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いくらで人生逃げ切れる?超少子高齢化社会の「ハッピーリタイヤ」入門=俣野成敏

老後の資金はいくらあれば足りるのでしょうか?なぜ「老後」が話題に出ると、皆一様に暗い表情になるのでしょうか?現状を分析し、具体的な対策を考えます。(俣野成敏の『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」』実践編

プロフィール:俣野成敏(またのなるとし)
30歳の時に遭遇したリストラと同時に公募された社内ベンチャー制度で一念発起。年商14億円の企業に育てる。33歳で東証一部上場グループ約130社の現役最年少の役員に抜擢され、さらには40歳で本社召還、史上最年少の上級顧問に就任する。2012年の独立後は、フランチャイズ2業態6店舗のビジネスオーナーや投資活動の傍ら、マネープランの実現にコミットしたマネースクールを共催。自らの経験を書にした『プロフェッショナルサラリーマン』及び『一流の人はなぜそこまで、◯◯にこだわるのか?』のシリーズが、それぞれ12万部を超えるベストセラーとなる。近著では、『トップ1%の人だけが知っている』(日本経済新聞出版社)のシリーズが10万部超えに。著作累計は44万部。ビジネス誌の掲載実績多数。『MONEY VOICE』『リクナビNEXTジャーナル』等のオンラインメディアにも数多く寄稿。『まぐまぐ大賞(MONEY VOICE賞)』を3年連続で受賞している。

※本記事は有料メルマガ『俣野成敏の『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」』実践編』2017年9月28日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

超高齢化社会での幸せな老後(上)「100年生きる覚悟」はあるか?

2025年「お年寄りの5人に1人」が認知症に

いつまでも健康で若々しく」というのは、今も昔も変わらない、人間の願いの1つでしょう。

厚生労働省が2015年に発表したところによれば、2025年には認知症を患う人の数が700万人を超えるだろうと推測されています。これは実に、65歳以上の高齢者のうちの5人に1人に当たるということです。2012年の認知症を罹患した方の推計人数が約462万人だったのと比べると、10年ちょっとの間に約1.5倍増という、ハイペースでの増加です。

また、同じく同省が2013年に公表した「国民生活基礎調査の概況 平成25年版」によると、高齢者の介護が必要になった主な要因として、上から「脳血管疾患(脳卒中など)」18.5%、「認知症」15.8%、「高齢による衰弱」13.4%、「骨折、転倒」11.8%、「関節疾患(リウマチなど)」10.9%の順となっており、認知症は2番目の多さとなっています。

現在、平均寿命が延びるとともに、こうした病気も増加する傾向にあり、ご本人の心身への負担だけにとどまらず、膨れ上がる医療費社会福祉費の問題、不足する介護要員など、各方面への少なからぬ影響が懸念されています。

あなたは「健康寿命」とは何かを知っているか?

あなたは、「健康寿命」という言葉を聞いたことがありますか? 国の定義では、「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」とあります。要は「健康に生活できる期間」のことです。

2016年の簡易生命表によると、日本人の平均寿命は男性80.98歳、女性87.14歳とあり、いずれも最高を更新しています。ちなみにどちらも世界2位の順位であり、世界1位は男女ともに香港でした。つまり、高齢化は日本だけの現象ではなく、世界的な傾向です。

寿命が延びるのは良いことには違いありませんが、今は喜びよりも不安を感じる人のほうが多いのではないでしょうか。

厚生労働省の資料では、2013年の健康寿命が男性71.19歳、女性74.21歳となっており、同年の平均寿命と比べると男性が9.02歳、女性は12.40歳の差がありました。この差が「日常生活に何らかの支障が出る期間」の平均値、ということになります。

現在、日本人の平均寿命は毎年約0.3歳ずつ延びており、現在、40代以下の方々は、確実に平均寿命が90歳を超えることになると見られています。人々の健康意識の上昇に伴い、健康寿命も延びてきてはいるものの、それ以上に寿命の伸びるペースのほうが早いために、その差が縮まっていないのが現状です。

あなたは、この現実に対応できる準備を始めているでしょうか?

