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2次売却に必死の日本郵政は「高配当株のフリ」をいつまで続けられるのか?=街

財務省が保有する日本郵政株を1株あたり1322円で2次売却すると発表しました。1.3兆円の歳入ありきで決まった株価ですから、投資家が儲かるはずもありません。(『億の近道』街のコンサルタント)

プロフィール:街のコンサルタント
20数年間を金融(主に証券)会社で過ごし、投資銀行業務や事業育成の業務を担当。「金融機関に籍を置く(安全な)立場で客観的なことを言うより、いっそのこと経営者と同じ立場で事業拡大のお手伝いを出来ないものか」と思い立ち、2005年春に証券会社をリタイアしてコンサルティング会社を設立。

投資家が儲かるはずもない。「政府のため」だけの郵政株2次売却

幹事証券会社の苦労

郵政株の売り出しでは、幹事証券会社は大変だったかと思います。激しい引き受け競争を繰り広げていますし、国策銘柄でもありますから、大手証券会社はこの売り出しに参加せざるを得ません。

第1次売り出しによって一昨年11月に上場したときの株価が1,631円。その後に高値を付けて以降は、ここ1年ほど概ね1,400円前後で推移しています。25日に売り出し価格が1株1,322円で決まり、約9億株超が売り出されることで、約1兆3,000億円の資金が市場から吸い上げられる売り出し案件です。

日本郵政<6178> 週足(SBI証券提供)

業容拡大を焦って海外企業のM&Aに失敗したマヌケな経営陣であり、かつ売り上げも利益も漸減している旧型の会社が、何をきっかけとして成長するのか? どうやって利益を上げて株主に報いていくのか?…不明な中で、幹事証券会社は1兆円以上も引き受けて販売(投資家へのはめ込み営業)をしていたのですから、熾烈だったはずです。

しかも売り出しを発表して、一時1,200円台まで売られてから価格決定日まで、様々な仕掛けをして株価を上げていました。政府公認の相場操縦と言えます(苦笑)。

個人投資家が儲かるはずもない

国民のための民営化というより、1.3兆円の歳入ありきの民営化案件として株価を決めているのですから、投資家が儲かるはずもありません。しかも、まだ6割の株式が政府の手にあります

復興財源と言えば大義が立つ」と言いたいのでしょうが、不安定な財源を無責任に国民に押し付けられても困ります。

恐らくは、売り出し株が上場してしばらくは幹事証券の営業努力などで値を保つのでしょうが、将来性が見いだされなければ、早晩崩れることになるのでしょう。売上も利益も減りつつある会社が、今期予想1株利益が100円にも満たない中で、配当を50円に引き上げました。無理を感じます。

Next: 日本郵政は成長株ではなく、高配当が続く保証もない



日本郵政株は成長株ではない

一昨年の上場時には「将来性を考えるなら、まぁ買えるのは、かんぽ生命くらいではないか?」と書きましたが、残念ながら、ものの見事に「ゆうちょ銀行」も「かんぽ生命」も、3銘柄とも上場直後に高値を付けてから下がったままです。

買っている投資家は配当利回り重視ということなのでしょうが、これとて何時まで続くのか?

日本郵政株は、NTTと違って、成長株ではありません。30年前のNTTの幻想を見せて売り出すなど、日本の株式市場が典型的な発行企業(今回は政府)のための市場であることを政府自身が証明しているのですから、国内投資家は報われません

投資家は騙されるな

貯蓄から投資へ」…と言う前に、まずは投資家のための市場整備・運営をすることが先だと思います。

こんなものに大事な資金を誘導されていては、老後どころの話ではありません。政府の資金調達を手伝って損をするより、大きな為替変動を受け入れられる投資家なら海外市場の方が魅力的な投資案件が多数あります。

あまり詳しくない方でも、まずは勉強のつもりで、海外の株式インデックスに連動するETFや、比較的利回りの高い外貨建て債券などへの投資を検討する方がよっぽどマシです。

注意すべきは大手証券会社や銀行、保険会社、商品先物会社などが勧めてくる(わかりづらくて)リスクばかりが高い投資や、仕組みの複雑な金融商品です。

何せこの手の金融商品は手数料も高いし運営コストばかりで、投資家は儲かりません。言われた通りに売買して損切りを繰り返している投資家(被害者)が多数おられます。

外貨建て保険などはコスト高の典型例ですね。大手金融の窓口にあるパンフレットなどを時々チェックしますが、まさに「コストの塊!」としか言いようが無い商品やサービスばかりが並びます。大手金融のブランドに加え見栄えや文言は立派ですが、そのあまりの高コスト構造に呆れます。

Next: 優遇される保険と不動産。監督当局がグルになってボッタクリ



保険と不動産は節税面で優遇されている

余談ですが、保険不動産はいつまで経っても相続対策(露骨な節税策)が使えるように優遇されています。政治屋や当局との癒着があるからです。

そして大手金融と下手に取引を始めたら最後、今度は「あれ買え、これ買え」と営業攻勢が始まります。悪徳不動産会社の営業攻勢と変わりませんね。まぁ、悪徳不動産に至っては規制が緩いのをいいことに、脅迫行為も厭わないほど悪質ではありますが…。

【関連】日本郵政の危ないマネーゲーム。個人をはめ込む政府株売却の本音と建前=近藤駿介

それらの監督当局はと言えば、いい加減トラブルが増えるまで、金融庁や国交省などは(業界保護のため)見て見ぬ振りをします。業界と監督当局がグルになってボッタクリをしているのですから、お金持ちの高齢者は大変です。被害額はオレオレ詐欺の100倍を優に超えているのでしょう(呆)。

【関連】日本郵政「4000億円損失」の裏事情と、株を買ってはいけない真のリスク=栫井駿介

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億の近道』(2017年9月28日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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