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ビットコインはまだまだ輝く。待望される仮想通貨の「価値基準」=高島康司

仮想通貨の国際的な規制が強まる可能性が高くなっている。これで投資対象としてダメになるかといえばそうではない。ちょっとユニークな視点からその状況を解説する。(『未来を見る!ヤスの備忘録連動メルマガ』高島康司)

※本記事は、未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ 2018年3月2日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

ブロックチェーンが起こす産業革命。そのときに必要なるものは?

各国で強まる「仮想通貨」規制

周知のように、最近になって各国の仮想通貨の規制が一層強化される方向に向かっている。

2月23日、日本の麻生太郎財務・金融担当相は閣議後会見で、仮想通貨取引所の内部管理体制は利用者保護の観点からも極めて重要で、立ち入り検査などを通じて健全性の確保を図ると述べた(※編注:原稿執筆時点3月2日。金融庁は3月8日、立ち入り検査などの結果をもとに仮想通貨取引所のうち2社に対して業務停止命令を、7社に対しては行政処分を行った)。

またフランス金融市場庁(AMF)は、仮装通貨デリバティブのオンライン取引プラットフォームに対し、EUの第2次金融商品市場指令(MiFlD2)の適用対象になると結論づけた。これが適用されると、同業界で一般的だった商品の電子的な広告が禁止されることになる。

さらにイギリスも、一層の規制強化の方向に動き出した。ビットコインなどの仮想通貨のメリットとリスクを研究し、新たな技術をどのように規制すべきか検討するための調査を議会が開始するとしている。イギリス政府は、透明性や報告義務が十分でない仮想通貨市場に本格的に取り組む方針を示している。

次はフランスとドイツの動きである。3月19日から20日にアルゼンチンで開かれるG20で、仮想通貨の国際的な規制を呼びかける方針であることが明らかになった。フランスのルメール経済・財務相は2月18日、「ビットコインのリスクの分析や規制についてドイツとともにG20参加国に提案したい」と述べた。両国がパリでの共同記者会見で発言した。

さらにEUは、G20でビットコインなどの仮想通貨が伴う危険が世界的に扱われることがない場合、自ら率先して仮想通貨を規制するとした。仮想通貨の規制は、国際的なマネーロンダリングやテロ対策として、財政法に沿って行われるものと思われる。それとともに、仮想通貨の取引を行う者に対して、より厳格な個人情報を要求することで、ビットコインなどの仮想通貨を違法行為や不正利用に悪用しにくくする方法も検討されている。

「ブロックチェーン技術」は積極的に開発されている

このような状況なので、仮想通貨の相場全体は停滞し、弱含みで展開している。2カ月程前には230万円をつけていたビットコインも、半値以下の100万円前後の相場になっている。これから3月19日から20日のG20による仮想通貨の規制強化発表向けて、相場はさらに大きく下げる懸念も出てきている。

仮想通貨そのものの将来性を悲観し、各国政府の全面的な規制の導入で仮想通貨は消滅してしまうのではないかとする極端な悲観論までも出てくるようになっている。

しかし、ここで重要なのは各国政府が規制対象にしているのは仮想通貨だけで、その基礎的な技術であるブロックチェーンのほうはむしろ積極的に開発する方針を打ち出していることだ。EU委員会はブロックチェーン技術に積極的に投資し開発をリードする機関として「ブロックチェーン監視所」を設立した。また中国もブロックチェーンによるデジタル人民元の開発を急いでいる。

仮想通貨はブロックチェーンの最初の適用事例にしか過ぎない。これから規制の対象になるのは仮想通貨の投機であり、ブロックチェーンそのものではない。そして、各国が積極的な開発に乗り出しているブロックチェーンという視点から逆に仮想通貨を見ると、これからの仮想通貨がどのような形態になるのかが見えてくる。

Next: ブロックチェーンから出現する「自立的小経済圏」が世界を変える?



