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こんな人は遺言書を残すべき。相続トラブルを招く「12のケース」まとめ=小櫃麻衣

特定の人に財産をあげたくない、息子の嫁にあげたいなど、遺言書を準備しておいた方が良い「12のケース」をお伝えします。トラブル回避のためにもぜひご準備を。(『FPが教える!相続知識配信メルマガ☆彡.。』小櫃麻衣)

相続が「争族」になる前に。当てはまるなら余裕をもって考えたい

遺言書を残すべきケース

今回は、遺言書を準備しておいた方が良い「12のケース」をお伝えします。さらっとおさらいする程度なので、詳しい解説につきましては当メルマガのバックナンバーをご覧ください。

ケース1:相続財産のうち、自宅不動産の占める割合が大きい

遺言書があれば被相続人が財産の分け方をあらかじめ指定することができますが、遺言書がなければ、原則、法定相続分に応じて財産を相続することになります。

よって、自宅不動産の占める割合が多ければ、自宅を相続する相続人とそうでない相続人の相続分に大きな開きが出てしまうため、自宅を売ってお金にして平等に相続するといった相続方法にせざるを得なくなってしまいます。

従って、自宅不動産の占める割合が大きい、かつ自宅に住み続ける可能性のある相続人がいる場合には、必ず遺言書を残しておくようにしましょう。

ケース2:個人事業主

個人事業主の方の相続が発生すると、事業で使っている財産も個人の財産とみなされ、遺産分割対象となってしまいます。

全相続財産の中に占める事業用の財産の割合が多く、事業を運営するにあたって必要不可欠な財産をも、相続人へ分割しなければ平等に相続できないといった状態になってしまえば、事業を継続することが難しくなってしまう可能性も大いにあるのです。

こうならないためにも、事業を継承する方には、事業用の財産を全て相続、もしくは遺贈させるといった内容を組み込んだ遺言書を準備し、事業継承を円滑に終えることができるようにしましょう。

ケース3:法人企業の経営者で、自社株を保有している

個人事業主の方とは違い、会社の財産は個人の財産と切り離されるため、なんの問題もないように思うかもしれません。ですが、自社株を保有していれば、その株式は個人の財産とみなされます。つまり、遺産分割対象となるわけです。

自社株を分散させてしまえば、経営を大きく左右するケースに発展する可能性もありますので、自社株を誰に相続、もしくは遺贈するのかを考え、しっかり遺言書を準備しておきましょう。

Next: 遺言書を残さないと相続争いに発展するケースも!



ケース4:兄弟姉妹が相続人となる可能性が高い

通常、相続権を有する方には、どんなことがあっても相続できる最低限度の相続権、遺留分が認められています。しかし、兄弟姉妹には遺留分が認められていません。

つまり、兄弟姉妹に財産を渡したくないのであれば、遺言書に書くだけで済むのです。

しかし、兄弟姉妹に財産を渡してもいいという考えだから遺言書は準備しないでいいというものでもなく、特に被相続人の配偶者と兄弟姉妹が相続人となるケースでは対策が必要になります。

相続財産の中で自宅不動産の占める割合が多いと、兄弟姉妹へ相続させる財産を渡すことができず、泣く泣く、長年住んできた自宅を売ってお金にして、兄弟姉妹へ相続させるといった結果になり得ないのです。こうならないためにも、兄弟姉妹が相続権を有する可能性がある場合には、遺言書を準備しておくことをオススメします。

ケース5:特定の相続人に財産を渡したくない

どんな理由があろうと、相続人となる立場の人間が1人でも欠けたまま遺産分割協議を行えば、その内容は無効となります。つまり、遺言書を準備し、財産を渡したくないといった意思表示を行う必要があるのです。

しかし、兄弟姉妹以外の相続人には遺留分が認められていますので、遺留分に配慮した相続方法を考えるようにしましょう。

遺言書は、あくまでも相続人に対しての意思表示をする手段ですので、遺言書を準備したから、当該相続人に財産を渡さなくて済むわけではありません。

つまり、確実に相続権を発生させたくないのであれば、次に挙げる対策を講じなければなりません。

<対策1:相続廃除>

相続廃除要件に当てはまれば、相続廃除対象者として、相続人としての立場を消滅させることができます。

<対策2:遺留分を放棄してもらう>

遺留分の放棄は、当該相続人がご自身の意思で手続きを行う必要があります。ちなみに遺留分の放棄は、相続開始前でも開始後でも可能です。

<対策3:相続放棄をしてもらう>

これも遺留分の放棄と同様、当該相続人がご自身の意思で手続きを進める必要があります。ただし、相続開始後でなければ手続きを進めることができませんので、注意が必要です。

ケース6:特定の相続人に財産を多めに渡したい

今度は、多めに渡したいケースです。遺言書がなければ、原則、法定相続分に応じた遺産分割方法となりますので、特定の相続人に財産を多めに相続させたいという気持ちが少しでもあれば、遺言書を準備しておきましょう。

仮に、特定の相続人に対して、多め相続させると伝えておいたとしても、口約束だけではなんの効力もないので注意が必要です。

また、遺言書では財産の分け方を淡々と書き記すのではなく、なぜ相続分に差があるのかをしっかり明記し、また相続人一人一人に向けたメッセージも描き記すようにしましょう。

こういったメッセージのことは、付言と言いますが、付言があったためにトラブルを避けられたといったケースも数多くありますので、遺言書を書く際には必ず付言を残しておくようにしましょう。

Next: 相続人がいない、相続人同士の仲が悪いケースは?



