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暴騰するビットコイン相場の未来はなぜ「誰にも予測不可能」なのか?=吉田繁治

ビットコインが狂想曲とも言える値上がりを示しています。これは市場のどのような心理を反映しているのでしょうか?相場の先行きはどうなるのでしょうか?(『ビジネス知識源プレミアム』吉田繁治)

※本記事は有料メルマガ『ビジネス知識源プレミアム』2017年11月30日号の一部抜粋です。興味を持たれた方は、ぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

楽観の中で成熟しつつあるビットコイン相場の未来は予測不可能?

「狂想曲」とも言える値上がり

ゼロ金利による株価バブルの中で、今年はビットコインが狂想曲とも言える値上がりを示していますね。長期的な価格をトピックとともに見てみましょう。

<1ビットコイン(BTC)の価格とトピック>

2010年05月:0.2円(初めて買い物に使われた ※ピザ2枚=1万BTC)
2012年12月:1,167円(買い物できる店舗ができた)
2013年11月:12.0万円(タックスヘイブンのキプロスで金融危機→ロシアマネー)
2015年04月:2.8万円(南欧債の危機の収まりとともに1/4に下落)
2017年04月:12.2万円(中国からの買いが90%)
2017年11月28日:117.1万円(アメリカを含む世界的ブームで7カ月で9.6倍に高騰)
※参考:https://jpbitcoin.com/about/history_price

ビットコインの流通量は、プログラムで上限2100万枚に制限されています。2017年4月現在、約6割の1200万枚が流通していますので、1BTCを117万円としたときの時価総額は14兆円に上がっています。

ビットコインは「発掘(マイニング)」によって、1BTCについているブロックチェーンの暗号を解読すると、1回につき12.5BTC(現在の時価総額では1462万円相当)が与えられる仕組みです。2040年(2100万枚に達したとき)に発掘が終わるように設計されていますので、ビットコインの最大量は2040年の2100万枚となります。

発掘には、並列につないだ大量のコンピューターと電力が必要なので、純益はたいしたことがないと言われます。店舗のコストコの棚に、数百台のCPUが載って、24時間運転されているのをイメージしてください。

金(ゴールド)と比較すると?

金の年間生産量は、鉱山から3126トン、宝飾品や電子機器を溶かしたリサイクルが1308トンで、合計4434トンです(2016年:WGC)。毎年4300トンから4500トンの金生産があります。

本稿執筆時点の金価格は1グラムで5052円(小売り/消費税込)です。金の買いが生産量(=売り)より増えると価格は上がり、減ると価格は下がります。株も含めて、市場がつける価格はぜんぶ同じ仕組みです。

平均4400トン/年の生産として、新規が22兆円分です。地上の金の残高は18万トン(オリンピックプール3つ分 ※確認者はいない)と推計されており、現在の時価総額で900兆円です。

ビットコインの時価総額は、金の900兆円に対して、14兆円まで来ました。金とビットコインは、姿は真反対ですが、偽造ができない金融商品としての性格は似ています

金もビットコインも、紙幣(法定通貨:フィアットマネー)と違い、中央銀行が増やすことはできません。価格は、市場の売買量で決まるわけです。

Next: ビットコイン高騰は、市場のどんな心理を反映しているのか?



ビットコイン高騰、市場のどんな心理を反映?

ビットコイン高騰(急騰)の背景には、「リーマン危機のあと、世界の中央銀行がゼロ金利を敷き、マネーを増発している。これは、いずれマネーの価値の下落をもたらすのではないか」という心理があると思っています。

このため、金よりも新規生産量(=現物の売り)がはるかに少ない、ビットコインが買われた。これが、2017年の高騰の背景にあるでしょう。

今後、ビットコインが高騰を続けるか、あるいは暴落するか。「1BTCが100万円を超えてもまだ安い(今後も買いが増える)と考え、買う人が増えるかどうか」にかかっています。関心は呼んでいますが、関心だけではダメで、実際に買う行動が増えるかどうかです。

一般には、「新聞とテレビが高騰を騒ぎはじめたときが相場の終わり」という格言があります。格言とは、過去多くの場合、そうだったというところから作られたものです。

相場の先行きは常に「分からない」

複雑系の経済である相場の先行きは、常に、分からない。私は、短期の小さな利益を積み上げるシステムトレードを作る前、過去18年5000日の株価(日経平均)を調べました。すると上げの日と下げの日は、見事に2500日:2500日でした。実に感動したのです。