日本人は100年を生きることを想定して人生計画すべき

昨年(2016年)、「寿命100年の時代を生きる人生戦略」と銘打って出版された『ライフシフト』という本が話題になりました。著者はリンダ・グラットン他、ロンドン・ビジネススクールの教授らです。本書によれば、2007年に日本で生まれた子供の半分以上は107年以上生きることが予想されており、「現在50歳未満の日本人は、100年ライフを生きることも想定した人生計画をすべきだ」と提唱されています。

当メルマガは金融とビジネスに特化しているところから、この特集では、「リタイヤ」を中心にお話していきたいと思います。

最近、ネットや雑誌などで「老後破産」「下流老人」といった刺激的なタイトルが並んでいるのを見るにつけ、危機感をお持ちの人も多いことでしょう。しかし、これらの記事はたいてい煽るだけか、悲観的な事実を突きつけるだけで終わりです。

そこで、当メルマガでは「現状を受け止めた上で、具体的にどうすればいいのか?」といったことを考える回にしたいと思います。この特集を通じて、あなたにいくらかでも今後の方向性を示すことができれば幸いです。

Next: 「寝たきり貧困老人」にならないためのリタイヤ計画を立てる



1. まずは現状を知る

最近、急に老後についての悲観的なニュースを多く見かけるようになりました。なぜ「老後」が話題に出ると、皆一様に暗い表情になるのでしょうか?

まずは、現状認識から始めることにしましょう。

【崩壊し始めた従来のシステム】

前述の書籍『ライフシフト』によると、これまでの人々の人生は、ほぼ例外なく「教育→仕事→引退」という3つのステージを描いてきたと言います。これこそ「昭和の勝ちパターン」です。

昭和の勝ちパターンとは、主に「高学歴、上場企業勤務、退職金、公的年金」の4つがセットになったものでした。

高学歴」とは、「良い大学に入れば、良い会社に入れる可能性が高かった」ということです。特に上場企業に勤務すれば、それが個人への信用力となって、マイホームローンなども簡単に通りました。

当時、多くのサラリーマンがマイホームを買い、値上がりしたら買い替えるといったことを繰り返して、財産を築きました。

その昔、日本経済が活況を呈していた頃、退職金とは一種の身代金的な役割を果たしていました。どういう意味かというと、会社は人材確保のために、給料の一部を退職金として積み立て運用を行い、当人が定年退職する際に返却していたのです。それは、長く勤めてもらうための撒き餌のようなものでした。

今では考えられないことですが、1960年代の日本の年間成長率は10%を超えていました。その後も年4~5%の成長率を維持していましたが、1990年代のバブル崩壊を機に、長い停滞期に入っています。

人口も、初めて統計を取った1920年(大正9年)の5596万人から、この100年ほどの間に2.3倍になりました。これらが今まで、日本のシステムを支えてきた土台です。それは、人口増による需要増と経済成長の賜物でした。

現在、日本の土地神話はすでに過去のものとなっています。場所によって、不動産は固定資産税と相続税がかかるだけの、資産を生まない負動産へと変わりつつあります。

また、退職金制度も、現在のゼロ金利のご時世では維持することができず、団体を解散するところが続出しています。

さらに、老後の給料ともいうべき公的年金も崩壊しかかっています。年金保険料を支払う人よりももらう人のほうが多ければ、当然、成り立つはずもありません。

目下、日本の経済成長率は低空飛行を続け、人口も昨年(2016年)の国勢調査で初めて減少に転じたことが総務省より発表されています。今、日本社会のあちこちで従来型システムの歪みが噴出しています。

Next: 数百万説から1億説まで。老後資金はいくらあれば足りるのか?



老後資金はいくらあれば足りるのか?

日本の状況は、ここまででご理解いただけたことと思います。こうした社会情勢の変化に対して、今、私たちがどのような備えをすべきなのかについては、さまざまな説が唱えられています。

たとえば「老後資金には1億円が必要」と言う人から、「老後は数百万円あれば足りる」という意見まで、いろいろあります。

それぞれの主張を見てみましょう。「老後資金1億円」説の出どころは、仮に65歳に退職した人が90歳まで生きるとして、毎月の夫婦の生活費をだいたい33~35万円くらいかかると仮定した場合の数字です。

それに対して「老後は数百万円あればいい」というのは、「足りない部分は自分が働き続ければいい」という考え方です。

確かに、少子高齢化社会の到来と相まって、雇用の延長は、すでに現実のものとなりつつあります。2013年より、改正高年齢者雇用安定法が施行され、企業では65歳までの雇用が義務付けられるようになりました。

