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習近平主席「中国株は底打ちした」発言をどう見るか?上海PERは15.3倍=田代尚機

中国の習近平国家主席は訪米初日の9月22日、ウォールストリートジャーナルの取材に対し「市場はすでに自律修復・修正の段階に入っている」と述べ、中国の株価と経済に対し強気の見通しを示しました。この“底打ち宣言”はどの程度信頼に値するものなのか?TS・チャイナ・リサーチの田代尚機氏が解説します。

“きっかけ待ち”の本土市場、割安感のメドは上海総合2400ポイント

習近平国家主席「株価は底打ちした」は本当か?

習近平国家主席は訪米初日、「株価は底打ちした」と発言した。

詳しく説明すると、9月22日、アメリカ『ウォールストリートジャーナル』の取材を受け、株式市場に関して、「総合的にいろいろな安定化策を打ち出したことで、市場はすでに自律修復・修正の段階に入っている。資本市場の発展は改革のその先にあり、それは今回の株価の大きな変動によって、変わることはない」と発言している。

9月4、5日に開かれたG20では、中国人民銀行の周小川総裁が「株価バブルの原因となったレバレッジ取引(信用取引など資金を借り入れて投資をすること)はほぼ正常な状態に落ち着いている。株式市場で今不足しているのはマネーではなく、自信である」などと発言し、バブルは消滅したと強調している

指導層が言おうとしていることはよくわかる。

昨年7月中旬から今年の6月中旬にかけて、もう少し限定すれば、今年の2月中旬から6月中旬にかけて、株価は暴騰した。

上海総合指数 週足(SBI証券提供)

その最大の原因はレバレッジ取引の急拡大である。レバレッジ取引には大きく分けて2種類ある。一つは証券会社を通じた信用取引であり、もう一つは信用取引制度の枠外での金融取引である。後者は、投資家がノンバンクなどから資金を借りて行う株取引である。

なぜ、レバレッジ取引が急拡大したのか?

株価が上昇基調にある中で、金融緩和が行われた。金融市場に供給された資金はまず、需要が旺盛で、手っ取り早く高い利回りが得られるところに向かう。中国においては、銀行だってとても利に聡い。オーバーバンキングの中で機動的に行動する。

金融緩和は銀行を通じて間接的に証券市場になだれ込み、貪欲な投機家たちによってたちまち市場はバブルと化したのである。

暴落局面は、その逆戻しである。

当局は、何でもありの株式市場下支え策を繰り出したが、暴落を引き起こした原因を作ったのは当局である。当局がレバレッジ取引の拡大に急ブレーキをかけ、縮小させたから暴落したのである。

もっとも、大混乱の時期は当局の適切(?)な措置によって過ぎ去り、すでにレバレッジ取引は正常なレベルに戻った。だから大丈夫ということだ。

本当にそうだろうか?

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PERはフェアバリューでも、いま一歩の「割安感」

確かにバリュエーションだけ見ると、例えば25日における上海市場の平均PERは15.3倍で歴史的な変動域である9倍~60倍超といった範囲から見ればすでにフェアバリューと言ってよいだろう。

今期における銀行の業績が少し心配であり、全体の企業業績見通しでは減益懸念があるが、それを考慮しても、高過ぎるレベルとは言えないであろう。

ただし、割安感が漂うというほどではない。株価には慣性がある。やはり、投資家が割安感を感じることができなければ、フェアバリューであるからと言って、なかなか簡単には自律反発とはならない。

今後の相場を予想するポイントは、投資家が今の株価水準を割安と感じるほどの好材料が出てくるかどうかにかかっている。

指導層はその点について、それは「全面深化改革であり、国有企業改革であり、また、一帯一路戦略である」と主張している。つまり、「今は構造転換の真っ最中で厳しい時期であり、大きな変化が起きる時期である。我々は全精力をかけて世の中を変えようとしている。自信を持って投資して大丈夫だ」と言っているのである。

しかし、本土の投資家はとても貪欲である一方、結構冷めている。「マネーがすべて」といった面もある。手元に運用できる資金があれば、全体相場が多少悪くても、個別銘柄は別だと考え、勝負に出る。

金融緩和が一番である。先ほどの話に繋がるが、過剰流動性を発生させれば株価は上がる。しかし、その場合、また別のルートで短期資金が銀行から株式市場に流れることになるだろう。逆に言えば、下手をするとまたバブルになりかねない…。市場の管理は一筋縄ではいかない。

“きっかけ待ち”の本土市場、上海総合指数2400ポイントに注目

足元の状況も確認しておこう。

景気は悪化傾向が続きそうだ。ほとんどの投資家は構造転換を図る中では成長率が落ちることを理解しているので、そのことでことさら売られることはないが、景気が持ち直せば構造転換が上手くいきそうだということで大きな買い材料になる。そういうことが起こりにくいということだ。

政策面では国有企業改革に注目が集まっている。具体的なテスト企業が選ばれ、その企業群が一斉に企業リストラを含め、改革を始めることになれば、それらの銘柄が買われる。もっとも、発表直前には売買停止となってしまう。だから、予想の段階で買われることになる。これは相場の大きな核になり得る。

また、10月中旬には五中全会が開かれ、第13次五カ年計画の全体像が明らかになる。軍事産業なのか、環境・省エネ、新エネルギー、電気自動車なのか、あるいは別の戦略的新興産業なのか、産業支援策が大きく打ち出されるような可能性を感じられる話が出て来れば、それも相場の核になるだろう。

そういう観点からいえば、やはり、創業板指数、深セン総合指数などが買われる状態が望ましい。国有企業関連に始まり、小型材料株に買いが入り、それらの間で上手く循環物色が起こるようになれば、株価は自律反発の時期を迎えるだろう。

当局が何も目立ったことをしなければ、上海総合指数はまだ下げ足らない。だれもが割安と考えそうな2300~2400ポイントまで下げないと、自律反発してこないだろう。

本土市場は“きっかけ待ち”である。

(9月26日作成、有料メルマガから一部抜粋)

【関連】麻生さんも誤解?中国人民銀総裁「バブルがはじけた」発言の真相はこうだ

中国株投資レッスン』(2015年10月1日号)より一部抜粋
※チャートと太字はMONEY VOICE編集部による

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