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米大統領選挙「後」を見据えて~7つのシナリオで市場の反応を予測する=藤井まり子

米大統領選挙と同時に行われる上院・下院の議会選挙。これら勝敗の組み合わせによっては波乱の可能性も。本稿では7通りのケースに分け大統領選後のマーケットを予測します。(『藤井まり子の資産形成プレミアム・レポート』藤井まり子)

※本記事は、『藤井まり子の資産形成プレミアム・レポート』2016年11月8日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に定期購読をどうぞ。

市場にとって理想的なシナリオから最悪のシナリオまで徹底検証

オクトーバー・サプライズに翻弄された1週間

この1週間の内外株式市場は、まさに「クリントン私用メール問題の再浮上」に振り回された形でした。

クリントンの私用メール問題(=国家機密に関する極秘情報をセキュリティの甘い私的なPCを使って送受信していた件)は、「非常に不注意ではあったけれど、違法として告発するのも適切ではない」と、ずいぶんの歯切れの悪い終わり方でしたが、今年7月に一件落着したはずの問題でした。

ところが10月28日、その「決着がついていた」はずのクリントン私用メール問題について、別件で「新たな疑惑」が再浮上してきました。コーニーFBI長官が、司法省の反対を押し切る形で、再捜査を始めたことを公表してしまったのです。

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このFBIの捜査が公表されてから、一部の世論調査では、トランプ候補への支持率がヒラリーのそれを逆転して上回る事態にまで発展しました。

アメリカ大統領選挙は、「選挙人ポイント制」です。支持率では決まりません。けれども、選挙の直前10日前になって「前代未聞、FBIに追訴されている新大統領の誕生か!?」「トランプ候補の猛烈な追い上げで、トランプ氏の大逆転勝利か!?」というオクトーバー・サプライズにより、内外の株式市場のボラティリティが高まりました。

アメリカFBIのコーミー長官が司法省の反対を押し切っていたこと、元共和党員だったことも関係して、「クリントンの私用メール問題」は「陰謀論」にまで広がりました。
(アメリカの場合は、こと大統領選挙に関しては、この手の陰謀論が「当たっている」「間違っていない」場合も少なくありません)

内外の株式市場は、10月28日までは、「大統領選挙はクリントンの圧勝」「議会のほうは上院は民主党・下院は共和党」「オバマ政権時代と変わりなし」とタカをくくっていました(当メルマガもそうでした)。

しかし10月28日以降は「トランプ・リスク」が急台頭し、「アメリカ大統領選は、接戦になるかもしれない」ということで、騒然となったわけです。

トランプ候補が大統領になる確率は低いけれども(今ならだいたい30%くらいか?)、もし「トランプ大統領」が誕生するならば(マーケットではこれを「もしトラ」と呼んでいます)、それこそBrexit同様の「ブラックスワン」になるとの見方が広がりました。

後述するように、「もしトラ」が起きたならば、内外の株式市場は暴落します。想像するだに恐ろしいことです。

ところが!日本時間の11月7日未明に、コーミーFBI長官が今度は「すべてのメールを精査したが、追訴は適当ではない」と公表しました。コーミー長官は、司法省から圧力を受けたのでしょう。

これを受けた11月7日の内外マーケットは、2%前後の急騰!この日だけで「1週間分の下げ」のほとんどを取り戻した形となりました。急転直下の「オクトーバー・サプライズ」が、わずか10日間のうちに2回も起きたわけです。ずいぶん気ぜわしい1週間でしたね。

「政権基盤の弱い新大統領」が誕生する?

では、「メール問題」の後遺症は残っていないのでしょうか?アメリカ大統領選挙の情勢は、10月28日以前の「メール問題再捜査の前」の状態に戻っているのでしょうか?

そんなことはないと思います。

有権者は、忘れっぽいんです。有権者は「最近起きたこと」に、大きく影響されるのです。ただでさえ「イメージの悪い」「人気のない」ヒラリー・クリントンのイメージが、ますます悪くなった可能性があります。

引き続き、ヒラリー・クリントンが大統領に選ばれる可能性のほうが高いものの、今回の大統領選挙は接戦になる可能性が出てきています。

接戦になれば、後ほど詳しく解説するように、「クリントン大統領」がやっとこさ誕生しても、「政権基盤の脆弱な新大統領」「支持率の低い新大統領」になってしまいます。

さらには、可能性としては低いものの、私たちは、「ドナルド・トランプ新大統領」誕生のケースも検討しておいたほうが良いでしょう。

Next: 最も確率が高いメインシナリオ1。それでも日経平均の上値は重い?

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