マネーボイス メニュー

5Gの世界で日本企業は生き残れるのか? 産業構造の大変革で投資すべき分野とは=田中徹郎

映画1本を3秒でダウンロードできる「5G」の時代がまもなく来ます。そのとき日本企業は生き残れるのでしょうか? 社会の大変革と注目すべき投資分野を考えます。(『一緒に歩もう!小富豪への道』田中徹郎)

プロフィール:田中徹郎(たなか てつろう)
株式会社銀座なみきFP事務所代表、ファイナンシャルプランナー、認定テクニカルアナリスト。1961年神戸生まれ。神戸大学経営学部卒業後、三洋電機入社。本社財務部勤務を経て、1990年ソニー入社。主にマーケティング畑を歩む。2004年に同社退社後、ソニー生命を経て独立。

劇的に便利になる世界。投資家が「5G」到来に備えるべきことは

進化し続ける通信技術

皆さんは「5G」という言葉をお聞きになったことがありますか?

5Gというのは通信の新しい統一規格のことで、いま私たちが使っているスマホを支える通信規格である4Gの次世代版です。5番目の世代(Generation)なので、5Gと呼ばれているそうです。

ここまでの通信規格を振り返ってみますと、1Gが登場した1980年代以来、ほぼ10年ごと新しい規格が登場し、その都度、私たちの生活スタイルに大きな影響を与えてきました。

1G時代はアナログによる音声通信のみでしたが、1990年代に登場した2G時代はデジタル化され、私たちは携帯電話でメールができるようになりました。2000年代に登場した3Gでは、動画や音楽が楽しめるようになり、いまのスマホ社会は4Gがベースになっています。

こうやって振り返りますと世代が新しくなるにつれ、私たちへの影響の度合いは大きくなってきていることがわかります。

そして2年後の2020年、私たちはいよいよ5Gの世界に足を踏み入れることになります。

映画をわずか3秒でダウンロード

その5Gの世界はいったいどんなものなのでしょう。

性能から申し上げますと、例えば、5Gの通信速度は4Gの100倍ほどだそうです。仮に、いま私たちが使っているスマホが幅10メートルの道を使っているとするならば、次世代・5Gの道幅は1キロメートルになるイメージです。

この1キロ幅の超高速道路の効果は凄まじく、例えば私たちがいま1本の映画をダウンロードするのに5分ほどかかるところを、5Gではわずか3秒で完了です。

自動車への導入で世界が変わる

この遅延の少なさを最も待ち望んでいたのは、自動車ではないでしょうか。

きっとすべての車は5G回線に接続されることになるでしょう。一方で道路側でも、例えば中央分離帯や路肩などに、IPアドレスを持った超小型端末を無数に埋め込め込むといったことが可能になるはずです。

車と道路が常に高速で通信することによって、より安全な自動運転が可能になるのではないでしょうか。

Next: 同時接続数も桁違い。産業構造が根底から覆る大変革が起こる



産業構造が大きく変わる

同時につながる端末の数も比べ物になりません。4Gでは同時に接続できる相手先はせいぜい数台ほどでしたが、5Gでは1部屋に換算して100台ほどの端末と同時に接続できるそうです。

これは例えば、工場内といった比較的狭い空間の中での通信に効力を発揮しそうです。すでに最先端の工場では、ロボットが組み立てから梱包、搬送まで行うようになりましたが、無数にあるすべてのロボットが5G回線に接続されるならどうでしょう。

例えば、「組み立てロボット」が使用する部品は、ネットを介してタイムリーに「搬送ロボット」によって供給されるようになるでしょう。

そしてその「搬送ロボット」はネットを通して外部の部品会社に部品の注文を行い、それが自動運転される車(まさに自動車)によって運ばれて「搬送ロボット」に渡される。

つまり、5G通信によって、すべての工場は完全自動化でき、さらに工場間の製品や部品の配送も、ネットに接続された車(=コネクテッド・カー)によって、自動で行われることになると思います。

