米ヤフーファイナンスは8月12日、「目先だけは弱気派」に転じたシラー博士と、「万年強気派」のシーゲル博士の対談を配信しました。内容をざっくりと紹介します。(『資産形成・マクロ金融deあそぼ♪ − 貞子ちゃんの連れ連れ日記』藤井まり子)
※本記事は有料メルマガ『資産形成・マクロ金融deあそぼ♪ − 貞子ちゃんの連れ連れ日記』2017年8月22日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にご購読をどうぞ。当月配信済みのバックナンバーもすぐ読めます。
慎重派「シラー博士」と万年強気派「シーゲル博士」が夢の対談!
影響力のある2人の権威が直接対決
今回は、行動経済学者(株式市場の動きを予測する学問の学者)にしてノーベル経済学者のロバート・シラー博士と、ジェレミー・シーゲル博士(ウォートン経済学者にして株式市場では万年強気派として知られる学者)の対談内容をざっくりとご紹介します。
シラー博士は、春先までどちらかというと強気派で、「アメリカの株価は2倍になるかもしれないし、半額になるかもしれないけど、まぁ、まだ上がるだろう」と発言していました。初夏でも「アメリカの株価は危険領域に達したけど、まだ上がるかもしれない」と、「警戒しながらも強気」を繰り返してきました。シラー博士のアメリカ株式市場への影響は絶大です。
そのシラー博士、直近では、やや弱気派へ転向しています。「中長期では強気」を予測するものの、「目先、アメリカ株式市場の近いうちの調整、あるいは弱気相場入り」に警鐘を鳴らし始めました。
そこで、ヤフーファイナンスは8月12日に「特番」を組んで、直近「目先だけは弱気派」に転じたシラー博士と、「万年強気派」のシーゲル博士を夢の共演・対談させる「スペシャル番組」を配信しました。
シラー博士とシーゲル博士を対談でぶつけるあたりは、「調整は仕方がないとしても、20%以上の大幅下落(=弱気相場入り)だけはなんとしても避けたい」ヤフーファイナンスの思惑が透けて見えます。
2人の市場予測は?
では、2人の意見は、どんなだったでしょうか?
結論から言えば、下記のような予測を繰り広げています。
<強気派のシーゲル博士>
- アメリカ株式市場は、秋にも調整は来ない(ただし、トランプの税制改革が実現しなかったら調整は来る)
- ダウは2017年末に2万4,000に達する。上昇の仕方としてはとても穏やか
- アメリカの景気拡大期は続くが、そのGDP成長率はとても低い
- 今後は中国インドなどの高成長の新興国株式市場のほうがアメリカ株式市場よりも有望
- 今現在のアメリカ株式市場はバブルではない
- トランプ大統領時代は1期(4年)だけ。アメリカの景気後退はトランプ時代には起きない
- アメリカの景気拡大は、向こう4年、長ければ8年くらい続くだろう
これにたいして、慎重派のシラー博士は、いつもどおり「シラーPER」指標を持ち出しています。
<慎重派のシラー博士>
- 「中長期では強気なものの、目先は慎重論」を展開
- アメリカ株式市場の調整は近い。もしかしたら弱気相場入りするかもしれない
- アメリカ株式市場は2017年末までに持ち直して、今より高くなる。その上昇の仕方は穏やか
- アメリカの景気拡大期は続くが、そのGDP成長率はとても低い(この点はシーゲル博士と同意見)
- 今後は中国インドなどの高成長の新興国株式市場のほうがアメリカ株式市場よりも有望(この点もシーゲル博士と同意見)
- 今現在のアメリカ株はバブルだ。と言っても、そのバブルは、「バブルの道半ば」
- トランプ大統領時代は1期(4年)だけ。アメリカの景気後退はトランプ時代に始まる
バブルが弾けて突然景気後退に入る(今までの歴史と同じ) - アメリカの景気後退入りの時期はかつては4年後に訪れると予測していたが、バブルが始まってしまったので、景気後退時期も「4年以内」に早まった
- かつてのITバブル(ドットコムバブル)は「根拠なき熱狂」が人々をバブルに駆り立てた。今は、コンピューターなどの「ハイテクへの恐怖」が人々をバブルへ駆り立てつつある。人々は自分たちの雇用や子供たちの雇用が将来コンピューターに奪われることを、とても「恐怖」している。この「雇用を奪われることへの恐怖」こそが人々を不動産や株式や債券への投資へと駆り立てている
Next: 再びアメリカ株式市場は「壊滅的な巨大バブル」を形成するか?
アメリカ株式市場は「壊滅的な巨大バブル」を形成するか?
実際に、今のアメリカ人は、キャピタルゲイン狙いで株式投資をしているのではなく、配当狙いで株式投資をしている傾向があります。
アメリカ人が、キャピタルゲイン狙いではない株式投資をするのは、戦後初めてのことかもしれません。何かが「構造的」に変わりつつあります。
イエレンFRBが低金利政策を継続しても、思っていたよりもインフレは起きません。失業率が下がっても、2%インフレがなかなか起きないのです。
こういった状況では平均賃金が上昇しません。サービス部門では低賃金の雇用は伸びても、ファンドマネージャー、会計士、弁護士、医師などのハイスペックだったはずの高給の雇用は、実際に人工知能に取って変わられつつあります。これでは、賃金は伸びません。
一方、グローバリゼーションでは「物価は下落傾向を辿る」現象も引き続き継続しています。
物価が上がらないので、賃金が伸びない。賃金が伸びないので物価が上がらない。アメリカ経済のみならず、先進国全体が低成長へシフトして行っているのです。
低成長の中で、物価が上がらないので、イエレン女史が次期FRB議長に再任されても、コーン国家経済会議(NEC)議長が次期FRB議長に任命されても、アメリカの低金利時代は意外と長引くでしょう。低金利時代が長引けば、それは「バブルの温床」になります。
次期FRB議長は、イエレン女史が再任されることが「理想」ですが、果たしてその通りになるかどうか?
コーンNEC議長は、イエレン女史よりもさらに低金利を愛好する傾向が強そうです。この秋(11月あたりか?)、コーン氏が次期FRB議長に任命されれば、再びアメリカ株式市場は熱狂、「壊滅的な巨大バブル」を形成する可能性が高くなります。
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アメリカ株は「上がりすぎたことが原因の調整」へ
株価はこれからどうなるのか?
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『資産形成・マクロ金融deあそぼ♪ − 貞子ちゃんの連れ連れ日記』(2017年8月22日号)より一部抜粋、再構成
※太字はMONEY VOICE編集部による
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