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親の所得格差が子の教育格差に影響する時代。だからこそ知るべき進学費用を工面する方法

総務省統計局のデータによると大学等の授業料・入学金は上昇傾向にあるようです。みなさんの中にもお子さんの教育費捻出について頭を悩ませているという方もいるのではないでしょうか。しかし、単純に経済的理由で進学を断念しよう、断念してもらおうと考えているのであればそれは早計かも知れません。自身も経済的理由から大学への進学を諦めていたが、奨学金などの学費支援制度を活用して、私立大学に自力進学したというファイナンシャルプランナー・新美昌也さんが解説してくれています。

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進学費用を工面するための3つの方法

親の所得格差が、子の教育格差に影響する時代です。特に、高校卒業後の大学等の進学費用は高額で、親の所得格差の影響が子どもの進路に大きく影響します。

実際、大学等の進学を諦めている低所得世帯の子どもは少なくありません。しかし、お金がないから進学できないというのは、思い込みにすぎないのです。進学費用は、子どもが、自らの力で勝ち取ったり、借りたりすることにより工面することが可能です。

そこで、今回は、進学費用の準備の方法として、3つのステップに分けてポイントを解説します。

ステップ1:家計への負担を減らし効率的に「貯める」

時間を味方につけることがポイントです。大学等の入学手続きに最低限100万円(入学金+前期分の学費)必要です。

運用益を考えなければ、100万円を10年間で貯めるには毎年10万円ですみますが、5年間であれば毎年20万円貯めなければなりません。

このように、早めに貯蓄を始めれば家計への負担が軽減されます。ストレスなくお金を貯める秘訣は給与天引きなど自動的に貯まるしくみを利用することです。勤務先に「財形貯蓄」があれば、ぜひ活用しましょう。なければ、金融機関の自動積立定期預金(貯金)などを活用します。

「学資保険」や「積立投資信託」も自動積立のしくみをもった商品です。貯蓄よりはお金を増やすことができる反面、リスクがあります。保険の場合は、途中解約すると、元本割れのリスクがありますし、投資信託の場合は元本保証はなく、運用成績は市場(しじょう)の影響を受けます。

しかし、時間を味方につければ、保険の場合、貯蓄同様、毎月の保険料は少なくて済み継続の可能性が高まりますし、原資として、児童手当などが活用できます。積立投資信託の場合は、「ドルコスト平均法」、「長期投資」の効果によりリスクを低減することが可能です。

経済的余裕があれば、低解約返戻金型の終身保険(あるいは長期平準定期保険)、ジュニアNISAなどの活用も検討しましょう。

低解約返戻金型終身保険は、通常の終身保険に比べて、保険料払い込み期間中(例えば10年)は、解約返戻金の水準が通常の70%である反面、保険料払込期間満了後の解約返戻率が高くなっています。

ジュニアNISAは、年間80万円まで非課税で運用できます(最長5年間)

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ステップ2:返済義務のない奨学金を「勝ち取る」

奨学金には、返済義務のある「貸与奨学金」と、返済義務のない「給付奨学金」があります。多くの奨学金は貸与タイプですが、学校独自の奨学金として給付タイプが増えています。

勉強をがんばれば、給付奨学金を勝ち取ることができます。ぜひ、チャレンジしましょう。給付奨学金には、入学前に申請するもの、入学後に申請するものがあります。

入学前に申請するものには「特待生制度」や「入学前予約型給付奨学金」があります。特待生制度は、入試の成績により授業料が一部または全部免除になる試験です。最近では、入試の成績だけではなく、英検2級などの一定の資格を高校時に取得していれば、授業料の減免が受けられる「資格特待生制度」もあります。