とはいえ、老後資金を数百万円しか用意していない状態で、万一、介護を受けなければならない状況に陥った場合はどうすればいいのでしょうか?そこを考えずして、「老後の準備は整った」とはとても言えないのではないでしょうか。

そもそも「65歳までの雇用義務」と言っても、定年自体を延ばしている企業はわずかしかありません。それ以外のほとんどは“再雇用”です。つまり60歳以降は「役職を解かれて、給料が半分」というのが大方のパターンです。

たとえ60歳の時点で年収700万円をもらっていた人でも、再雇用となれば350万円になります。現在のサラリーマンの平均年収が400万円~500万円くらいだとすると、再雇用時には200~250万円になる、ということです。

さらに現実的な話をしますと、雇用を延長しても、将来的に必要な老後資金は減りません

普通に考えると、60歳退職を65歳まで延長すれば、長く働くワケですから、その分だけ必要とされる老後資金も減るはずです。なのに、それが減らないのは、寿命が大幅に伸びているからです。

この状況を乗り越えるには、「生活レベルを落とす」くらいのことをしない限り、必然的に「長期間、働かないと老後資金を確保できなくなる」人生が待っています。

Next: 年金は「もらえたらラッキー」を基本にリタイヤ戦略を立てる



年金は「もらえたらラッキー」くらいに思っておく

他に、巷の意見として「サラリーマンは手厚い公的年金に加入しているから、老後破産はしない」という主張もあります。しかし、これも「年金をもらえる」という前提に立っていることに疑問を感じます。

今、国の借金が雪だるま式に増える一方で、年金財源は減り続けています。このままでは、現行の制度が立ちいかなくなることは明らかです。そうなった時に「私はこれだけ支払ったから、生涯これだけもらえるはずだ」と主張したところで、どうしようもありません。

これらの予測が未来のことである以上、どれが正しくてどれが間違っているのか、などと言うことはできません。しかし、当てにしていたものが入らずに露頭に迷うよりは、自分の身体が動くうちに、できる手を打っておいたほうがいいのではないか、と思う次第です。

私は、自分が運営しているマネースクールでは「年金は“もらえたらラッキー”くらいに思っておいてください」とお伝えするようにしています。

2. リタイヤを考える前に知っておきたい前提条件

続いて、リタイヤを語る前に、先にその前提条件を抑えておきましょう。実はリタイヤとは、必ずしも年齢で輪切りにできるものではありません

【「老後」について、定義づけしておこう】

さて、どのように引退・その後の生活を送るのか?ということをお話しする前に、最初に私が考える「老後」の定義からお伝えしておきたいと思います。

本来、「老後」とはどういう状態のことを言うのでしょうか? 私がセミナー受講生にお聞きしたところでは、だいたい「60歳か65歳」、時に「80歳」といった返事も返ってきました。けれど私は、老後とは「年齢に関係なく仕事を辞めた時のこと」だと考えています――

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3. 現状を打破するために

今週の宿題:自分の会社の雇用延長策について確認してみよう

今週のQ&Aコーナー:Jリートの将来性ってどうなの?


※本記事は有料メルマガ『俣野成敏の『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」』実践編』2017年9月28日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月すべて無料のお試し購読をどうぞ。10月に配信される本記事の続編もすぐ読めます。

次回予告

次回は「リタイヤ」特集の続編をお送りします!「リタイヤ後は、のんびり暮らしたい」「外国で余生を送るのもいいよね」と夢を語る人がいます。しかし、それは本当にバラ色の未来なのでしょうか?
・「80歳まで働く時代」がやってくる?!
・誰もが憧れる「アーリーリタイヤ」の真の姿って?
・老後破産を避けるために、何から始めるべきなのか?
・可処分時間を意識しよう!
人が後悔のない人生を送るにはどうすればいいのか? 次週は多くの人が憧れるアーリーリタイヤなどについて、実現の可能性を探ります。次回の特集も、どうぞお楽しみに!

【関連】本当に幸せ?「アーリーリタイヤ」の理想と現実~ハッピーリタイヤ入門(中)=俣野成敏

【関連】「逃げ切った」はずの人生を襲う、老後破産を回避せよ~リタイヤ入門(完)=俣野成敏

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俣野成敏の『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」』実践編』(2017年9月28日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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