今週は10/7(水)に日銀金融政策決定会合後の黒田総裁会見があり、10/8(木)には中国国慶節明けとFOMC議事要旨の発表があります。
マイナスに転じたCPIや弱い日銀短観から、このところ急速に追加緩和への期待感が高まっており、今週は日銀会合が最も重要なイベントと言えます。また、先週の弱い雇用統計を受けたFOMCメンバーによる利上げ時期に関するコメントも要注意でしょう。
中国株は、休場中の先物市場を見る限りでは堅調なスタートをすると思われますが、依然として高水準の信用買い残が休み明けにどっと出てくることも考えられるので予断を許しません。(元ヘッジファンドE氏の投資情報)
市場の期待と裏腹に、日銀追加緩和なし+米年内利上げも?
【日銀】10月末ですら追加金融緩和の可能性は低い
黒田日銀総裁は否定しているものの、インフレターゲットの達成は困難なので、このところ追加緩和観測が出てきています。
特に、先々週の弱いCPIと先週発表の日銀短観の直後は追加緩和期待からマーケットは大幅に買われました。
今月は2回日銀政策決定会合があり、最初の日銀政策決定会合は今週7日に発表が行われます。
このところの記事で書いているように、弱い経済統計が出たのがごく最近なのでもう少し様子を見る必要があるのと、日米中央銀行で原油安の影響の判断が大きく異なるのは好ましくないと考えられるため、私は今週の追加緩和はないと見ています。
マーケットの期待はともかくもエコノミストなども私と同様の見方です。
したがって、今週の日銀政策決定会合で最も重要なのは、発表よりも会見での質疑応答で黒田日銀総裁がどのようなニュアンスで発言をするかだと思います。
政治サイドからの圧力もかかっているので、日銀が必要だと思って追加緩和をしても、「圧力に屈した」と取られてしまう可能性が高いうえに、事前に時期を言った政治家の宣伝に加担してしまいかねません。
これは中央銀行の信認低下につながるので、日銀関係者としてはなんとしても避けたいところでしょう。また、何度も書いているように、以下の点も早期の追加緩和に否定的な材料です。
- 昨年10末の追加緩和時の投票は4対3の薄氷の勝利だったので、これ以上の緩和は提案しても反対される可能性が高い
- この3ヶ月、木内委員の「昨年11月以降の緩和増額分は止めよう」という提案に対し同調者がもう1人以上いる
したがって、黒田日銀総裁が再度市場の騙まし討ちをしようとして日銀政策決定会合で追加緩和を提案しても、今回は否決される可能性の方が高いと思われます。
このように考えると、私は10月末の追加緩和の可能性も低いと考えています。
ただ、期待が出るほど弱いインフレ率であるのも事実ですし、複数の経済指標が明らかに減速基調になっているのも事実なので、今後は上方リスクとしての追加緩和の可能性は従来以上に慎重に検討していきます。
以上を整理すると、今週の中央銀行がらみでは、日銀政策決定会合と米雇用統計を受けた要人発言が最重要です。
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【FRB】雇用統計が弱くても依然として年内利上げの可能性は高い
FRB政策の今後のポイントは利上げ時期と債券回収時期です。
本格的なマネー逆流は保有債券売却(市中からドル札を吸い上げる)でFRBのB/Sを削減し始める再来年以降ですが、利上げをするだけで対外ドル資産が米国に還流するので、グローバルのドル過剰流動性は減少します。
リーマンショック以降長く続いた緩和を引き締め転じるために、FRBは文言を少しずつ変更し慎重に利上げに向けた地ならしを進めてきました。
・ステップ1(~2014年11月)「相当な期間ゼロ金利を維持」
・ステップ2(2014年12月~)「相当な期間」と「辛抱強くなれる」の併用
・ステップ3(2015年1月~)「辛抱強くなれる」
・ステップ4(2014年3月)「辛抱強くなれる」を削除
・ステップ5 利上げが適切かどうかについて毎回議論 → 今年5月から今にいたるまで
