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「東京ガールズコレクション」の商標も取得。DLE株主総会レポート=公認会計士・平林亮子

映画館に行くと、観覧前の注意事項を説明するアニメが放映されたりしますよね。その中で、軍隊の隊長風の男性、赤いマスクの少年、白衣を着たクマなどが出てくるシリーズを見たことのある人もいるのではないでしょうか。そのアニメというかキャラクターのタイトルは、秘密結社「鷹の爪」。その秘密結社「鷹の爪」を制作している企業が、今回取り上げる株式会社DLEです(公認会計士・平林亮子)

新たな挑戦も掲げるDLEの株主総会に出席

DLEが展開する「ファスト・エンタテインメント」とは?

DLEは創業14年、上場2年目に突入したばかりのベンチャー企業。プロデューサーである社長と、クリエイターである取締役がタッグを組んだ、新しい形のエンターテインメント企業です。DLEのウェブサイトの沿革に記載されていた言葉を借りると、「ファスト・エンタテインメント事業」を展開する企業。ファストフード、ファストファッションに次ぐ、ファストエンタテインメントというわけです。

取締役の小野亮氏は、フロッグマンというお名前で有名なクリエイター。鷹の爪を生み出した方で、アニメの画像製作から声優まで、すべて一人で作品を作り上げることのできる天才です。社内のクリエーターが、短期間に、低コストで、キャラクターやアニメを制作するファストエンタテインメントという企業だというわけ。

社長の椎木隆太氏は、ソニー出身のプロデューサー。大企業とのライセンス契約を成功させるなど、凄腕のビジネスマンなのですが、そういう切れ者っぽい雰囲気がまったくない方でした。「ほわっとしたお兄さん」です。ちょっと長めの髪ととてもやさしい雰囲気の笑顔で、音楽家のような外見でした。トコトンやさしくて、芯が強く、芯が強いという点でかなり頑固。私の勝手なプロファイリングはこんな感じです。

お二人のこれまでのご経歴や業績を考えると、良くも悪くも、椎木社長とフロッグマンで成り立っている企業なのだと思われます。しかも、ファストエンタテインメント事業は、「当たるか、当たらないか」が業績に与える影響も大きい。こうした状況の中で、継続的なヒット作を生み出せるのか。大ヒットアニメでありキャラクターでもある鷹の爪が10周年を迎える来年にかけて、DLEの大きな転換点になる気がします。

エンタメ企業らしく遊び心で溢れる株主総会

さて、そんなDLEの株主総会ですから、遊び心いっぱい!まず、会場は、小さなホール。いきいきプラザ一番町という、千代田区の施設で、実際の運営は、千代田区から指定された社会福祉法人が担っています。麹町駅から歩いて5分とかからないところに位置するその施設は、地下にホール、最上階にプール、4階から6階には、特別養護老人ホームが入っています。こんな都会のど真ん中の一等地に、特別養護老人ホームがあるなんて驚きです。

個室、2人部屋、4人部屋まであって、定員82人。ちなみに、私が役員を務める特別養護老人ホームは定員110名ですが、場所は横浜市保土ヶ谷区。いきいきプラザ一番町は、その名の通り一番町にありますから、その割にはそこそこの規模であると思います。

そんな総合福祉施設の地下1階にある、100名分ほどのシートが常設されているシアターのような「カスケードホール」がDLEの株主総会の会場でした。お芝居やコンサートなどにも使えるような場所で株主総会。こういう会場での株主総会は、ビックカメラと野村リートに続き、私は3回目でした。

会場に入ると、DLEのアニメーションがスクリーンに映し出されていました。こうした映像を見られるのはエンタテインメント企業ならではの楽しみですね。

余談ですが、このカスケードホール、営利目的には利用できないなど、公営の施設ならではの制限はありますが、1日利用(9時から22時)しても66000円!リーズナブル!!思わず「弊社も何かのイベントで使おう!」と、色々企画を考えてしまった私です。

そんな会場を、椎木社長の穏やかな声が包み込み、株主総会は静かに進んでいきます。声質もお話をする口調も心地よく、優しいお人柄が良く伝わってきました。

業績報告などはナレーション付きの映像で行われましたが、ここはさすがDLE、鷹の爪のキャラクターが、画面に登場し、ナビゲーターとなって報告をしてくれました。

ちなみに、鷹の爪のキャラクターの声は、基本的に、すべてフロッグマンさんが担当(女性キャラの声も(笑))。このナレーションを、取締役席に座っているフロッグマンさんが、スタジオにこもってレコーディングしていたかと思うと、なぜだか心がほっこりしました。

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経営陣も個性的。一度見たら忘れられない顔ぶれ

取締役は、みなさんとても個性的でした。たとえば、社長の椎木さんは、何かの折に「私のように、英語もペラペラで、海外経験も豊富な人間が、日本の面白いコンテンツを持って海外に戦いを挑むというのは、他にはなかなかないことだと思うので……」という趣旨の発言をなさいました。繰り返しになりますが、椎木社長は、「ほわっ」とした雰囲気です。見た目は全然ぎらぎらしていないし、パワフルなイメージでもない。それなのに淡々とした口調で、自分の強みを語っていくのです。すごいギャップを感じました。やっぱり創業社長さんって面白い!