明日上がるか、下がるかは50:50のランダムウォーク(確率変動)」というのが、願望の心理ではなく、事実(FACT)の示すところでした。人々は、あるときは金融商品を「願望」混じり、別の時は「失望」で見ています。これが論理とは違う心理です。

風景を見るとき、人間にとっては、そのときの幸福や悲しみの心理が混じった「心象」になります。写真は、映像情報をこころを込めずに写します。人の目は、こころのありようを、見た物に反映させます。好きな人の顔を見るときも、思い入れが入るでしょう。これを写し取ったのが、芸術でしょう。他人の子供と自分の子供では、ほとんど似た同じ顔でも、将来を予想したときは、違って見えるものです。

同じ株価の罫線(ローソク足のグラフ)が、願望で見ると上がることを、失望で見れば下がることを示すように見えるのです。すでに終わった、米国の個別株の株価の罫線を、1/3くらい隠して予想してください。当たりますか?

相場では、ルーレットの奇数や偶数の連続のように、連騰や下落が続く時期も混じります。しかし、1年で見れば、上げも下げも50:50

システムトレードでは、短期の上げ下げの、確率変動(ボラティリティ)の幅を利益にするプログラムを作ったのです。17年9月以降、実際の株価でテストしていますが、利益の成績がいいことは、ほぼ実証されつつあります。

Next: いずれは歴史的な下げが来るビットコイン。その時期は?



今のビットコインは「楽観」の時期

相場は悲観の中に生まれ、懐疑の中で育ち、楽観の中で成熟し、幸福感の中で消えていく」という、アメリカの投資家ジョン・テンブルトンが残した言葉は、真実を正しく言い当てていると思っています。

ビットコインは今、懐疑の時期を過ぎ、楽観の時期でしょうか(疑問形でしか言えません)。しばらくすれば、投資家は幸福感につつまれ、そして下落となるでしょう。歴史的な上げの後には、しばらくして今度は歴史的な下げが来るからです。

悲観、懐疑、幸福感の時期は、ほぼ分かります。難しいのは、「しばらくすれば…」ということの具体的な時期です。これを予想することはできませんでした。私もシステムトレードで試みたのですが、中期(3カ月)の傾向を予測する論理的な方法は、まだ見つかっていません。私のロジックの能力不足か、あるいはもともと不可能なことなのか、分かりません。ただ、3カ月予想は、もともと不可能だという感じがしています。

誰が「上がる」と言おうが、当たる確率は50%

上がると言い続ければ10回に5回は当たります。下がると言い続けても、同じです。上がると言い、次は下がると言っても、当たる確率は50%です。ルーレットの白黒と同じです。過去は、それ以外ではない必然ですが、未来は、人間の目には確率です。

証券アナリストやエコノミストによる金融商品の相場予想は、当たる確率50%、外れる確率50%でしょう。ズルい人は、当たったときだけのことを言い、本の中でも「自分は○○のときに暴落と高騰を当てた」と言って自慢しています。

ほとんどの予想屋さんに共通、貧しいことが多い競馬の予想屋さんと変わりません。上げる予想のときは、上げる材料を強く言い、下げる予測のときは下げる材料を挙げます。長年、書籍・経済誌・経済紙を読み続けた結論がこれです。

【関連】ビットコイン版「バブルの物語」いつか死ぬまで踊り続ける覚悟はあるか?=鈴木傾城

経済学は、科学でも、過去の現象の論理的な解釈です。過去の現象が未来に当てはまるのが、科学的法則でしょう。引力の観察も過去のものですが、これは数式化できる法則であり、1000年後も同じです。

しかし、人間が高い安いを感情混じりで認識している経済的未来は違います。8年前、8000円台のときの「日経平均1万円」は高かった

ところが今、「日経平均1万円」ならそれは暴落価格です。過去の延長上には、経済的な未来はありません。大科学者のニュートンや、大経済学者のケインズも、株への投資では失敗しています――

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ビジネス知識源プレミアム:1ヶ月ビジネス書5冊を超える情報価値をe-Mailで』(2017年11月30日号)より一部抜粋、再構成
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