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すべての日本人に伝えたい「スラムに消えた情けない男の話」=内閣官房参与 藤井聡

記事提供:『三橋貴明の「新」経世済民新聞』2017年11月14日号より
※本記事のタイトル・本文見出し・太字はMONEY VOICE編集部によるものです

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親分に媚び続けた情けない男の末路。今はまだフィクションだが…

窮地に立つ日本国の現状

今、日本が置かれている状況をきちんと理解していない国民がどうやら大多数のようです。このままでは、日本は核攻撃に曝されてしまうという最悪の事態に陥りかねません。
https://38news.jp/asia/11168

もうしようがありませんので、今日は、少々現状をデフォルメしてつくった架空の「昔話」を1つ、お話したいと思います。ぜひご一読ください。

【親分に媚びて生きている男】

むかしある街に、情けないひ弱な男が1人住んでいた。

この男、小金だけは貯め込んでいるようだが、自分1人ではケンカもできないし、まともに他人と交渉することもできない。できることと言えば「親分」に媚びて、親分に面倒をみてもらうことくらいだった。

その「親分」は大金持ちで腕っ節が強く、街ではいつも一番デカイ顔をしていた。

ひ弱な男はそんな親分の周りをいつも、まるで子犬のようにまとわりついていた。小金を使ってあの手この手で媚びながら、何かあったら親分に泣きついて、やっかい事を処理してもらっていた。

その媚びっぷりはまさに街一番。だから町の中ではいつも、侮蔑の目で見られ、どこにいっても何をやってもいつも、軽く小馬鹿にされながら生きている――彼は正真正銘、小金持ちなことだけが唯一の取り柄の、街一番の情けない小物だった。

【凶暴な隣人】

そんな彼の家の隣には、すこぶる凶暴な質の悪いチンピラが住んでいた。

この凶暴なチンピラ、時折、ひ弱な男の家にやってきてモノを盗んでいったり、気に入らないことがあればすぐに暴力で威嚇してくる、困った奴だった。

そんなある日、このチンピラがなにやら怪しげな「武器」をいくつもいくつも作っていることが分かった。まだすべては完成しないようだが、隣の男を半殺しにできる程度の力はもう身につけているようだった。

だからそのひ弱な男はもう、恐ろしくて凶暴な隣人に何の手出しも出来ない――そんな状況となってしまっているのだった。

【凶暴なチンピラが「親分」に一か八かのケンカを売る】

ところがそのチンピラ、今度は「親分」にケンカを売ろうとしていることが分かってきた。

このチンピラ、この街で生きて行こうとすれば、この親分の言いなりになっていてはそのうち殺される、だったら、一か八かこの親分にケンカを売って、もう自分には手出しできない様な「凄い武器」をつくっておこう、と考えたようだ。

つまりこのチンピラ、自分の生き残りをかけて親分に手出しさせない凄い武器を作り上げてしまおう、という博打に打って出たわけだ。

とはいえ今の所、その凄い武器はまだ完成していないようだ。が、その凄い武器の完成も時間の問題のようだった。

Next: 親分、チンピラを潰すことを決める



【親分、チンピラを潰すことを決める】

そんな話を耳にした「親分」はもちろん、黙っちゃいない。

「今のところあのチンピラの武器は、あの情けない俺の子分を半殺しにできるようだが、俺の身はまだ安全なようだ。だったら、まだ俺のところまであいつの武器が届かないうちに、潰しておかないと、俺の身がヤバくなる。今潰しておかなきゃいかん」

そう考えた親分は、今のうちにそのチンピラをぶっ潰しておこうと決めた。

とは言え、1つだけやっかいな事がある。

「俺があのチンピラに攻撃を仕掛けたら、おそらくあいつはすぐに反撃に打って出て、俺の子分のあの情けない男をすぐに半殺しにしてしまうだろう。」

この親分にしてみれば、あの子分はまずまず使い勝手もよく、小金も持っているから重宝していたのだから、半殺しにされて、もう使い物にならなくなるのは少々もったいない――とはいえ背に腹は代えられない――自分が将来やられちまうことを考えればあの少々便利な子分ごとき、半殺しの目に遭おうが消えて無くなろうがまぁ、たいしたことじゃない――そう考えた親分は、かの「情けない男」を呼びつけてこう言った。