人件費の安いところで生産する必要はない

こうなってくると、工場は人件費の安い新興国に置く必要はありません

フル自動化によって多品種かつ少量の生産ができますので、できるだけ消費地に近いところに工場を作り、注文→製造→配送の間にかかる時間を最短化する戦略が求められることになるでしょう。

これはほんの一例で、5Gは4Gと比べられないほどの影響を、私たちの生活に与えるに違いありません。

そしてその影響は、例えばスマホ(別の呼び方になっているでしょうが)のような日常使いの世界にとどまらず、産業や経済のあり方まで一変させるインパクトをもっていると僕は思います。

いま経済の世界では、例えば米中間の貿易戦争や、日米間の通商交渉の行方など、不安要因ばかりに目が行っていますが、私たちはその先にも目を向けておく必要があると思います。

Next: 5G後の世界では日本メーカーが苦戦する? 投資家が準備すべきこと



5G後の世界では日本メーカーが苦戦する?

特に株式投資という観点で、5Gによって成長する領域はどこなのでしょう。

まず、自動車・ロボット・家電などの完成品メーカーが、良い立ち位置にいることは間違いないと思います。ただし、投資に値するかどうかという観点で見れば、少し違うような気がします。

例えば、自動車です。トヨタやスバルなど自動運転技術で先端を行く会社はありますが、この分野は異業種の参入が顕著です。グーグルは既にこの分野で圧倒的なデータを蓄積しています。5G時代の「つながる車」は、一種のデータ産業の色彩が濃く、ここまで蓄積してきた自動運転データとその処理がものを言います。

ですから、メカに軸足を置いてきたトヨタや日産が、5G時代にも現在のポジションを維持できるとは言い切れません

つながる家電」分野はもっと厳しそうです。例えば、スマートスピーカーを中心に据えた家電ネットワークの構築で、すでに日本勢は数歩出遅れてしまっているようにも見えます。

かろうじてロボットは安川電機やファナックなどが頑張っていますが、これもいつまで続くかわかりません。デンマークには強いロボットメーカーがいますし、「中国製造2025」を掲げ、国を挙げてロボット産業を育成する中国もあなどれません。

残念ながら日本メーカーは最終製品分野において、5G時代で主役になるのは難しいのではないでしょうか。

光が差す分野もある

一方で、電子部品や半導体などデバイスの分野はどうでしょう。

例えば、「つながる車」の目となるセンサーや、その目から入ってくるデータをリアルタイムで処理する車載半導体、先日ルレサスが買収を発表したIDT社が持つワイヤレス充電の技術、ロボットのキーパーツである減速機や超小型のモーターなどです。

このような分野は5Gのキーデバイスでもありますし、日本の完成品メーカーが衰退傾向を続ける一方で、デバイスメーカーは高い競争力を維持してきました。

ここで具体的な銘柄に触れることは控えさせていただきますが、このようなキーデバイスを作るメーカーの中から、数年後の出世株が出てくる可能性が極めて高いと僕は思います。

【関連】来年10月に襲う「消費税10%」地獄、生活を守るたったひとつの冴えたやりかた=鈴木傾城

【関連】2022年までに日本経済は破綻する。アベノミクス成功でも終焉でも未来は同じ=高島康司

【関連】日本より悲惨な韓国経済、この先の10年「希望が一切ない」4つの根拠

一緒に歩もう!小富豪への道』(2018年9月12日・19日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

無料メルマガ好評配信中

一緒に歩もう!小富豪への道

[無料 毎週火曜日+号外あり]
富裕層むけ、富裕層入りを目指す方むけの究極の資産防衛メルマガ!一国だけに資産を集めておくのは危険な時代がやってきました。海外ヘッジファンド、貴金属、不動産からアンティーク・コインまで、金融不安に負けない世界分散ポートフォリオを、経験豊富なファイナンシャル・プランナーが誠意をもってご案内します。

シェアランキング

編集部のオススメ記事

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MONEY VOICEの最新情報をお届けします。