入学前予約型給付奨学金は、主に首都圏以外の学生を対象に、合格前に採用候補者を決定し、合格すれば確実に奨学生に採用されるしくみです。

入学後に申請する奨学金には様々な奨学金があります。 採用条件は、成績の他、経済的困難さ、ボランティア活動などです。

以上の他にも、自治体や民間企業にも給付型奨学金があるので、こちらも調べてみましょう。

ステップ3:金利の低いところで「借りる」

最後の手段は「借りる」です。貸主としては、国、地方自治体、民間金融機関があります。借りる場合のポイントは金利の低いところから借りるのがポイントです。一般的には、地方自治体、国、民間金融機関の順に金利が低くなっています。

自治体の奨学金は無利子が基本です。しかし、残念ながら、大学生等向けの自治体の奨学金はほとんどありません。ただし、ひとり親家庭向けには、無利子の「母子・父子福祉資金」がありますので、該当する方は検討しましょう。

低所世帯向けには、生活福祉資金貸付制度の「教育支援資金」があります。自治体の貸付制度には、労働金庫などの金融機関と提携して教育資金の貸し出しを行う、自治体提携融資制度による「中小企業従業員生活資金融資」もあります。

自治体が利子を補給することにより、低利で教育資金の借り入れができます。

返済が免除になる奨学金も

その他、自治体の奨学金として、ユニークな奨学金を紹介します。貸与奨学金ですが、一定の条件を満たせば、返済が免除になります。

看護師等や介護福祉士等を目指す学生向けの奨学金は、卒業後、看護師や介護福祉士などの国家資格を取得し、貸与を受けた自治体の施設等で一定期間業務に従事すれば返済が、原則、免除されます。

東京都独自の「受験生チャレンジ支援貸付金」は、低所得世帯の進学予定のある中学3年生、高校3年生(それに準じる未成年)が利用する学習塾などの受講料や、高校・大学の受験料について貸付(無利子)を行うものですが、高校や大学等に入学すれば返済が免除になります。

国の代表的な貸付制度には、「国の教育ローン」と「日本学生支援機構の奨学金」があります。

国の教育ローンは低利の固定金利で、現在2.15%です。返済期限は最長15年、最高350万円(留学資金450万円)まで、保護者が、一括で借り入れすることができます。ひとり親家庭、年収200万円以内の世帯、交通遺児家庭には金利などの優遇がある点が特徴です。

日本学生支援機構の奨学金には、無利子の第一種奨学金、有利子(上限金3%)の第二種奨学金、低所得世帯だけが利用可能な有利子の入学時特別増額貸与奨学金があります。

入学時特別増額貸与奨学金のみ一時金で、奨学金の初回振込時に1回だけ振り込まれます。他の奨学金は入学後に毎月振り込まれます。

第一種奨学金の中に「所得連動返済型無利子奨学金」があり、これに採用されると、卒業後に本人が一定の収入を得るまでは願い出により返還期限が猶予(無期限)されます。金利には利率固定方式と5年ごとに見直される利率見直し方式があります。

金利は貸与期間終了年度に決まり、平成27年3月貸与終了者の利率は、利率固定方式が0.63%、利率見直し方式が0,10%でした。

返済期間は、貸与月額と貸与月数により自動的に決まり、9年から20年です。貸与月額は、第一種奨学金が3万円~6万4,000円です。学校の種別、国公私立の別、通学形態により金額が自動的に決まります。

第二種奨学金は、原則、3万円~12万円の5種類の金額から選びます。日本学生支援機構の奨学金は学生の借金である点、入学前には使えない点は重要です。国の教育ローンとの併用ができます。

民間の奨学金としては、新聞奨学生がユニークです。新聞販売店で、新聞配達などをしながら学校に通う制度です。無利子で学費を借り入れることができ、卒業後まで勤め続ければ、返済が免除になります。給与や賞与も支給されます。生活保護世帯の子どもには有力な選択肢のひとつです。

生半可な気持ちで卒業まで学業と仕事の両立を継続するのは難しいので、慎重に検討しましょう。

大学・専門学校への進学マネー講座』第71号、第72号、第73号より一部抜粋・再構成
※太字はマネーボイス編集部による

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