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似ているようで違うトランプ・ショックとブレグジット、市場さらに乱高下も

16日の日経平均株価は反発。引き続きトランプ大統領誕生を前向きに捉える動きが続いています。ただ個人的には引き続きボラティリティの高い展開を想定して警戒しています。(『KA.Blog』)

まったく見えない「トランプ大統領の真意」市場はさらに乱高下も

日経平均は反発

11月16日、都合良く上がる日経平均は反発。前日のNYは製造業景況指数や小売り売上といった出てきた経済指標が軒並み良かったこと、また原油価格がサウジとロシア高官の会談により減産期待感が高まったことで強含んだことから、エネルギー関連株に買いが入りました。ダウは終値ベースで最高値を更新。

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それを受けた日経平均は朝方から買いが先行。一気に17800円台に乗せると、その後は横ばい推移となりました。中国人民元基準値がまた8年ぶりの安値水準となったものの、特段嫌気する動きはありませんでした。その後も金融株中心に買われ後場も高値圏を維持。売買高は14時半現在で21億株台で引き続き活況。

日経平均株価 日足(SBI証券提供)

投資判断は「中立」。引き続きトランプ大統領誕生を前向きに捉える動きが続いています。ただ個人的には引き続きボラティリティの高い展開を想定して警戒しています。

先週はBrexit決定時と同じ動き。しかし状況は異なる

「先週の動きが丁度Brexitの時と同じく、そこでふるい落としが終わったから、後は高値追いの動きが続くのでは無いか」という意見もありますが、確かに足元はそんな感じにはなっていますね。場中に日本で起きた衝撃、また海外は意外にそれ程反応していない、という点も同じかも知れません。

ただ本質的に決定的に違うことが一つあり、Brexitは「ひょっとしたら離脱無しにできるかも?」というような風潮があって、今も続いています。一方、確かにポンドは売られ、それがイギリス経済を強くする反面、市民にとっては物価の高騰という影響が出ており、市場は離脱を織り込んでいるとも言えます。

これに関してはまだそもそも離脱していませんし、ユーロ圏の移動がどうなるか(パスポートが必要になるのかどうか)、といった部分の決着も一応付いておらず、そこまで株式市場は織り込んでいません。もし行き来が不便になると、どうしてもビジネス需要は減退しますから、これは間違い無くイギリス経済の打撃になってくると思います。

その点に関しては先般、日産<7201>に対してメイ首相が「大丈夫よ」と伝えたと報じられています。これの背景には、ユーロ圏の移動に関しては現状通りできるように取りはからうつもり、と考えているのだと思います。ですから、まだ本当の意味でのBrexitが起こっていないと言えます。

Next: 政治家としてのトランプ氏は未知数、市場はさらに乱高下の可能性も



政治家としてのトランプ氏は未知数

翻って今回のトランプ大統領の選出は決定事項です。しかも4年間は続くことが確定されています。不謹慎なことを言えば、これからトランプ氏に何らかがあって倒れたりしなければ、ですが。

実はもう一つ、私はコレもあるんじゃないかと思うのが「えっ、マジで俺?」とトランプ氏自身がビックリして腰が引けてしまうパターン。つまりBrexitで前ロンドン市長のボリス・ジョンソン氏が煽るだけ煽って、結局逃げたのと同じパターンです。

アメリカでは大統領選挙に出るというのはそれがビジネスの一つとされている点もあり、たくさんの候補者が出ていますが、皆その後本を出版したり、講演をしたり、会社の社外取締役になったりと「旨み」があるので、どんなに泡沫でも「参加することに意義がある」と言われています。トランプ氏もこれだけジタバタすれば世界的に名が知れ、トランプタワーも良い宣伝になって万々歳。今流行の「炎上商法」というやつとも言えます。

ですから、自身も本当に大統領になるとは思ってもいなかったので、言いたい放題の無敵モードだったのではないかと。だから案外「実はワシももう歳だから心臓が弱くて…。ペンス君、後はやってくれんかね?」というパターンも0ではないと思ったりしています。まあ確率は低いでしょうけれど。

もしそういうケースで無い限り、トランプ大統領の行動はあの性格通りのものでしょうから、議会も共和党が占める中では正にやりたい放題になる可能性はあります。議会の方も、眉をしかめながらも国民の大多数の意思で選ばれた大統領を無下にはできないでしょう。

そういう予見できない爆弾を抱えた状態が最低4年間続きます。ましてトランプ氏は(少なくとも現在は)政治経験がありません。政治経験が少ない人をトップに据えたらどうなるか。何年前かの日本はそういう時代がありましたね。

ともあれ株式市場は今トランプ氏の情報が少な過ぎます。この場合の情報というのは「政治家として彼がどう振る舞うか」という情報です。となると、株式市場は恐らくこの先しばらく乱高下を繰り返します。何故ならわからないから、期待と不安が交錯するからです。

ボラティリティの大きさはデイトレーダーなどにとっては面白いのかも知れませんが、一般の年金資金などといった長期投資家にとって、アメリカ株というのは非常に不適格になる可能性があり、今後アメリカ株敬遠の原因になってくるでしょう。

Next: 新興市場の投資判断も「中立」。マザーズ市場のポイントは



新興市場も「中立」。両指数ともに堅調

新興市場も「中立」。本日は両指数ともに堅調。昨日からようやくマザーズ指数も底打ち反転の流れに。主力のそーせいG<4565>、CYBERDYNE<7779>がともあれ決算を通過し、出尽くし感から買われる展開になりました。それに合わせてマザーズ指数も活気を帯びてきた感じ。アメリカでもトランプ大統領誕生以後売られていた「IT系」の株に買い戻しが入ったことも、安心感に繋がりました。

そーせいG<4565> 日足(SBI証券提供)

CYBERDYNE<7779> 日足(SBI証券提供)

やはり、そーせいGの5月高値から信用期日も越えて、反発しやすい環境にはなっていました。もう一つ市場で話題となったのは、筆頭株主が個人投資家の五味大輔氏になったこと。mixi<2121>などの大株主だったこともあり、マザーズの主として名を馳せています。うーん、攻めますね-。どういう投資勘なのか、一度お話を伺ってみたいものですね。

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KA.Blog』(2016年11月16日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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