ブロックチェーンによる産業革命が起こる

周知のようにブロックチェーンとは、ハッシュ関数で暗号化したデジタルデータを無数のコンピューターに存在する分散台帳に書き込み、すべてのデータのブロックを相互にチェーンで結ぶテクノロジーだ。データのブロックが分散台帳に書き込まれるためには、これに埋め込まれているハッシュ関数の暗号を解読するマイニングの作業が必要になる。この解読作業を行うマイナーには、一定の手数料が仮想通貨で支払われる仕組みだ。

これが2009年にサトシ・ナカモトという謎の人物が考案したビットコインのブロックチェーンのモデルだった。このモデルをベースにして、プログラムの自動実行機能を実装したイーサリアムなど、それぞれユニークな特徴を持つアルトコインのブロックチェーンに発展した。

しかしこのモデルは、ビットコインのような通貨に限定されるわけではない。分散台帳に書き込まれるデジタルデータには種類の制限はない。不動産登記、保険契約、住民票、選挙の投票、サプライチェーンの配送データ、電力の送電網など、あらゆるデータがブロックチェーンで管理できる。そのためブロックチェーンには、既存の社会インフラを根本から刷新してしまう潜在的な可能性を秘めている。それこそ、まさにブロックチェーンによる産業革命だ。

新しいサービスが生まれるたびに、仮想通貨も生まれる

ブロックチェーンの技術はセキュリティと安全性が高いので、中央で巨大なサーバが管理していたサービスを、P2Pの分散型ネットワークにすべて置き換えることができる。その結果、送電網専用の分散台帳、不動産登記専用の分散台帳、保険契約専用の分散台帳などそれぞれのサービスの特性に合わせた無数の分散台帳が存在することになる。

そして、これらの分散台帳がビットコインやイーサリアムのモデルを使うのであれば、ブロック化したデータを台帳に書き込むためにはマイニングという作業が必ずともなうことになる。その結果、仮想通貨が生成される。このモデルが一般化するなら、既存のインフラをブロックチェーンに置き換えると、それぞれのサービスに対応した仮想通貨が誕生することになる。

ブロックチェーンから出現する「自立的小経済圏」

いまビットコインの過熱する投機に対する警戒感がとても強くなっている。そのため、ビットコインが暴落するたびに、中央銀行に価値が保証されていない通貨には通貨としての根拠がないので、これは単なるバブルに過ぎない。ビットコインは将来的に消滅するという悲観論が強くなっている。

しかしそれは、仮想通貨の消滅を意味しているわけではまったくない。ブロックチェーンによって既存の社会インフラの再構築の急速な進展とともに、それぞれの分野にユニークな仮想通貨が生まれ、その取引を中核に形成される自立的な小経済圏が無数に出現する可能性が高い。我々はこうした発展の端緒にいるに過ぎない。

Next: 仮想通貨は存続する。ビットコインに期待される役割とは?



金(ゴールド)のような仮想通貨が必要になる

このような視点から既存のビットコインやイーサリアムなどの仮想通貨を見ると、これらの通貨は消滅するどころか、これまでとは異なった役割が与えられ、存続する可能性が高いことが分かってくる。

それというのも、自立的小経済圏には共通した価値の尺度が必要だからである。無数にある仮想通貨が相互に交換されるためには、いわば現在の「金(ゴールド)」のような存在がどうしても必要になるということだ。

現在、日本の主要な取引所で取り扱っている仮想通貨は十数種類程度に過ぎない。この程度であれば、ある仮想通貨と別の仮想通貨の交換レートの表示はそれほど複雑ではない。たとえば1イーサリアムなら、その価値は0.25ビットコイン、1.5ライトコイン、25リスクというように仮想通貨の一定額で表示ができる。だから、仮想通貨の種類がこの程度であれば、相互の交換はさほど問題とはならない。それがいまの状況だ。

