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また北朝鮮に騙されるのか? 米中露「外交ライアーゲーム」の被害者=矢口新

先日サウナで、「米国も韓国も、北朝鮮に騙されていることに気付かないのか?」という会話を聞いた。米朝協議に動き出した今、本当に騙されているのは誰だろうか。(『相場はあなたの夢をかなえる ―有料版―』矢口新)

※本記事は、矢口新氏のメルマガ『相場はあなたの夢をかなえる ―有料版―』2018年3月19日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:矢口新(やぐちあらた)
1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。アストリー&ピアス(東京)、野村證券(東京・ニューヨーク)、ソロモン・ブラザーズ(東京)、スイス・ユニオン銀行(東京)、ノムラ・バンク・インターナショナル(ロンドン)にて為替・債券ディーラー、機関投資家セールスとして活躍。現役プロディーラー座右の書として支持され続けるベストセラー『実践・生き残りのディーリング』など著書多数。

韓国が歩み始めた「南北統一」への道。日本はどう反応すべきか?

北朝鮮に騙されている?

先日、ジムのサウナで、地元の老人が2人、「アメリカも韓国も、北朝鮮に騙されていることに、気付かないのか?」「そうだ、何度も懲りずに騙され続けているうちに、北朝鮮は核武装までしてしまった」「今回も、騙されるに決まっている」というような話をしていた。サウナの中には、私と、他にもう1人ぐらいしかいず、喋っているのは、その2人だけだった。

私は、いつものように黙って目を閉じて、呼吸を整えながら、肩の可動域を広げる動作を続けていた。そして、「騙されているのは、誰だろう?」と考えていた。

互いに対抗する米国、中国、ロシア

米国、中国、ロシアは、互いに対抗している。対抗するということは、対等の関係を意味し、お互いを罵り合うことがあっても、自分により有利な関係を築こうと、落としどころも探っている。

また、他の諸国や地域との関係では、お互いが陰で手を結ぶこともある。それが、古今東西で行われてきた政治・外交だ。戦争は外交の一手段に過ぎない

「意外な人物」が嘆く戦争

「戦争は外交の一手段に過ぎない。戦争は、最も稚拙で、犠牲との兼ね合いで得るものが少ない外交だ」。何年か前に、英文メディアのインタビュー記事で、意外な人がこの言葉を発するのを読んだ。

その名を聞けば、多くの人が意外だと思うに違いない。それまでの英文メディアの印象では、その人は統治能力に欠けた、野蛮人という印象だったからだ。その人とは、シリアのアサド大統領だ。

それで私は、シリアの内戦は、アサド大統領の意志ではなく、悔やんでも悔やみきれない失政だったと捉えている。

英文メディアのシリア関係の報道では、慎重に事実を報道しようとする姿勢は、あまり見られない。野蛮人というなら、トランプ大統領の方が、よほど野蛮だ。

Next: 本当に世界の脅威か? 米中露の打算で成り立つ北朝鮮



米中露の打算が作り上げる「北朝鮮」

私は以前から、北朝鮮の存在は米中露の打算の上に成り立っているのではないかと、述べてきた。

米国が西太平洋に強大な軍備を維持できているのは、北朝鮮がいるからだ。冷戦が終わった今も、日本に費用込みで基地を提供させ、自衛隊の装備に米国製の売り込みができているのは、端的に言えば、北朝鮮がいるからだ。そして、有事の際には、自衛隊も米軍の指揮下に置くことができる。

中国やロシアの最大の関心事は内政だ。大きな国でありながら、国を1つにするだけの理念の支えがない。

一方で、古今東西で行われてきた政治で、最も安直に愛国心を高められるのは、「仮想敵国」をつくることだ。

西太平洋における強大な米軍(と同盟軍)の存在は、中国やロシアの軍備拡大を正当化し、危機感は国を1つにする。その意味で、北朝鮮が時々暴れてくれるのは好都合だ。

少なくとも、現時点まではそうだった。

日本(日本国民)だけが蚊帳の外?

トランプ米大統領は16日、韓国の文在寅大統領と電話会談し、5月末までに北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長と会談する意向を確認した。ホワイトハウスが明らかにした。

両首脳は、朝鮮半島の非核化実現に向け「具体的な行動」が重要になるとの認識で一致。最近の動向を慎重ながら楽観的に捉えていると表明した。

出典:トランプ氏、5月末までに米朝トップ会談に応じる意向確認 – Reuters(2018年3月17日配信)

韓国による北朝鮮との平和構築への取り組みについて、中国の習近平国家主席は支持と奨励を表明し、またロシアも支持する姿勢を示した。中ロを訪問した韓国の鄭義溶・大統領府国家安全保障室長が15日明らかにした。

出典:中ロ、朝鮮半島平和への取り組みを歓迎=韓国特使 – Reuters(2018年3月15日配信)

これで明らかなのは、日本だけが蚊帳の外だと言うことだ。とはいえ、諸外国がそこまで日本政府をないがしろにしているとは考えにくいので、日本国民だけが、あるいは当事国の国民たちだけが蚊帳の外なのだ。

とはいえ、これで東アジアに平和が来ると考えるのは、あまりに短絡的だろう。なぜなら、もともと対立関係にあるのは、米ソ、中ソ、現在は米中露で、北朝鮮は地域の「平和を脅かす存在」としては、あまりに弱小だからだ。

世界が本当に北朝鮮を脅威と思っているなら、50数カ国も経済制裁破りを行う国が出てくるのは不可思議としかいいようがない。

Next: ほぼ実現しない「朝鮮半島統一」。日本が取るべき大人の対応は?



ほぼ実現しない「朝鮮半島統一」

北朝鮮の存在は、今も米中露の打算の上に成り立っているのではないか。

韓国からの統一に向けての働きかけは、世襲の独裁政権を韓国が受け入れるはずもなく、選挙で選ばれる政権を北朝鮮が受け入れるはずもない。東西を統一したドイツなどとは、体制が違うのだ。また、北朝鮮が核を放棄することも考えにくいことを鑑みれば、米中露が「あえて、反対することもない」ほど、現時点では実現の可能性が低い

一方で、「民族の統一」というような大義名分に、否定的な発言・態度は、国際社会の成り立ちや人道的にも許されるはずがなく、「支持と奨励」が当たり前の反応なのだ。

こうしてみると、政治的に分断された隣国が統一に向けての努力をしようとしている時に、「気をつけろ」「騙されるぞ」「~しない限り認めない」などと否定的な発言を行うことは、隣国の恨みを買う恐れがあるだけでなく、世界の孤児ともなり兼ねない、危険な行為だということになる。

「騙されているのは、誰か?」。慎重に考える必要がありそうだ。

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相場はあなたの夢をかなえる ―有料版―』(2018年3月19日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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