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今の日本はバブル期よりも好景気?「そんなわけはない」これだけの証拠=三橋貴明

2017年7月の有効求人倍率が1.52倍となったが、これは何とバブル期をも上回っている。日本はバブル期よりも景気がいいのだろうか。そんなはずがないのである。(『週刊三橋貴明 ~新世紀のビッグブラザーへ~』三橋貴明)

※本記事は、『週刊三橋貴明 ~新世紀のビッグブラザーへ~』 2017年9月16日号の抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

日本はバブル期よりも景気がいい? 失業率低下「本当の理由」

正社員の有効求人倍率、統計史上初の「1倍超え」

2017年7月の完全失業率は2.8%と、3%を切っている。有効求人倍率に至っては1.52(!)。求職者1人に対し、求人が1.5あるわけだ。さらに、正規社員の有効求人倍率も1.01と、統計史上、初めて1倍を超えた。

ちなみに、有効求人倍率1.52とは、何とバブル期をも上回っている。日本はバブル期よりも景気がいいのだろうか。そんなはずがないのである。

日本がGDPつまりは「生産」「需要」「所得の拡大により、失業率が下がっているならば、実質賃金が上昇しなければならない

実質賃金は、生産性の向上とリンクする。生産者1人当たりの「生産」が増えることこそが、実質賃金の上昇そのものだ。

現実の日本は、実質賃金が相変わらず対前年比で落ち込み続けている。つまりは生産性が下がっているのである。それにも関わらず、雇用が改善している。

雇用が改善している2つの理由

日本の雇用が改善している理由は、主に2つある。

1つ目は、少子高齢化に端を発した生産年齢人口比率の低下だ。総人口≒総需要に対し、生産年齢人口≒供給能力の割合が下がっていく。

特に、人口の瘤(こぶ)である団塊の世代が労働市場から退出し、それを埋めるだけの若い生産者は入ってこない。当然ながら、失業率は下がる

そして、2つ目が「フルタイム労働者」の退職を、「短時間労働者」で埋めようとする企業の雇用傾向だ。

【日本の総実労働時間(調査産業計、月平均)と対前年比(%)】

出典:三橋貴明公式ブログ『新世紀のビッグブラザーへ

図は、日本の労働者の総実労働時間(月平均)の推移を見たものだ。

1997年には月平均で157時間を超えていた総実労働時間が、2016年には144時間を下回っている。しかも、驚くべきことに、2016年の値は、リーマンショックで仕事が一気になくなった2009年よりも低いのだ。

ちなみに、2009年の就業者数の月平均は6315万人であった。それに対し、2016年は6465万人。何と、2016年の方が150万人も多い。

日本は少子高齢化で、労働人口は増えていない。就業者数にここまで差がある以上、失業率も異なる。2016年の失業率が3%であるのに対し、2009年は5%を上回っていた。

2016年の就業者数が、対2009年比で150万人も多く、失業率もはるかに低い。より多
くの人々が働いているにも関わらず、総実労働時間の平均が下がっている

失業率が下がっているということは、仕事に対し、人員が不足しているという話だ。人員が不足するならば、普通は総実労働時間は増える。ところが、現実には減っている

要するに、企業が「短時間労働」の労働者を雇っていっているという話である。フルタイムの労働者が退職し、短時間労働のパートタイマーなどで穴を埋める。当然ながら、より多くの人員を雇わなければならなくなり、就業者数が増え、失業率が下がったのである。

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失業率低下は、安倍政権の経済政策の成果でも何でもない

失業率の低下は、別に安倍政権の経済政策の成果でも何でもない。そもそも、日本の失業率は民主党政権期から継続的に下がり続けていた。

【関連】安倍内閣がひた隠す景気後退「いざなぎ詐欺」の忖度と不正を暴く=斎藤満

この現実から目をそらし、「アベノミクスの効果で失業率が下がった!」などとやっている限り、日本政府はまともなデフレ対策に踏み出すことはないだろう

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※本記事は有料メルマガ『週刊三橋貴明 ~新世紀のビッグブラザーへ~』2017年9月16日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

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週刊三橋貴明 ~新世紀のビッグブラザーへ~』(2017年9月16日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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