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それでも日経2万円が遠い理由と、リスクオン再開に向けた僕なりの仮説=長谷川雅一

日米首脳会談が(表面的には)成功に終わり、多くの市場関係者はホッとしているでしょう。しかし僕は依然として「日経平均2万円は難しく、1ドル=120円到達も難しい」と考えています。ただし、リスクオン再開の可能性もなくはありません。僕の「仮説」を説明しましょう。
(『長谷川雅一のハッピーライフマガジン』2017/2/13号より)

プロフィール:長谷川雅一(はせがわまさかず)
1959年、岐阜県生まれ。株式会社プレコオンライン(金融商品取引業)代表取締役社長。2000年より株式投資の研究を始め、日本で初めて「株の自動売買」という言葉を使った著書を出版。株式投資の世界では、「株の自動売買」ブームの火付け役として知られている。現在は、自動売買ソフトの開発、投資教室、メルマガの執筆など、多忙な日々を送っている。

やはり遠い日経平均2万円。だが僕の「仮説」が正しければ話は別だ

日米首脳会談の「成功」はホンモノ?

注目されていた日米首脳会談が終わりました。結果は、僕が予想していたような「厳しいもの」にはなりませんでした。…とりあえず、表面的には。

それどころか、安倍総理は、もう気持ちが悪いぐらいの厚遇を受けて終始ご機嫌でしたね。安倍さんは、トランプさんにハグされ、手を「にぎにぎ」されて、お泊まりゴルフデート(?)ということで、「日米首脳会談は成功!」「防衛については満額回答!」などと、喜ばしいムードが漂っています。

12日早朝の「北朝鮮のミサイル発射」にちょっと水を差された感はありますが、それでも多くの市場関係者は、ホッとしているでしょう。はたして、この「成功」はホンモノなのでしょうか?

【関連】安倍総理の「成果」は本物か?日米首脳会談で日本が得たもの失ったもの=斎藤満

このあと「円安・株高」となっても続かない

先週の金曜日(10日)に、トランプさんの「減税やります」発言を受けて、日経平均は500円近く急騰しました。さらに、日米首脳会談が無難に終わったことを受けて、週明けの東京株式市場では、株価上昇となるかもしれません。米ドル/円も上昇する(円安になる)かもしれません。

しかし僕は、もしもこのあと「円安・株高」となっても、それは一時的なものに終わる可能性が高いと思っています。

日米首脳会談後の今も、僕は、「日経平均2万円は難しいし、米ドル/円の1ドル=120円到達も難しい」と考えています。その理由は後述します。

ただ、今回の首脳会談の様子を見ながら、僕は、「もしかしたら、相場が今後、リスクオン(円安・株高)に転じるかもしれない」という、「かすかな兆し」を感じました。その「兆し」と、僕の大胆な「仮説」についても述べたいと思います。

絶不調のトランプさんに微笑んだ日本

今回の日米首脳会談に、安倍総理は、「日米成長雇用イニシアチブ」と名付けられた「約50兆円の市場を生み出し70万人の雇用を生み出す」経済協力案(お土産)を持って出かけました。世界一豊かな国であるアメリカに、不況にあえぐ日本が経済協力するというのです。

アメリカは好景気に沸いています。完全雇用をほぼ達成し、企業決算も好調。景気を引き締めるために「利上げ」を実施するとしています。そのアメリカに、日本が50兆円規模の経済協力をするというのです。我々の「年金資金」の投入すら厭わないという、悲壮なまでの覚悟で。

一方、安倍総理を迎えるトランプ新大統領は、このところ絶不調でした。「入国禁止」の大統領令が司法によって停止され、欧州を中心に各国から「入国禁止令」を非難され、足下では閣僚人事も遅々として進まない

さらに先週末、僕は興味深いニュースを耳にしました。それは、トランプさんがフリン大統領補佐官に、「アメリカにとっては、ドル高とドル安と、どっちがいいんだ?」と質問した、という話です。フリンさんは、「為替は私の専門ではないから、エコノミストに聞いて欲しい」と答えたそうです。