・ステップ6 利上げ決定
今は、毎回の開合でいつ利上げがあってもおかしくない状態が続いています。現時点で、FRBが考えている利上げ判断のポイントは以下の点です。
- 労働指標の改善が続く
- インフレ率が2%程度まで上昇
- 以上の事象を確認後に利上げ
インフレ率の判断材料として重要な個人消費支出(対前年同期比)は現在1%程度です。現在は原油安が足を引っ張っているために、前年同期での原油安の影響が消えるまではインフレ率の上昇は見込みにくいです。
しかし、現在の水準が続いたとしても、年内には原油安の影響は消えますので、年内にインフレ率は急加速する可能性が出てきました。このため先月のFOMC後にもイエレンFRB議長は改めて年内利上げが妥当と発言していますし、FOMCメンバーの過半が年内利上げを支持していると発言しています。
また、先週は複数要人が年内利上げに肯定的な発言をしています。
特にウィリアムズ総裁は中立派ながら、早期利上げをしないと悪影響が出るような発言をしています。
肝心の労働環境については、先月FOMCでも「ほぼ完全雇用」という見方をしていたので、今の懸念は外部環境(要するに中国)による輸入物価安(資源&原油安)のせいでインフレ率が押し下げられている点だけが利上げ見送りの根拠になっています。
したがって、単月の雇用統計が弱いくらいでは年内利上げの見方に変化はないと思われます。
- 第1回目 12月FOMC(可能性90%)
- 第2回目 3月FOMC以降
私の利上げ時期と幅は先週と変更はありません。
もし年内に米利上げがなければ?
年内利上げがないときの世界観は、中国株が2000ポイント程度まで下落するとか、中国発の世界経済減速の恐怖が巷間に広く知れ渡り新興国を始めとする世界的な市場が混乱を生じる事態です。
つまり、このくらい酷い状況になると利上げは先送りするでしょうが、そうでない限りは12月に利上げをすることになると思われます(ここで重要なのは、利上げをすることで、上のような世界観になる可能性も高いので、順番がどうであれ、マネー引き締めと中国バブル崩壊が同時進行している以上、それなりの規模の株価調整は避けられないということです)。
しかし、先週金曜の米国株は、弱い雇用統計を受け「年内利上げが遠のいた」という楽観的な見方で大幅高になりました。もし、雇用統計でもFOMCメンバーの見方に変化がないのでしたら、FRBと市場参加者の利上げ時期に対して致命的な体感温度差が生じてしまっていることになります。
これは永遠に差が開いたままではなく、決定をするサイド(つまりFOMC)の見方に収斂していきます。したがって、マーケットは楽観に走りやすいのですが、強い経済指標や、あらためて年内利上げを支持する要人発言などが出ると、容易に楽観は慎重に変わってしまうのです。
このため、今週FOMC関係で最重要なのは、先週の雇用統計を受けての利上げ時期に対する要人発言です。
【欧州ECB】今週、大きな動きはない見込み
3月の量的緩和決定以降、ECB発でマーケットが動いたのは、5月の国債ボラティリティ容認発言だけでした。
ボラティリティ拡大を容認するということは、従来思われていたほど安定的に国債を買い続けない可能性を示唆したのと同じことになるために、5月から6月にかけ欧州国債は売られ、擬似的に「緩和スピードが減速した」ようなことになったのですが、これはようやく収まってきました。
9月のECB理事会で、現行の緩和プログラムが終了する来年秋以降も緩和を続ける可能性が高いと言及したことで、マーケットは一時的に追加緩和期待が醸成されましたが、現行緩和額を拡大させるわけではないので追加緩和期待は一時的に終わりました。
今週、ECB発で大きなニュースはないと思われます。
『元ヘッジファンドE氏の投資情報』(2015年10月5日号)より一部抜粋、再構成
※太字はMONEY VOICE編集部による
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