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森友学園と国の「危険な共謀」仕組まれたゴミ混入率が意味するものとは?=近藤駿介

先日公開の記事「安倍政権の命取りに?森友学園小学校の地下に眠る『最大のタブー』」は、元ファンドマネージャーであると同時に、元ゼネコン技術者としても豊富な現場経験を持つ著者・近藤駿介氏のユニークな分析が大きな反響を呼びました。

第2弾となる今回は、その近藤駿介氏が、さらに詳しく森友学園問題の「急所」に切り込みます。近藤氏は施工現場の観点から、地下埋設物撤去費用の算出プロセス等には多くの矛盾があり、それらを勘案すると、一連の疑惑が森友学園側ではなく国主導だった可能性も否定できないと指摘します。

プロフィール:近藤駿介(こんどうしゅんすけ)
ファンドマネージャー、ストラテジストとして金融市場で20年以上の実戦経験。評論活動の傍ら国会議員政策顧問などを歴任。教科書的な評論・解説ではなく、市場参加者の肌感覚を伝える無料メルマガに加え、有料メルマガ『元ファンドマネージャー近藤駿介の現場感覚』好評配信中。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。月初の購読は得にお得です。

野党は国有地に埋まる「国と森友学園の共謀」を掘り起こせるか?

現場施工経験のない官僚の説明は矛盾だらけ

森友学園に対する国有地払下げ問題は、国会議員の関わりが明らかになり、ますます大きな問題になってきている。

防戦一方の財務省国交省は、政治家からの「不当な介入」はなかったと繰り返しているが、その説明は説得力を欠いたもののオンパレードになっている。

国会議員が関与した疑いが持たれているのは、大きく分けて、開校に関わる手続きに関する部分と、国有地払下げ価格算定に関わる部分の2つであるが、特に国有地払下げ価格の算定に関する部分では政府側の苦しい答弁が続いている。

財務省と国土交通省の答弁が説得力に欠ける苦しい内容になっているのは、何かしら隠さなければならないものがあるという印象を与えるもの。何かしら隠さなければいけないことを抱えているなか、現場施工の実務経験がない高級官僚が黒いものを白とする詭弁を弄するために、矛盾だらけの非現実的な答弁になってしまっているようだ。

しかし、追及する野党議員側も同様に現場施工の実務経験を持っていないために、言葉だけの追及に終始し、国会論戦自体が隔靴掻痒(かっかそうよう=物事の核心に触れず、はがゆいさま)になってしまっている。

地下埋設物撤去費用「8億1900万円」の不自然

森友学園の国有地払下げ問題において、政治家からの「不当な介入」があった可能性が高いと疑念を抱かれているのは、国交省が地下埋設物の撤去費用を8億円強と見積もったことである。

この国有地の地下埋設物撤去と土壌汚染対策の経緯を見てみると、確かに辻褄があわないことが多い。その経緯について、実際の工事がどのように行われるかという視点から検証してみよう。

森友学園が取得した豊中市の国有地は、国交省のそれまでの調査で地下3メートルまでの間にゴミが埋まっていることと、一部がヒ素と鉛で汚染されていることが明らかになっていた。

こうした調査結果に基づいて豊中市は2013年4月26日に、この国有地を土壌汚染対策法の「形質変更時要届出区域」に指定していた。

森友学園がこの国有地の取得要望をだしたのは、豊中市によって「形質変更時要届出区域」に設定されてから半年後の2013年9月のことである。

その後、政治的介があったことを疑われている交渉を経て、国と森友学園が国有地の定期借地契約を締結したのは2015年6月8日である。そして、この契約締結後すぐに、国有地にある大量の地下埋設物の撤去及び土壌改良工事が行われる。

「平成27年7月から12月にかけて、学校法人森友学園の依頼により小学校予定地(豊中市野田町)の建築に支障のある範囲の深さ3mまでの地中障害物撤去工事と設計事務所より指定された範囲のみの土壌改良工事を施工した」
出典:森友学園に関する報道について – 株式会社中道組

この土壌改良工事が行われたこともあり、豊中市は、中道組が地中障害物撤去工事と土壌改良工事を施工している間の2015年10月26日に、この国有地を「形質変更時要届出区域」から解除している。

ここでも役所は、地中障害物撤去工事と土壌改良工事が完全に終わる前に「形質変更時要届出区域」の解除に踏み切るという、非常に機敏な動きを見せている。

見積額の算出プロセスに異議あり!