しかし、自立的小経済圏がたくさん誕生し、無数の仮想通貨が乱立するような状況になると、すべての仮想通貨の価値を一括して表現する金のような価値尺度がない限り、仮想通貨相互の交換はとても複雑になるので、困難となるはずだ。ではどのような仮想通貨であれば、価値の共通した尺度になることができるのだろうか? それは、どの仮想通貨とも無条件に交換可能な、それこそ金のような仮想通貨だ。

ビットコインに期待される役割「共通の価値尺度」

ところで、ビットコインのような仮想通貨はコンピューター上の単なるデジタルデータなので、金のような価値の実体的な基盤がないといわれる。金は手に取ることのできる物質として価値を持つが、デジタルデータである仮想通貨にはそれがないというわけだ。

しかし、金の本来の価値はその金属としての性質にあるわけではない。むしろ、市場であらゆる商品と交換可能な価値基準であることこそ、金の価値の源泉なのである。もし金が他の商品との交換ができないということになれば、金の価値はせいぜい宝飾品程度のものとなり、価値が大きく下がるはずだ。

これと同様なことが、どの仮想通貨とも交換可能で、その結果、すべての仮想通貨の価値基準となる通貨にもいえることである。こうした仮想通貨がデジタルデータで手に取ることのできる物質性を持たないことはなんら問題とはならない。そうした仮想通貨の価値は、それが他のすべての仮想通貨と交換可能であり、価値基準となることができるという事実にある。

無数の自立的小経済圏が形成され、無数の仮想通貨の交換が必要な状況になると、信頼できる価値基準として突出した仮想通貨がどうしても必要になる。

Next: どんな仮想通貨が金(ゴールド)ような価値基準となりうるのか?



政府管理ではない価値基準

このような価値基準としての仮想通貨には、さらに金と共通した特徴がある。それは、その価値が特定の政府や組織、また団体によって保証されるのではなく、市場の総意によって選ばれたものでなくてはならないという特徴だ。

たしかに、そのような統一的な価値基準となる仮想通貨が、市場の総意によって選ばれるのではなく、現代の不換紙幣のように、中央銀行による上からの強制力によって流通させることもできる。

しかしこの場合、流通性の基盤となる中央銀行や政府の信用が失墜すると、価値基準となる仮想通貨の価値も失われることになる。そうした場合、無数に存在する自立的小経済圏の間の仮想通貨の交換はできなくなってしまう。

このようなリスクを回避し、いついかなるときでも無条件に交換可能な状態にするためには、まさに金のように、共通の価値基準は市場の総意によって選ばれたもので、中央銀行や政府から独立していたほうが都合がよいはずだ。

特定の分野との結び付きのない価値基準

さらに、共通の統一した価値基準となるためには、もうひとつ重要な特徴がある。これがもっとも重要な条件かもしれない。それは、共通の価値基準となるように選ばれた仮想通貨は、特定の分野との結び付きがなく、独立しているべきだという条件だ。

たとえば自立的小経済圏では、送電網という分野で発生した仮想通貨や、不動産の登記を管理するブロックチェーンから発生した通貨など、さまざまな分野の通貨が乱立する。

そうした通貨の供給量は、特定の分野の需要によって左右される。もしそうした仮想通貨が共通の価値基準に選ばれてしまうと、結び付きの深い特定分野の需要によって供給が変化するため、すべての仮想通貨の価値は不安定になってしまう

これを避けるためには、統一した価値基準となる仮想通貨は、個別のどの分野にも属しておらず、純粋に価値基準としてあらゆる通貨と交換可能なものであるべき

Next: ビットコインとイーサリアムには未来がある



ビットコインとイーサリアム

さて、このような共通した価値基準という視点からいまの仮想通貨を見て見ると、ビットコインイーサリアムがこれに近い役割を果たしていることに気づく。

いま草コインというカテゴリーでは、あらゆるタイプの仮想通貨が出現――

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各国政府の規制の方向性

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【関連】中国はなぜビットコインを潰しにかかったのか? 不都合な規制の裏側(前編)=高島康司

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未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ」(2018年3月2日号)より一部抜粋・再構成
※太字はMONEY VOICE編集部による

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