親分「おい、あのヤバイおまえの隣人、あいつは俺を攻撃する武器を作ってるようだ。それが完成すりゃ、俺は何をされる分かんねぇ。だから俺はもう、あいつをぶっ潰すことにした。お前も俺に協力しろ。分かったな」

子分「はい、親分がそうおっしゃるなら、分かりました。喜んで協力します!」

親分「もちろん、あいつは反撃してくるだろうけど、大丈夫だ。俺がおまえを守ってやるから。心配するな。安心しろ」

子分「なんとお優しいお言葉! 分かりました、ありがとうございます!」

【媚びてばかりで、完全な馬鹿になっていた子分】

もちろん、「大丈夫だ、安心しろ」という「親分」の言葉はウソだ。そんな保証なんてどこにもない。もうその凶暴なチンピラは、情けない子分を半殺しにできる力を身につけてるんだから、攻撃を仕掛けりゃ、その子分は半殺しにされるに決まっている

だけど子分は、「はい、分かりました」しか言いようがない。ここで親分に盾をついたら、何をされるか分からないからだ。今までずっとイエスマンとして親分の言いなりになってきたその情けない男にはもう、他に残された道などどこにもないのだ。

というよりも、自分で考える力も気力もなくなっているから、親分が大丈夫だって言ってるんだから、大丈夫なんだろう――と馬鹿丸出しで思っているようだった。

その馬鹿っぷりに、町中の人々が唖然とした。半殺しにされるのに、何が「なんとお優しいお言葉!」だ。こいつは馬鹿か――? 皆がそう思った。

ただし、一番びっくりしているのが、その親分自身だった。

「こいつ、ホント馬鹿だなぁ。半殺しにされるのは俺じゃ無くてお前なんだぞ? なのに、やけに素直に俺の協力するって、しかも『なんとお優しいお言葉! ありがとうございます!』とまで言ってやがる。

とはいえまぁ、こんな都合のいいこたぁねぇ。たっぷりと自ら進んで必死に協力してもらって、半殺しになってもらって、全部こいつの自己責任ってことにしておきゃぁ、それでいいだろう。ほんと馬鹿だなぁこいつ」

Next: 情けない男、案の定「半殺し」にされてスラムに消える



【情けない男、案の定「半殺し」にされてスラムに消える】

――かくして、「親分」は、子分の全面協力を得ながら飛び道具で攻撃をしかけた。

そして案の定、その凶暴なチンピラは反撃をしかける。無論その反撃は「親分」に対してではない。我らが「情けない男」に対してだった。結果、情けない男は誠に情けないことに半殺しの目にあわされ、もう再起できないほどの深手を負うこととなった。

しかしこのケンカそのものは、圧倒的に力の強い親分が勝ち、最後にはチンピラは完全に潰されてしまった。その後、そのチンピラの家は、この親分と、隣町の親分とでうまく相談しながら、運営していくことになったようだ。

その後、その哀れな情けない男がどうなったかと言えば――当然、誰からも同情されはしなかった。馬鹿丸出しで親分にひっついていって、誰もが予想したとおりに半殺しにされたんだから、誰の目から見てもはっきりとした、いわゆる自己責任ってやつだ。

もちろん、もうどうしようもないから、誠に情けないことに「助けてださい」と親分や周りの人々に泣きついて回ったようで、ちょっとした小銭を何人かから恵んでもらったりはしたようだが、それでは焼け石に水。

結局この情けない男、ちゃんとした病院に行くこともできず、半身不随になって自分でカネが稼げない体になってしまったようだった。だからこの男が生きて行くためにどうしても必要だった「カネ」まですべて失うことになった。

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どうしようも情けない男だが、ちょっと前なら「小金」を持っていたから少々ちやほやされることもあった。親分にかわいがられていたのも、そんな「小金」があったからだ。だけど、その頼みの綱の「金」すらなければ、一体誰が彼に見向きするというのか。そんな媚びる以外に何の才能も無いような男に――。

だから今や、その男がどこで何をしているのかを知る人など、もう誰もいない。最近聞いた風の便りでは、隣町のスラム街で、その地区のボスになけなしの金を使って媚びながら生き続けているということだが――それが本当かどうかも、もう誰にも分からない。

image by:pantid123 / Shutterstock.com

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三橋貴明の「新」経世済民新聞』2017年11月14日号より

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