マネーボイス メニュー

600円の「からあげ定食」は、貧困ランチに苦しむ日本を救うか?=児島康孝

からあげ定食が580円(税込626円)の「からあげ日本一」というお店を知っていますか?いま店舗を拡大中のこのチェーン店から、日本の現状が見えてきます。(『ニューヨーク1本勝負、きょうのニュースはコレ!』児島康孝)

1,500円か300円か。厳しい二者択一を迫られる日本のランチ格差

からあげ定食580円(税込626円)

明治神宮に近い参宮橋に、持ち帰り弁当屋風のまだ新しいお店があります。看板には「からあげ日本一」。弁当を売るだけかと思いきや、この店の1階奥と2階には「テーブル席」があります。つまり、「からあげ定食の店」なのです。

メニューは様々ですが、定番の「からあげ定食」580円(税込626円)は、特大の「からあげ4個」、ご飯、味噌汁、キャベツの千切りが付きます。しっかり食べることができますね。

この「からあげ日本一」は、全国で徐々に店舗を増やしています。参宮橋のお店は、リピーターと思しきビジネスパーソンが多く立ち寄るようになってきました。

なぜ日本の「1,000円ランチ」は淘汰されたのか?

日本では、構造改革やリストラでデフレが長く続いたため、中流層が崩壊しました。そしてこれに合わせるように、ランチも「1,500円ぐらいの店」と「300円ぐらいの店」という両極端になってきています。

つまり、財布の中身をあまり心配しないでよい富裕層・高所得層は、従来どおりに1,500円ぐらいのランチを食べています。しかし、1,000円前後のランチを食べていた中流層がリストラや構造改革で崩壊。

このため、1,000円ぐらいで栄養バランスの良い食事を提供していたお店が、客の減少にさらされ、次々と閉店していったのです。

かつて、1990年のバブル崩壊の頃まで、大都市でランチといえば1,000円ぐらいが主流でした。その1,000円ぐらいの店が、次々と淘汰され、少なくなってしまったのです。

これは日本人の栄養面でも、とてもネガティブな現象です。低所得化の進行とともに、「まともにランチが食べられない」という国民が増えてきたのです。

1990年頃にはカジュアルだったファミリーレストラン業態でも、いまは低価格帯の「ガスト」が目立ちます。とくに夜間は「高価格帯」となったファミリーレストランが敬遠されており、気軽に立ち寄れる店ではなくなってきています。

一方、300円ぐらいから食べることができる低価格帯の店は、低所得層の人が増えたため、おおむね客を確保しています。

とくに日高屋は定食系などが充実していることから、「高価格帯」のファミリーレストランからの受け皿となって業績を伸ばしています。

Next: このままでは日本から「まともな昼メシ」が消滅してしまう



「中価格帯」の存続はますます厳しく

以前、南青山のMUJIカフェ(※無印良品のカフェ・デリ形態「Cafe&Meal MUJI南青山」)は、ヘルシーなデリ(肉・野菜料理など)を選んで食べることができ、1,000円ぐらいで十分というリーズナブルな店でした。表参道周辺(南青山)にあって、ヘルシーでリーズナブル。さらに栄養価満点ということで人気でしたが、2016年夏に閉店しています。

閉店の理由はよくわかりませんが、1,000円ぐらいの店が減ったことは確かです。

MUJIカフェ(Cafe MUJI)は、二子玉川の玉川高島屋S・C(マロニエコート)にもありますが、全般的に価格帯がリーズナブルです。ランチは1,000円前後で可能です。他のカフェやレストランよりもやや安く、小さなお子様連れのママさんグループで賑わっています。

二子玉川のMUJIカフェはこのまま変わりなく続きそうですが、こうした「中価格帯」の店が、日本では存続が厳しくなってきているわけです。

「からあげ日本一」は日本のランチを救うか

さて、最初の話に戻りますが、日本での「中価格帯」外食の消失が進む中、「からあげ日本一」が600円前後のメニューで進出していることは、意義が大きいです。

【関連】人件費高騰というウソ。幸楽苑の「大量閉店」が象徴する日本の病=児島康孝

かつての日本では、500円から1,000円の間の価格でしっかり食事ができていました。いまは、これが難しくなりつつあります。

だいたい「1,500円」か「300円」かという、両極端な選択になっているのです。

こうした中で、からあげ定食580円(税込626円)を提供する「からあげ日本一」は、財布に優しく、しっかり食べることができる店です。「中価格帯」の外食が消失する日本で、「からあげ日本一」は日本の食を救う存在となるかもしれません。

【関連】ビットコインの凄さと危うさ。仮想通貨に人々が心酔しはじめた理由=中島聡

【関連】2018年はお金が貯まる!敏腕FPが教える「すごい貯金」と人生を変える習慣=俣野成敏

【関連】日本のデフレに「謎」はない。この経済政策の矛盾を自分の頭で考えよう=矢口新

ニューヨーク1本勝負、きょうのニュースはコレ!』(2017年12月7日号)より抜粋、再構成
※太字はMONEY VOICE編集部による

無料メルマガ好評配信中

ニューヨーク1本勝負、きょうのニュースはコレ!

[無料 日刊]
FRB緊急利下げへ」「日銀マイナス金利」をヒットさせた腕を生かし、海外投機筋、米・欧・日の中央銀行の最新情報をメルマガで!まぐまぐ殿堂入り、MONEY VOICE掲載メルマガ。為替FX・株式・資産運用のヒントに、一味違うメルマガ情報。※号外広告あり

シェアランキング

編集部のオススメ記事

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MONEY VOICEの最新情報をお届けします。