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習近平と激突。手のひら返しで「対中国強硬路線」に舵を切るトランプ=斎藤満

親中派のキッシンジャー氏が北京を訪れている最中に台湾の蔡総統と電話会談し、習主席を怒らせたトランプ氏。今後も、経済・軍事両面で中国を攻める可能性が高いでしょう。(『マンさんの経済あらかると』斎藤満)

※本記事は、『マンさんの経済あらかると』2016年12月19日号の抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:斎藤満(さいとうみつる)
1951年、東京生まれ。グローバル・エコノミスト。一橋大学卒業後、三和銀行に入行。資金為替部時代にニューヨークへ赴任、シニアエコノミストとしてワシントンの動き、とくにFRBの金融政策を探る。その後、三和銀行資金為替部チーフエコノミスト、三和証券調査部長、UFJつばさ証券投資調査部長・チーフエコノミスト、東海東京証券チーフエコノミストを経て2014年6月より独立して現職。為替や金利が動く裏で何が起こっているかを分析している。

トランプ政権は経済・軍事の両面作戦で中国を潰しにかかる

弱まっていた対中強硬論

トランプ次期大統領の対中国戦略が、かなり強硬路線になりそうなことが見えてきました。中国サイドがかなり神経質になっていると同時に、米国内にも対中関係の悪化、報復を危惧する声が高まっています。

これは日本にも当然大きな影響を及ぼしますが、日本政府の準備、対応が必ずしも十分でないのが気がかりです。

トランプ氏の米国が、これまでのオバマ政権以上にロシア寄り、英国寄り、イスラエル支持に傾斜していることが明確になり、さらに不透明であった中国戦略も、当初の予想と異なってきたのです。

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巷では、「アメリカ・ファースト」はかつての「モンロー主義」に近く、ロシアや中国には一定の範囲で好きなようにやらせる、との説がありました。このため、選挙キャンペーン中に発していた対中国強硬論、例えば中国を為替操作国に指定する、あるいは中国のダンピングに対して、高率関税をかける、などの発言は、実際には実行されず、最後には米中経済関係を重視せざるを得ない、との見方がありました。

12月8日には習主席と近いブランスタド・アイオワ州知事を中国大使に指名し、この感は強まりました。

またトランプ陣営の中では、中国が主導するAIIBにアメリカも参加すべき、との声も上がり、さらに、CFR(外交問題評議会)の重鎮で、親中派の代表ともいえるキッシンジャー元国務長官を北京に派遣したことから、対中強硬論はかなり後退しました。

手のひら返し

ところが、ここから事態は急変します。キッシンジャー氏がまさに北京を訪れている最中に、トランプ氏は台湾の蔡総統と電話会談をし、習主席を怒らせ、キッシンジャー氏の面子を潰しました。

トランプ氏は、中国の反発に対し、今度は「一つの中国」という考えにはとらわれないと、中国の基本認識自体を否定する発言をしました。ここに至って、トランプ次期政権の対中国路線は、これまで以上に強硬路線になることがほぼ判明しました。

中国は米国の出方を探るために、東シナ海で日本の領空を脅かし、日本を挑発し、南シナ海では米国の無人水中捜査船を拿捕しました。

中国は米国をけん制したつもりでしたが、さすがに米国は強硬に抗議したため、中国軍はこの無人水中捜査船の返還を約束しました。中国は米国と戦争しても勝てないのはわかっているので、軍事行動には慎重にならざるを得ないからです。しかし、米国が強硬策に出てくれば、中国が指をくわえてみているとも考えられません。

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経済、軍事両面で中国を攻めるトランプ

トランプ氏は米国経済の苦境の一因として、中国の為替操作、ダンピングを挙げ、敵視しています。トランプ氏は今後、経済、軍事両面から中国を攻めてくる可能性があります。

一般に軍産複合体とは相いれないトランプ氏との評価も見られますが、実際には軍事産業にも配慮した動きが見られ、軍事面でも強硬論に出る懸念があります。

その点、対中国では米国が台湾への武器供給を進める可能性があり、台湾海峡の緊張が高まる可能性があります。米国では軍事産業にいい顔をすることができます。また国務長官に指名されたエクソンCEOのティラーソン氏は、親ロであると同時に、中国嫌いでも有名です。

経済的には、2つの面から米国が中国を攻める可能性があります。1つは、米国製品に対して中国が不当な関税をかけ、逆に中国製品は通貨安政策とダンピングで米国製造業を圧迫していることへの対応。今1つは、FRBの利上げを通じて中国の債務負担を高め、その面から中国の経済力を削ぐことです。

米国企業の中には中国の報復を懸念する声が上がっていますが、中国の対米黒字が圧倒的に大きい点を見ても、経済戦争になって大きなダメージを受けるのは中国です。

中国に進出している米国企業が不当な差別を受ければ、米国の軍事力行使米国内での中国資産の凍結など、こちらの報復も甚大で、米国企業よりも中国マネーが大きな負担を強いられます。

来年のFRBの利上げには中国当局はかなり神経質になっています。ドル建て債務が大きいこともさることながら、中国からの資金流出が一層加速する懸念があり、中国経済がダブルで影響を受け、中国経済は来年かなり悪化が予想されます

共産党政権が維持されている間は、中国危機は回避できます。しかし体制が崩壊すれば、旧ソ連と同じ運命になります。

このように、米中関係が緊張し、関係悪化が進むと、その影響は日本経済にも及びます。日本の輸出の約2割が中国向けで、アジア全体で5割、これに豪州を加えると6割を占め、これらも中国の影響を受けます。中国投資や中国に進出している企業も中国経済悪化の影響を受けます。中国関連銘柄は、今後米中の動きに細心の注意が必要です。
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※本記事は、『マンさんの経済あらかると』2016年12月19日号の抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

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マンさんの経済あらかると』(2016年12月19日号)より抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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金融・為替市場で40年近いエコノミスト経歴を持つ著者が、日々経済問題と取り組んでいる方々のために、ホットな話題を「あらかると」の形でとりあげます。新聞やTVが取り上げない裏話にもご期待ください。

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