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その相続税の節税は家族のためになっている?2つの事例から見る決して忘れてはならないポイント

「残される家族のために少しでも多くお金を残してあげたい」という思いから行うはずの相続税の節税。しかし、節税ばかりに目がいくと、肝心の「残される家族のため」という部分が忘れられてしまうということもあるようです。「こころをつなぐ、相続のハナシ」を配信する行政書士の山田和美さんは、具体的な2つのケースを紹介。単に税金が安くなるという視点だけでなく、のこる家族が本当に良かったと心から思える相続対策を行うべきなのではと語ります。

相続対策は誰のためにするのか?

突然ですが、相続対策は誰のためにするのでしょうか?「後にのこる家族のため」もちろんそうですよね。当たり前の質問をしてしまいました。

しかし、いざ自分の対策をしようとしたときに、その当たり前の事を忘れてしまうことが、意外と多いのです。例えばこんなケースがあります。

1、相続税を減らすために控除額を増やそうとして、孫を養子にしたケース

確かに、孫を養子にする等で子供の数を増やせば、相続税の基礎控除額が増え、相続税を減らす効果はあります。※養子で増やせる控除額には限度があります。

では、本当にそれで良いのでしょうか?

孫を養子にする、ということは、戸籍上の子供が増える、ということです。孫からしたら、これまで祖父(祖母)であった人が戸籍を見ると父親(母親)になっている。当たり前のことですが、これってとても多きな出来事です。自分の身分関係が変わるということは、人生のうちでそう何度も何度もある出来事ではありません。

もちろんそれを気にするか、気にしないかは、様々な感じ方、考え方があると思います。一概に、こういった対策が「悪い」と言いたいわけではありません。それを特段誰も気にせず、それよりも節税の方が大事だ、というのであれば、検討の余地はあるでしょう。しかし、「節税のためにそこまでして良いのか」「将来的にその孫がどういう感情になるのか」という視点は、忘れて頂きたくないと思います。

またもう一つの問題点として、孫を養子にするということは、その孫自身も「相続人になる」ということです。相続人になる、ということは、相続で財産をもらう権利が生じますし、遺言書を書いたとしても遺留分があります。

養子にした孫の相続分は考慮していますか?また、長男の子のみを養子とした場合、相続人ではない次男の子とのバランスは取れていますか?

相続税が安くなったとしてもそれが元で相続争いが勃発してしまっては、本末転倒です。相続税が安くなるからとって、これほど重大なことを安易に決めることには賛成できません。起こりうる様々な問題をしっかりと検討したうえで、ご決断いただきたいと思います。

Next: 2、相続税を減らすためにアパート経営を始めたケース


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2、相続税を減らすためにアパート経営を始めたケース

相続税を減らすために、アパート経営をする。こういった相続対策を聞かれたことのある方も多いのではないでしょうか。もちろんこれ自体が「悪い」とうことではありません。相続税を減らすひとつの手法として検討の余地は十分にあります。

元々アパートやマンションの経営になれているご家族で、ご自身の相続が起きた後も、その事業を継いでくれる方が決まっているのであれば、特段問題はないでしょう。

しかし、もしアパート経営をはじめるのが相続税が安くなるから、という理由だけなのであれば、少し考えてみてください。

まず、アパートを建てるということは、お金が出ていく、ということです。場合によっては、借入をして建てる場合もあるでしょう。そのことを、しっかり認識されていますか?一度建てた建物は、通常、建てるのにかかったのと同じ金額では売れません。本当に入居者は入りますか?その借金は返していけますか?また、手元の現金が減りますが、相続税の支払いなどは問題ないでしょうか?

また、「アパート経営」というと投資の延長のイメージをされる方もいますが、アパート経営は立派な事業の一つです。例えば入居者に、すこし変わった方が入ったらどうしますか?トラブルが起きた場合は?

経営である以上、リスクはつきものです。そのリスクを、のこされるご家族はご存知でしょうか。そしてそもそも、のこされるご家族は、アパート経営がしたいのでしょうか。

建物を管理していくというのは大変です。管理会社に任せますか?それも一つの方法でしょう。しかしもちろん、管理会社に任せるということは、費用がかかります。そして事業である以上、確定申告も必要です。ご自身でできますか?税理士さんに頼みますか?

そうして毎月、毎年かかっていく費用と、安くなった相続税の金額。結局のところ、どっちが大きいのでしょうか・・?こういった事も踏まえて、「そんなことわかった上で、やりたいんだ」ということであれば、もちろん問題ありません。

問題なのは、こういったことを検討もせず、単に「相続税が安くなるから」という理由だけで安易にアパートを建ててしまう事です。

他にも色々なケースがありますが、今日はその一例をお伝えしました。
その対策はのこされた人にとって、本当に嬉しいのか?むしろ、多少相続税が高くなったとしても、その対策はしないほうが良いのではないか?相続対策を考える際には、そういったことまで踏まえて、ご検討いただきたいと思います。

そして、やりっ放しの対策ではなく、きちんと遺言書まで書いて、不安をのこさないようにして頂きたいと思います。

のこされる人が「やっておいてくれてありがとう」と思える対策。そして想いがきちんと伝わる対策。そういった対策をすることで、相続で困る家族が少しでも減れば、嬉しく思います。

こころをつなぐ、相続のハナシ』2015/9/9号より一部抜粋
※太字はマネーボイス編集部による

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