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「超高速アルゴリズム取引」に個人投資家が勝つためのシンプルな戦略=若林利明

東証にアローヘッドが導入されて以降、日本市場でもヘッジファンドによる超高速取引やアルゴリズム取引が幅を利かせるようになりました。目にもとまらぬ速さで動く見せ板や、手動での注文に瞬時に反応してくるステルス注文。個人投資家はこれらにどう対応すべきでしょうか?元日本株ファンドマネージャーの若林利明氏が解説します。

個人投資家の「最大の強み」を活用してヘッジファンドに勝つ

アルゴリズム取引とは?

アルゴリズム、高速取引システムといった用語が闊歩する証券取引所になっております。機関投資家向けに開発された超高速取引を前提とした手法が株価形成に大きな影響を及ぼしております。

当然、誰もが参加でき公平性が担保されている資本市場ですが、実際にそれを利用できる投資家と出来ない投資家には、株価形成への参加度に相当温度差があるようです。

機関投資家の場合、一度に大量に発注するので株価形成に大きな影響を与えがちです。アルゴリズム等は本来、大きな注文を小刻みにすることにより、マーケットインパクトと言われる株価への影響度を避けるために開発された取引方法です。

しかし、現在の運用は、1/1000秒レベルの高速化が可能になったことにより、新たな使い方があれこれと登場しているようです。

ステルス注文、見せ板注文等が代表例ですが、現在はそのスピードを積極的に利用することにより機関投資家の発注時におけるアドバンテージを利用する形の使われ方がより強くなっているような気がします。

同時に個人投資家の中にはこの動きを察知して、上手く利用しようとする人も現れているようです。いずれにしろ市場にべったり張り付いていないとできない取引でもあります。

といっても現実の市場の動きの中で、すべての投資家がこのような取引に参加するわけではありません。とりわけ、個人の現物投資家には、長期保有を目的に企業の成長が株価に反映されることをじっくりと期待するといった投資姿勢を堅持している人も多くいるはずです。

両極端に位置している個人と外国人投資家

東証が毎週公表している主体別投資家動向から類推すると、高速取引の主役とされる短期利益追求型のヘッジファンド(外国人投資家中心)と個人現物投資家は両極にあるようです。

主体別投資行動に集約される売り買いの実績は、当然のことながら投資家自身がどのような投資手法を用いているかを反映しております。それだけにこの両極にある投資家の行動の背景を理解できれば、株価への影響度が大きいだけに、市場全体の理解に役立ちます。

結果として個人投資家が現在の市場展開から成果を得るような有益なヒントが得られる可能性があります。

Next: ヘッジファンドの弱点は「時間制限」にあり!



ヘッジファンドの弱点は「時間制限」にあり!

ヘッジファンドは見えない部分が多いのが特徴ですが、本来的に機密性が高く公の資料でその内容を理解することは不可能です。

これまでの過去の運用事例からおおよそ判明しているのは成果測定が絶対リターンであること、測定期間(運用期間)が原則1年と極めて短く設定されていること、等があります。

結構せっかちな運用資金が市場、市場周辺を動き回っていると表現できます。ともかく、その付加価値は、短期の市場変動から生み出されるものですから一時的に市場かく乱要因ともなり得る手法を積極的に使うことも常態化しているのです。

テコの原理を利用したレバレッジ効果などはこのヘッジファンドにとって小幅変動の市場から大きな変化を得るには非常に有益な手法です。狭い範囲のボックス圏相場、膠着相場等はヘッジファンドにとって最も歓迎せざる相場です。

何かが起きて欲しい、起きる事を想定し市場心理が大きく動揺、それが株価に大きく反映されればされるほどチャンスが広がることになります。

無論このチャンスを生かし切れなければ、逆効果によりそれは敗退を意味し顧客から運用資金を引き上げられる“宿命”を負っています。

各種資料からその残高を類推した表がネット上で公開されております。あくまで参考ですがその増勢振りは誰もが納得できるものです。

2008年にはリーマンショックにより一時的に残高が減少しましたが、世界の金融界における余剰資金状況に大きな変化はありません。需要はあるのです。

出典:ヘッドファンドリサーチ

ヘッジファンドと(現物)個人投資家の最大の相違点は投資期間の取り方です。ヘッジファンドは前述したように超短期成果追求型でありますが、一方個人投資家の場合、信用、あるいはマネーゲーム的感覚で短期利益追求型の投資家もおりますが、基本的に投資期間を限定されず自由に設計できるのです。

Next: アルゴ・高速取引の全盛時代に個人が取るべき戦略とは?



アルゴ・高速取引の全盛時代に個人が取るべき戦略とは?

株価は企業業績を反映するものです。しかしながら、株式市場は企業業績以外の要素、マクロ経済、金利動向、国際政治等々あらゆるものを映しながら変動します。業績以外の要素により大きく振られることが日常的に生ずるのです。

つまり株価の動きは短期的に予測不可能な要素が不規則に来るため、業績の動きを忠実に捉えようとする際、保有期間を前提とした投資はそれだけ制約要因を背負った投資となります。

返済義務のある資金で株式投資をする場合を想定しましょう。返済期限内に成果が上がらなければ株式を売却し借金の返済をしなければなりません。返却後に株価が上昇することは十分に起こることなのです。

機関投資家、とくにヘッジファンドは常に投資期間を前提とした銘柄選択する環境に置かれているのです。

株式保有期間について個人投資家の保有期間は何ら制約を持ちません。つまり、保有期間にフリーハンドである個人投資家は企業業績に最も接近する形で株価を評価できる立場にあるのです。下落したら買い増しできるぐらいの感覚で中長期投資を行うことが、結果として成果に繋がる可能性が高いのです

じっくり投資は個人現物投資家の最大の強みであることを認識することが成功への近道です。

筆者プロフィール:若林利明
外資系機関投資家を中心に日本株のファンドマネージャーを歴任。現在は創価女子短期大学非常勤講師、NPO法人日本個人投資家協会協議会委員。世界の株式市場における東京市場の位置づけ、そこで大きな影響力を行使する外国人投資家の投資動向に精通する。著書:「資産運用のセンスのみがき方」(近代セールス社)など。

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投資の視点』(2015年10月6日号)より一部抜粋

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