ケース7:相続人がいない

相続人が誰もおらず、特別縁故者として申請してくる方もいなければ、被相続人の財産は最終的に国のものになります。

国のものになっても構わないのであれば問題はありませんが、何かと気にかけてくれていた近所の方や、何年もお世話になっていた介護施設、また慈善活動を行なっている団体など、相続権を有さない方に財産を渡したいと考えているのであれば、必ず遺言書を準備するようにしましょう。

ケース8:相続人同士の仲が悪い

遺言書がなければ、どのように財産を分けるのかを相続人同士で話し合わなければなりません。相続人同士で仲が良くても、この話し合いがきっかけでトラブルに発展することもあるので、現時点で仲が悪ければなおさらです。

遺言書があれば、相続人に対して財産の分け方を提示することができますので、ゼロから話し合いを進めるよりは、スムーズに遺産分割協議を終えることができます。

相続人同士で財産の分け方を決めることに少しでも不安があれば、必ず遺言書を準備しておきましょう。

ケース9:子供の嫁や夫に財産を渡したい

何かと気にかけてくれ、自分の世話をしてきてくれた息子の嫁に財産を渡したいといったケースがよく見受けられます。

しかし、どんなに献身的な介護をしてきてくれたとはいえ、養子縁組をしている場合を除き、嫁に相続権は発生しません

少しでもいいから嫁に財産を渡したいと考えるのであれば、事前に全相続人予定者に了承を得た上で、遺言書を準備し、嫁に財産を渡せるように対策をしましょう。

ケース10:認知していない子供に相続させたい

愛人との間にできた子供や、前妻との子供を、現時点では認知していないが、自分の死後、生活が困らないように財産を渡したい、というケースです。そう考えるのであれば、必ず遺言書を準備しましょう。

認知は遺言によってもできます。死後認知をする場合には、遺言書を書くだけでなく、遺言執行者を指定する必要がありますので、必ず遺言執行者を指定するようにしましょう。

家族に隠し子がいると言い出せずに死後認知をしたことで、残された遺族が愛人や隠し子がいることを知り、トラブルに発展してしまうこともよくあります。ですので、できるだけ生前に家族に伝え、相続が発生したらどうしてほしいのかを話し合うようにしましょう。

Next: 内縁の妻or夫に相続させたい/離婚協議中だとどうなる?



ケース11:内縁関係の妻or夫に相続させたい

何十年間、連れ添った間柄であったとしても、籍を入れていなければ相続権は一切発生しません

お子様がいらっしゃれば、その子供に相続権が発生し、それ以外に相続権を有する方は出てきません。お子様がいなければ、亡くなった方の親もしくは兄弟姉妹。兄弟姉妹がいない場合には、甥・姪が相続人となります。つまり、内縁の夫もしくは妻には一切相続権が発生しないのです。

従って、内縁関係の相手に相続させたい場合には、必ず遺言書を準備しておくようにしましょう。

また、被相続人の親が相続人となる場合には、遺留分が発生しますので、遺留分を侵害しない程度の財産の分け方を考える必要がありますので、注意が必要です。

ケース12:離婚協議中の配偶者に相続させたくない

どんな状況であろうと、離婚が正式に成立していなければ、配偶者に相続権が発生します。従って、現在離婚協議中で、配偶者に財産を渡したくないのであれば、遺言書を準備しましょう。

しかし、配偶者には遺留分が認められていますので、配偶者が相続放棄をしない限り、相続権は発生します。つまり、遺留分を侵害しない程度の内容を考え、遺言書に書き記す必要があるのです。

また、離婚協議中でかつ子供の親権が相手方に渡りそうといった状況であれば、遺言書がなければ全財産が配偶者と子供に相続されます。

配偶者や子供には、遺留分程度の財産を相続させ、残った財産を両親や兄弟姉妹へ相続させることは可能ですので、覚えておいて頂ければと思います。

遺言書が相続トラブルを防止する

以上が、遺言書を準備しておいた方が良いケースのまとめです。今回の説明にある12個のポイントに当てはまらないからといって、「遺言書は必要ない」と考えるのは絶対にやめてください

遺言書があったことで、相続トラブルを回避できたといったケースも数多くあります。

また近年、相続トラブルの発生件数が増加し、裁判所へ持ち込まれる件数も多くなったことから、遺言書を準備すれば一定額を控除するといった制度の導入も検討されています。

ただ闇雲に遺言書を書くのは控えて頂きたいのですが、注意事項などを守って遺言書を残しておけば、きっと円満に相続を終えることができるはずです。今回の記事をきっかけに、みなさんの遺言書に対する意識が変われば幸いです。

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FPが教える!相続知識配信メルマガ☆彡.。』(2017年12月29日, 2018年1月1日, 3日, 5日, 8日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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