地中障害物撤去工事と土壌改良工事が終わり、いよいよ2015年12月から学校建設工事に入るわけだが、着工して間もない2016年3月に、杭打ち工事で新たな地下埋設物が発見されることになる。

この新たな埋設物が出てきたことを契機に、森友学園は「国に撤去を任せては開校に間に合わない」という理由で、国有地買い取りに方針転換することになる。

そして、翌4月には国交省航空局埋設物撤去費用8億1900万円という見積もりを出し、6月にはこの見積額を鑑定評価額9億5600万円から控除した1億3400万円で、国有地は森友学園に売却されることになる。

この見積もりの前提は、杭打ちが行われる部分は深さ9.9メートルまで、それ以外の部分は深さ3.8メートルまで地下埋蔵物を撤去し、ゴミ混入率は47.1%というものである。こうした前提に基づいてゴミの量を1万9500トンと推計し、見積額を8億1900万円とした。

この見積額の算出プロセスはいかにも官僚らしい筋の通ったものだが、現実の施工という観点からは多くの疑問を感じさせるものでもある。

Next: 元ゼネコン技術者の著者が、疑惑の見積もりと杭打ち工事の嘘を暴く



籠池理事長発言の致命的な矛盾

施工現場の観点から、見積額の算出プロセスのいったい何が疑問か?

まず、「杭打ちが行われる部分は深さ9.9メートルまで地下埋設物を撤去する」というところだ。これに対して籠池泰典(かごいけやすのり)森友学園理事長は、「杭打ちを行う部分のゴミは撤去したが、それ以外は撤去していない」と発言しているが、この発言には大きな疑問を覚える。

この国有地は以前沼や水田だったところで、地質的には含水比の高い粘土層で軟弱地盤である可能性が高い。こうした土地を深さ9.9メートルまで掘削し、ゴミを撤去するためには、鋼矢板(こうやいた)などを打ち込んで土留めをする必要がある。

筆者はトンネル基地を作るために軟弱地盤を15メートルほど掘削したことがあるが、鋼矢板を打ち込みクラムシェルという掘削機で掘削するという大掛かりな工事だった。こうした軟弱な粘土地盤を土留めせずに10メートル近く掘ることは不可能なうえに、普通のショベルカーや人力では掘削できないからだ。

つまり、「杭打ち工事に障害を及ぼす地下埋設物や生活ゴミを取り除く作業」を実施するにあたって、別の杭打ち工事が必要になる可能性が高いのだ。

しかし、そもそも鋼矢板が打ち込める状況であれば、建物の杭を打つことも難しいことではない。2017年4月の開校ありきで物事を進めてきた森友学園が、資金も工期もかかる埋設物の撤去工事を行った、というのは考え難いことに思える。

もし本当なら「考古学上の大発見」

さらに、「9.9メートルの深さから杭打ち工事に支障をきたす生活ゴミ等が出てきた」という話自体も信じ難いものだ。この国有地はもともと沼や水田であったところであり、その後1970年前後に宅地化されていった土地である。

沼があったということは、もともとこの土地が周囲より低いところにあったということである。また、一般的に水田や畑は道路面よりも1~2メートルほど低いところにあり、住宅は道路面より若干高いところに作られるものである。

つまり、もともと沼や水田であったところを宅地にする際には、3メートルほど土砂で埋め立てる必要があるということ。筆者もかつて、工事基地として借りていた道路より2メートルほど低いところにあった畑を、工事終了時に道路より1メートルほど高い畑にして、いつでも宅地として売り出せる状況に造成して返還した経験がある。

森友学園が購入した国有地の深さ3メートルまでのところに地下埋設物やゴミが存在し、3メートルまでの土壌改良工事でヒ素と鉛が取り除けた、という事実から想像されることは、沼や水田であったところを宅地に造成する際に、土砂と一緒にゴミや有害物質が埋められたということである。

また、もし杭打ち時に9.9メートルの深さから大量の生活ゴミが見つかったというのが本当であれば、沼が出来る以前、何千年か何万年前に生活ゴミが埋められたということになる。もしそうだとしたら、何万年前の古代人が靴下や長靴を使っていたことになり、考古学上の大発見になるはずである。

そもそも、杭打ち工事を行う前には、ボーリング調査を実施して地質を確認するものである。その過程で、47.1%もゴミが含まれていたら気が付かない方がおかしい。日本の技術者の目はそこまで節穴ではない。

Next: 二重計上疑惑に対する財務省の答弁は、現実的には「あり得ない」



二重計上疑惑に対する財務省の答弁は、現実的には「あり得ない」

さらに、国会では、杭打ちを行わない部分の深さ3.8メートルまでの埋設物の撤去費用が二重計上になっているのではないか、という追及もされている。前述したように、2015年7月から12月にかけて中道組は深さ3メートルまでの地中障害物撤去工事と土壌改良工事を行い、この費用1億3176万円をすでに国が森友学園に支払っていたからだ。

