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トランプ、北朝鮮、FRB出口戦略…市場が身構える「リスク三重奏」の焦点=近藤駿介

今週は米国を中心に「地政学リスク」「政治的リスク」「金融政策リスク」の3つのリスクを意識せざるを得ず、相場は神経質な展開となる可能性が高い。(『近藤駿介~金融市場を通して見える世界』近藤駿介)

プロフィール:近藤駿介(こんどうしゅんすけ)
ファンドマネージャー、ストラテジストとして金融市場で20年以上の実戦経験。評論活動の傍ら国会議員政策顧問などを歴任。教科書的な評論・解説ではなく、市場参加者の肌感覚を伝える無料メルマガに加え、有料版『元ファンドマネージャー近藤駿介の現場感覚』を好評配信中。

思わぬドル安・円高も?トリプルリスクの見極めはここがポイント

急速に高まる米国の政治的リスク

米国と北朝鮮との緊張感が少し和らぐなか、スペインで連続テロが起き、地政学リスクの主役は北朝鮮から再びイスラム過激派に戻る格好となった。その一方で米国では白人至上主義者とその反対者の間で衝突が発生、女性1人が命を落とすという悲劇的事件が発生。

そして、この事件に対するトランプ大統領の対応をめぐって混乱が生じ、トランプ大統領の最側近であったバノン主席戦略官・上級顧問が解任される事態となり、米国で政治的リスクが急速に高まる結果となった。

北朝鮮リスクに揺れる金融市場

トランプ大統領と金正恩書記長との過激な発言の応酬に伴う地政学リスクに揺れた金融市場は、週明けから一旦落ち着きを取り戻したが、週末にかけて再び高まった地政学リスクと政治的リスクにより再び不安定な展開となって週内の取引を終えた。

こうしたなか、今週21日からは、北朝鮮がミサイル発射をやめる条件の1つとして挙げている米韓合同軍事練習が実施される。バノン氏解任もあり、トランプ政権がやや現実派に近付いたであろうことを考えると、武力衝突が起きる可能性も下がったと考えられるが、金融市場は地政学リスクを意識しながらのスタートとなることは必至の情勢といえる。

さらに今週末には米国ジャクソンホールでイエレンFRB議長とドラギECB議長の講演が予定されており、金融政策に関する思惑も交錯しやすい週だといえる。

意識せざるを得ない3大リスクと円高基調

今週は「地政学リスク」「政治的リスク」「金融政策リスク」の3つのリスクを意識せざるを得ず神経質な展開となる可能性は高い。

こうしたリスク三重奏のなかでは、「比較的安全な円資産が買われる」という市場が信じ切っているセオリーが強まる方向に向かうことは自然な流れ。しかし、北朝鮮に伴う地政学リスクにこうしたセオリーを単純に当てはめることには違和感を覚えるところ。

今回の北朝鮮に伴う地政学リスクが急激に高まったのは、北朝鮮が大陸間弾道弾ミサイルの実験に成功したこと、すでに核弾頭を数十発保有している可能性が高い中で、グアム島周辺の公海にミサイル4発を撃つ実験を行うと米国領を標的とすることを明言したからである。

つまり、今回の北朝鮮に伴う地政学リスクの高まりがこれまでのものと違うのは、北朝鮮の攻撃範囲が日本と韓国から米国本土及び米国領にまで拡大されたことである。換言すれば、日本が抱える地政学リスクは大きな変化がないなか、米国の抱える地政学リスクが大幅に上がったところである。

投資リスクという観点から重要なことは、米国の地政学リスクが高まったことでドル安をもたらす可能性が高まった点である。これまでは「比較的安全だと思われている円が買われる」なかで円高圧力が高まったのに対して、「安全だと信じられてきたドルに対する不安からドルが売られる」結果として円高が進行しやすい状況に変わってきているという認識は必要そうだ。

Next: 「ドルに対する不安からドルが売られる」展開になりやすい



ドル指数はトランプ政権誕生以来の最低水準まで低下

先週末時点でのドル指数は93.36と「強いアメリカ」を標榜するトランプ大統領が誕生して以来最低水準まで低下している。バノン氏解任などトランプ政権の不安定さが増していけば「安全だと信じられてきたドルに対する不安からドルが売られる」展開になりやすいことは念頭に置いておいたほうがよさそうだ。

「地政学リスク」と「政治的リスク」が高まるなかでイエレンFRB議長とドラギECB総裁が登壇するジャクソンホールでの講演が行われる。両トップが今後の金融政策、特に量的緩和の「出口」に関してどのような発言をするのかが注目点だが、個人的には両者とも――
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近藤駿介~金融市場を通して見える世界』(2017年8月21日)より
※記事タイトル、本文見出し、太字はMONEY VOICE編集部による

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