フロッグマンさんは言うまでもなく、これまた、面白い。株主からの「天才バカボンの制作費や興行収入は?」という質問に対して、「金額については言えないが、バカボンは本当に良い出来だった。自分の中で、これまでで最も良い出来の作品だったと自負している。バカボンのパパの声も担当したが、バカボンの権利者からも好評価だった。話題にもなって、マスコミにも取り上げられ、マーケティングも成功だった。でも、映画館に足を運んでもらえなかった」という趣旨の回答が。

クリエーターとしての判断と、経営者としての判断が入り混じっていて、面白いですよね。ちなみに、このバカボンというのは、天才バカボンの長編映画のこと。「フランダースの犬」に登場するネロとパトラッシュがなぜか「悪の手先」として登場するというもので、これにバカボン一家が立ち向かうというストーリーだったそうです。

取締役でCFOの川島崇氏も、こうした中でお仕事をされているのですから、きっと面白い人物なのだと思います。公認会計士の方ですから、いつかお会いできる機会が来ることを待ちたいと思います。株主からの「業績予測に幅がありすぎる」という質問に、川島CFOは「東京ガールズコレクション次第であり、まったく初めての取組であるため、予測がたたない」と答えていました。

「予測がたたないビジネスをするというのは上場企業としては無謀では?」という質問も出ましたが、女性ファッションなどのコンテンツを取り扱うのは椎木社長が昔から抱いてきた目標の1つなのだそう。

一見、無謀とも思える冒険を、ビジネスとして形にしていくのが、創業社長の腕の見せ所。椎木社長を始め、DLEがこれから、東京ガールズコレクションをどのようにビジネスとして仕立てていくのか、楽しみです。

社外取締役は2名。1名はダンカン・ビリング氏。大株主でもあるHasbroの副社長さんです。通訳さんがずっと横にいましたので、日本語はわからないのでしょうね。Hasbroはアメリカの玩具メーカー。もう、10年近く、DLEの社外取締役をしているそうです。

もう1名の社外取締役は、夏野剛氏。誰もが知るビジネスパーソンですね。現在、何社もの社外取締役を兼任されています。そのことについて株主から、「何社もの社外取締役をしていて、守秘義務を守れなくなることはないのか。競合する企業をいくつも掛け持ちしていて、葛藤はないのか?」という質問がありましたが、「2000年から複数の企業の取締役を務めている。その都度、良いと思うことを発言、提案している。守秘義務も問題ない」と、余裕な雰囲気で堂々とお答えになっていました。

見るからに、自分の意見をしっかりと発言する取締役ばかり。一度見たら忘れなさそうな方ばかりでした。

それにしても、こんな40代、50代の男性が、顔を合わせてキャラクタービジネスについて話し合いをしているシーンを思い浮かべると、ほほえましい気持ちになります……。

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8億円で取得した「東京ガールズコレクション」の商標。使い道は?

株主からの質問にもあった、東京ガールズコレクション(TOKYOGIRLS COLLECTION、以下「TGC」)。2005年にガールズウォーカーというサイトのイベントとして開催されたのが始まりです。10代、20代に絶大な人気を誇るモデルが登場する、日本発祥の大々的なファッションショーです。

パリコレなどと大きく異なるのは、モデルの洋服がリアルクローズであるということ。リアルクローズというのは、ファッションショー用の洋服ではなく日常的に着用できる、普通の店舗で売っている洋服のこと。

観客は一般の方で、ランウェイを歩くモデルさんの服を欲しいと思ったら、その場で携帯サイトから購入できるというシステムになっています。当初は、特別なイベントとして1回きりの開催の予定だったようですが、マスコミに大々的に取り上げられたり、莫大なお金が動いたりしたことから、その後も継続して開催されるようになりました。

2015年6月、DLEはこのTGCの商標権を8億円で購入しました。どうやら、莫大なお金の動くイベントであったために、利権がいろいろややこしくなり、TGCの様々な権利が切り売りされ、商標権については、ファンドが引き取った後、最終的にDLEが手に入れるという結末になったようです。

商標権とは、登録した名称やロゴマークを独占的に使用できる権利。書籍に使う場合、衣料に使う場合など、用途区分ごとに権利を登録しなくてはなりません。DLEが手に入れた商標権を調べてみると、貴金属、キーホルダーなどのアクセサリ、カバン、衣料品、広告、セミナーや研修会、ファッション情報の提供、飲食料品、マニキュア、メガネ、敷物、おもちゃなど、あらゆる場面に使う権利を持っているようですね。つまり、DLEの許可なしに、「TOKYO GIRLS COLLECTION」という言葉を使えないということです。

「TOKYO GIRLS COLLECTION」の認知度を考えると、この名前を使う権利を持っていることは、大変な財産。とはいえ、8億円の投資です。10年で回収するとしても、8千万円の利益が必要。ということは、ざっと計算すると、税引前で1億2千万円くらいの利益は必要。ただ、現代の経済環境において、10年なんて悠長なことは言っていられないでしょうから、3年くらいで回収し、そこから東京オリンピックに向けて大きく利益を出していく、くらいのつもりでいるのではないでしょうか。

ただ、DLEは売上20億円、利益2億円の企業。大きな投資であることは間違いありません。

TGCは、既に世界的にも認知度の高いイベントでありながら、これまでの運営では、マネタイズがあまりうまく行かなかったという噂を聞いたことがあります。

コンテンツの使い方を熟知したDLEが、この商標をどのように使っていくのか。今後がとても楽しみです。

【関連】新生・村上ファンド「C&I」が気づかせた“新陳代謝”の重要性

『平林亮子の晴れ時々株主総会』vol.31(2015年10月5日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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