こうした追及に対して、財務省は、中道組の行った工事では深さ3メートルまでのアスファルトやコンクリートガラ、排水管などの撤去は行ったが、建材やプラスチックなどの廃材は撤去しておらず、深さ3.8メートルまで廃材を含む埋設物の撤去を行う費用は二重計上に当たらない、と答弁している。

しかし、これは現実的にはあり得ないことだ。深さ3メートルまでの土壌改良工事でヒ素や鉛が検出されなくなったということは土を入れ替えた可能性が高いが、土を入れ替える際に、アスファルトやコンクリートガラなどは搬出して、建材やプラスチックなどの廃材を撤去しないというのは考えられない

特に、プラスチックなどは土壌汚染の原因になる物質を含んでいる可能性もあり、土壌改良工事で見つかったのに残すことは考えにくいし、その他のゴミとの分別作業をしてまで残すことはあり得ない話

中道組が行った深さ3メートルまでの埋設物の撤去と土壌改良工事の総額は1億3176万円であるが、国交省航空局は埋設物対策分が約8632万円土壌汚染対策分が約4543万円だったことを明らかにしている。こうした費用と比較すると、あと80㎝だけ埋設物の撤去をするために3億6000万円の費用がかかるというのは信じ難いことなのだ。

「ゴミ混入率47.1%」は国交省の過剰な見積もり?

さらに、中道組が深さ3メートルまでの埋設物の撤去と土壌改良工事を行っているということは、実際にその深度まで掘削をしたということである。もし、ゴミの混入率が国交省の見積もり通り47.1%だとしたら、宅地造成時の盛土の下はゴミの山だったはずである。ゴミの混入率が47.1%というのは、人の目にはゴミの山に映るはずだからである。

埋設物の撤去と土壌改良工事をしている業者が、ゴミの山を確認しながら3メートルまでで作業を止めるというのは考えにくいことだ。また、深さ3メートルまで埋設物の撤去と土壌改良工事を行ってもゴミの山がなかったとしたら、国土交通省のゴミ混入率47.1%という見積もりが過剰なものだったことになる。

Next: 密かな共謀?国交省はなぜ森友学園の言い分を無条件に受け入れたのか



国交省はなぜ森友学園の言い分を無条件に受け入れたのか?

問題は、実務的な「知見」を持っている技術部門の人間が多数いる国交省が、森友学園の言い分を現地確認もせずに受け入れたうえに、何故これまで誰からも何の指摘も出てきていないのか?という点だ。

こうしたことから考えられることは、ゴミ混入率47.1%というのは、地下埋設物撤去費用を8億円強にするために「逆算された数値」であった可能性があるということだ。こうしたところが、政治家からの「不当な介入」があった形跡だといえる。

「この土地については地下埋設物を考慮して評価された時価で既に売却済みですから、したがって実際に撤去されたかを契約上確認を行う必要がない」

麻生財務相は国会で上記のように、今回森友学園に払い下げられた国有地の問題に関して、「評価された時価」という新たな概念を持ち出して答弁している。

だが、当然のことながら「評価額」と「時価」は異なるもの。金融・経済の分野に「時価評価」という言葉は存在するが、「評価された時価」というものは存在しない。野党議員に、こうした点を追及する知識がなかったのは残念なところだ。

森友学園と国側の密かな共謀?麻生発言のポイント

この麻生財務相の発言のポイントは、「契約上確認を行う必要がない」という部分である。もし、森友学園が定期借地契約のままで学校を建設していたとしたら、土地の所有者は国のままであるから、国には「地下埋設物が実際に撤去されたか確認する義務」が残ることになる。

つまり、森友学園に国有地を売却したことによって、国も森友学園も「地下埋設物が実際に撤去されたか確認する義務」から解放された格好になっている。

報道では、森友学園側が土地購入を要望したということになっているが、こうしたことを考えると、何かしらの理由によって森友学園の小学校設立の認可をする必要に迫られた国側が、国有地の払い下げを条件とした可能性も否定できなくなってくる

「瑞穂の国記念小学院」の敷地には、「オルタナティブ・ファクト(もう一つの真実)」が埋められていることは確かなようである。果たして、今後の国会論戦を通して、この「オルタナティブ・ファクト」が明らかにされることはあるのだろうか。

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「森友学園がゴミの撤去工事を行ったか否かに関わらず、契約上この土地の買い戻し価格1億3400万円で変わらない。しかし、国有地に戻されることになれば、国は本当に森友学園がゴミ撤去工事を――」

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「FRBの現状と経済情勢を鑑み、避けなければいけないリスクの優先順位を考えることができている人にとっては、FRBが3月利上げに動くのは自然のこと。3月に利上げをすれば、FFレートの誘導目標は――」

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本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2017年3月5日)
※太字はMONEY VOICE編集部による

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