つまり、トランプさんは、「ドル高がいいのか、ドル安がいいのか」わからなくなり、確信を持って「ドル高(円安)は悪い」と言えなくなっていたのです。

日米首脳会談の「成功」は「演出」だ

こうした状況を見ながら、先週末の段階で僕は、「もしかしたら、日米首脳会談は『うまく行く』かもしれない」と思いはじめていました。

つまり、なかなか「結果」を出せず、やや自信もぐらついて状況が悪くなったトランプさんが、タイミングよく、お土産を携えてニコニコとやってくる日本(安倍総理)を利用して、手っ取り早く「成果」を出して見せることで、挽回をはかるかもしれないと考えたのです。

実際に、日米首脳会談は、絵に描いたように「うまく」行きました。僕は、今回の日米首脳会談の「成功」は、トランプさんによる意図的な「演出」だったと思っています。

しかし、まさか、あのトランプさんが、ここまで安倍総理を厚遇し、「日本のみなさん、アメリカ軍の駐留にご理解ご協力ありがとう」とまで言うとは、驚きを通り越して、ブキミでした。

Next: 依然として日経平均2万円は難しく、1ドル=120円到達も難しい



日米首脳会談の成果は「ゼロ」

さて、今回の日米首脳会談で、いったいどんな成果があったのでしょう。「強固な日米同盟」については、以前から確認されていたことで、今回、新たに得られた成果ではありません。単に、「あの(批判的だった)トランプさんも認めてくれた」というだけの話です。貿易と為替については、今後、日本は麻生副総理が、アメリカはペンス副大統領とムニューチン財務長官が担当して、ゆっくり話し合うことになりました。

つまり、日本にとって最も頭の痛い2つの問題(貿易と為替)については「先送り」し、「密室交渉」という形で問題の「隠蔽」をはかった、あるいは「問題を目立たなくした」のです。

今回、アメリカは「日米の貿易に不均衡はない。問題ない」と言ったでしょうか? 言っていません

また、アメリカは「日本の金融政策は円安誘導を目的にしたものではなく、理解できる。問題はない」と言ったでしょうか? 言っていません

それどころか、11日深夜の記者会見で、トランプさんは「為替については、ずっと不満を持ってきた」と明言し、その瞬間、米ドル/円が大きく円高に振れる場面があったのです。

つまり、日本国内には、「安倍さん、トランプさんと仲良くなれたみたいで、よかったね」という「楽観ムード」が漂っているけれど、実際には何の成果もなかった。日本が差し出したものは大きかったかもしれないが、日本が得たものは何もなかったのです。今回の首脳会談を「満額回答」とする報道もありましたが、冷静に見れば「ゼロ回答」でしょう。

日米首脳会談で相場の不透明感が増した

特に貿易や為替の問題について交渉が「密室化」されたことで、今後いきなり悪材料が飛び出す可能性が出てきたことは、マーケットにとって大きなマイナスだと思います。今回の目玉だったゴルフ外交も「密室交渉」です。

また、「強固な日米同盟」にはリスクもあり、それがさっそく顕在化したのが、北朝鮮のミサイル発射です。今後は、日本、あるいは日本人がテロの標的になる可能性が格段に高まるでしょう。日米同盟の誇張や、安倍&トランプの親交で、かえって地政学的リスクが増す恐れがあるわけです。

トランプさんが登場して以来、相場が不安定になって、トレードがやりづらくなっていました。さらに僕自身は、今回の日米首脳会談によって、一層、相場の不透明感が増し、よりトレードが難しくなったと感じています。

そして今後も、トランプさんの一挙手一投足が、不規則に相場を揺さぶり続けるでしょう。こうした点を考えると、「依然、日経平均2万円は難しいし、為替の1ドル=120円到達も難しい」と言わざるをえないのです。

Next: 株価上昇・ドル円上昇のかすかな兆し「トランプ外し」が始まった?(仮説)



