価しなおすしかありません。

短期的には、クリントン勝利で相場が上昇すれば「売り場」のチャンス、トランプ勝利で市場混乱なら「買い場」のチャンスを探ることになると思われます。


※本記事は、『マンさんの経済あらかると』2016年11月7日号の抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

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マンさんの経済あらかると』(2016年11月7日号)より
※太字はMONEY VOICE編集部による

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金融・為替市場で40年近いエコノミスト経歴を持つ著者が、日々経済問題と取り組んでいる方々のために、ホットな話題を「あらかると」の形でとりあげます。新聞やTVが取り上げない裏話にもご期待ください。

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