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ギリシャは「働かない」「公務員だらけ」は間違い!破綻が必然だと言える理由とは

未だ予断を許さない状況にあるギリシャ。このまま緊縮案を受け入れられず、ユーロ離脱となるのか?それとも債務減免されるのか、連日ニュースから目が離せません。ところで、そもそもギリシャはどうして破綻しかけているのでしょうか。中小企業診断士であり作家の三橋貴明さんがその点について詳しく解説してくれています。

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ギリシャ危機に至ったのは必然だった!

ギリシャはなぜ、財政破綻に追い込まれたのか。巷では、「ギリシャ人が怠けて働かないから」「ギリシャは公務員だらけだから」といった間違った情報が流布されているが、「大元」の理由は何だろうか。経済学というよりは「経済統計」について正しく理解すると、ギリシャは財政破綻したのは「必然」だったことが理解できる。

GDP(国内総生産)とは、以下の式で表現される。

純輸出を除くと、GDPの需要項目は「消費」「投資」の二種に分類される。

また、純輸出とは国際収支の経常収支における「貿易収支+サービス収支」である。

経常収支は、以下の式で表現される、

国民の所得の総計である「国民総所得(GNI)」は、GDPに所得収支と経常移転収支を加えたものだ。

GDPの内、純輸出は貿易収支とサービス収支の合計であるため、

すなわち、

の式が導き出せる。

ところで、国民総所得から消費を差し引いたものが「貯蓄」になる。貯蓄とは、所得から「消費に回らなかったもの」という定義になるのである。

というわけで、上記の式の消費と投資を左辺に持っていくと、

という最終的な式が導き出されるのだ。

上記の式から、「経常収支が赤字の国は、国内が貯蓄不足」「経常収支が黒字の国は、国内が貯蓄過剰」になることが分かるのだ。ギリシャは経常収支の赤字が継続し、国内の貯蓄不足が続いた。結果、ギリシャ政府は国債償還を国内金融市場ではなく「国際金融市場」に依存することになった。

Next: ギリシャ破綻は構造上の問題があった




ところが、ギリシャはユーロ加盟国である。ギリシャ政府が国債を発行する際に、ドイツ政府やフランス政府と「競争」しなければならなくなったのである。

ギリシャ国内の銀行にしても、別にギリシャ政府にカネを貸す必然性はない。ドイツ政府やフランス政府にカネを貸す、すなわち国債を購入しても構わないのだ。

ユーロ加盟国の政府同士で「競争」が発生し、金利に差が生じる。生産性が低く、経常収支赤字対GDP比率が拡大していたギリシャは、金利が上昇せざるを得なかった。

そもそものギリシャの問題は、貿易赤字が拡大し、経常収支が赤字化していたことだ。貿易赤字拡大を解消するには、生産性を高める必要がある。すなわち、ギリシャ企業や生産者一人当たりの生産を伸ばし、国民の需要を「自国企業」「自国人材」で満たす必要があったのだ。

ところが、生産性を向上するためには、以下の二つが必要になる。

  1. 関税や為替レートの下落により、外国製品を国内市場から占め出す
  2. ギリシャ国内で投資を増やし、生産性を高める

ギリシャはEUとユーロに加盟しているため、関税引き上げや為替レートの切り下げは不可能だ。さらに、国内で投資をしようにも、金利が高すぎる。

結果的に、ギリシャは生産性を高め、問題を根本的に解決する道を塞がれてしまった。関税引き上げ、為替レート切り下げ、生産性向上が不可能だとなると、国際的な競争力を伸ばす方法は一つしかない。ギリシャ国民の所得を下げるのだ。

実際、ギリシャは08年以降、国民の所得の合計たるGDPを緊縮財政、デフレ化政策により減らした。ギリシャのGDPは、すでにピークから26%も減ってしまったのである。

すなわち、国民の所得が四分の一以上、小さくなってしまったのだ。税収は国民の所得から徴収される。ギリシャのGDP減少は、ギリシャ政府の租税収入を減らした。

結果的に、ギリシャはユーロ建ての対外負債を返済できなくなり、財政破綻に追い込まれた。ギリシャが財政破綻したのは、「経常収支の赤字体質を、生産性向上によりカバーすることができない構造だった」「デフレ下の緊縮財政で国民の所得が減り続けた」ためなのである。

それにもかかわらず、「ギリシャ人が怠けて働かないから」「ギリシャは公務員だらけだから」といった、ステレオタイプ的な嘘が蔓延している以上、緊縮財政やユーロという構造を「正当化する」情報操作が行われていると理解するべきなのだろう。

週刊三橋貴明 ~新世紀のビッグブラザーへ~』 Vol.320より抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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