「トランプ外し」が始まっている?(仮説)

首脳会談での、不自然なまでの米国の歓待ぶりを見ながら、僕は、「もしかしたら、今後、株価上昇ドル円上昇となるかもしれない」という、「かすかな兆し」を感じました。それは「トランプ外し」です。「トランプ外しが始まっているかもしれない」と僕は感じたのです。以下、「トランプ外し」については、僕の大胆な「仮説」としてお読みください。

今回の日米首脳会談で、トランプさんは、自由にしゃべらせてもらえませんでした。11日深夜3時からの記者会見でも、トランプさんは終始、用意されたペーパー(原稿)を読んでいて、自分の言葉で語りませんでした。北朝鮮のミサイル発射に対する、トランプさんのコメントも、わずか17秒とそっけなく、内容も彼らしからぬ大人しいものでした。

彼の、ちょっと息苦しそうな会見の様子を見ながら、僕は、「これって、もしかしたら『トランプ外し』じゃないの?」と思ったわけです。

ペンスが「トランプ外し」を始めた?(仮説)

ペンス副大統領は、日本がどれほどアメリカの経済に貢献しているか、よく知っている人物です。また、日本の米軍基地についても、日本がどれほどのお金を負担しているか、よく知っています。

もしも、良識も常識もある(であろう)ペンスさんが、トランプ大統領の「無知や無謀」をうまく制御しつつ、彼(ペンス副大統領)自身が事実上の大統領の役目を担う形で政権を運営する「トランプ外し」を始めているとしたら、どうでしょう?

仮に、アメリカの政権が「トランプ外し」という「自浄」に成功すれば、たちどころに政治経済は安定し、今後、株価上昇、ドル円上昇が望めます

もちろん、完全にトランプさんを外すことはできないでしょうが、ある程度の「トランプ外し」に成功しただけで、世界の政治経済は格段に安定感を増し、アメリカと各国との関係もスムーズになり、米国経済はさらに発展します。

そうなれば株価も上昇し、ドル円も、いったんは円安傾向になる(ただし120円の上での定着は難しいと考える)というシナリオが描けるのではないか。今回の「なごやかな日米首脳会談」は、もしかしたら「トランプ外し」の始まりだったかもしれない。

以上が僕の「仮説」です。

Next: 今は、確信を持って「買える」状況でも「売れる」状況でもない紙一重



「リスクオン」と「リスクオフ」が紙一重

もちろん、「トランプ外し」は僕の仮説、あるいは想像に過ぎません。ただ、これまでの経緯を見るに、アメリカ政府としても真剣に「トランプ外し」を検討しなければならない状況に陥っているかもしれない、と僕は思うわけです。しかし現実的には、「トランプ外し」がそう簡単にはできるとは思えません。これからも、まだまだトランプさんの「暴政」が続くでしょう。

彼は、今日(13日)にも、あの「入国禁止令」に代わる新たな大統領令を出すと宣言しており、その内容しだいでは、またマーケットがリスクオフに傾きかねません。

その一方で、アメリカ経済は堅調で、成長期待も大きい。トランプさんの経済政策も、実行されれば、目先は米経済を活性化する可能性が高いでしょう。現に、週末のNYダウは97ドルほど上昇して、20,269ドルの史上最高値で引けています。

要するに、今は「リスクオン」と「リスクオフ」が紙一重、という状況なのです。そして、その「切り替えスイッチ」を握るのは、今のところ、気ままで身勝手なトランプさんです。どちらへ転ぶか、まったくわかりません。

したがって、今は、確信を持って「買える」状況でも「売れる」状況でもありません。本誌に何度か書きましたが、アメリカの政治が、もう少し落ち着くまでは積極的にトレードせず、様子を見るのが一番賢いのではないかと、僕は考えています。

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長谷川雅一のハッピーライフマガジン』2017/2/13号より一部抜粋
※記事タイトル・太字はMONEY VOICE編集部による

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