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日経平均急落の底は1万8,360円か。2019年以降、上昇へと向かう条件と読み筋=伊藤智洋

大きく下げている日米株価。日経平均の下値目安は1万8,360円前後が挙げられます。そこまで下げるなら来年の早い段階で2万4,448円を目指す動きが考えられます。(『少額投資家のための売買戦略』伊藤智洋)

※本記事は有料メルマガ『少額投資家のための売買戦略』2018年12月23日号を一部抜粋・再構成したものです。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にご購読をどうぞ。今月配信済みバックナンバーや本記事で割愛した全文(日経平均・NYダウの今後のシナリオ、予測の仕方)もすぐ読めます。

プロフィール:伊藤智洋(いとうとしひろ)
証券会社、商品先物調査会社のテクニカルアナリストを経て、1996年に投資情報サービス設立。株や商品先物への投資活動を通じて、テクニカル分析の有効性についての記事を執筆。MS-DOS時代からの徹底したデータ分析により、さまざまな投資対象の値動きの本質を暴く。『チャートの救急箱』(投資レーダー社)、『FX・株・先物チャートの新法則[パワートレンド編]』(東洋経済新報社)など著書多数。

難しくなる相場予測。来年以降、早い段階で2万4,448円を目指す?

「値動きから未来を予知できる」という考え

当メルマガが、まぐまぐ大賞2018「資産運用(予想的中)」部門1位になりました。ありがとうございます。実のところ、複雑な気持ちです。

今年は、日経平均先物で、長期的なシナリオを作るときの根拠があいまいになってしまいました。私は、チャートの動きによって、多少なりとも未来が予知できると信じてきました。値幅で利益を出す取引が完全なギャンブルではないと考えていたからこそ、予想屋という仕事に意味があると考えていました。大げさに言ってしまえば、値動きから未来を予知して、合法的なインサイダー情報を皆様に提供していると考えていました。

競艇場へ行くと、ボートやモーター、選手の状態、強さを比較して展開を考えて、当たり舟券の予想を100円で教えてくれる予想屋さんがいます。この人たちは、確率や表面的な特徴から予想を組み立てています。

私は、そこに選手の意思(同郷の先輩後輩、借金の有無、優出するための点数の貸し借り、過去の不自然な展開など)を考慮して、いくつかのレースに八百長があると想定して、八百長があるとするなら、このレースで結果がこうなるという予想をしてきました。八百長のないレースは、すべてギャンブルであって、未来を予知することなどできません。確率では、少額の投資家が大きな利益など得ることができないのです。

市場が存続する限り、儲け続けている主体がある

私の予測の根っ子にある部分は、資本主義市場である以上、利益を得られないものが消滅する、つまり、長く存続し続けているなら、そこには利益を得続けることのできる主体があるということです。

競馬、競艇などは、運営側が最初に25%を抜いてしまうので、そこに一方的な利益が生じています。先物市場では、場を仕切る胴元がいないのですから、投資したお金のやり取りの中で、必ず利益になる仕組みがどこかになければ、すべてが完全なギャンブルとなってしまいます。

それでは、大口の投資家がそこに参加する旨味がなくなり、出来高が減少して、上場廃止になってしまいます。先物市場の各銘柄が存在している理由は、利益になる仕組みがあるからです。その大本は、基軸通貨であるドルの増減によって、お金の動きをおおまかにコントロールできるということです。

投機的な資金を運用する側は、目先のやり取りを支配しているだけではなく、結果としてそうなってしまう資金移動の事情(前述したドルの増減による影響、金融・財政政策、経済活動の必然、ファンド等の事情など)を利用して、通常、あらわれてしまう価格の振れを増幅させています。

「高速道路の追い越し車線を自らが先頭に立ってスピード違反を犯すリスクを取らないが、追い越し車線の先頭車を煽り、速度を上げさせる側、値段を大きく動かしたい投機が確実にそこに存在している」という考え方が成立しているからこそ、値動きには、特定の部分で未来予知が含まれていると推測できるのです。

Next: なぜ上げ過ぎ・下げ過ぎが起こる? 今年の値動きで今後の見方が変わった…



市場参加者の共通認識がもたらす値動き

価格は、資金移動の事情から、どうしても上昇してしまうとき、上げ幅を拡大し、どうしても下げてしまうとき、下げ幅を拡大します。価格が上昇した後に下降の動きが必然としてあらわれるので、下げの動きは、投機が自ら作り出すことができます。

しかし、長く値幅の伴った上昇の動きは、明確な理由があり、多くの市場参加者の共通の認識があるからこそあらわれます。誰かの思惑だけで、長く値幅の大きな上昇の流れなど作り出すことはできません。

下げやすい時期に下値堅く推移して、その後、上げやすい時期へ移行する過程で高値を更新する動きがあれば、それは、当然、その後の上げやすい時期に、以前の高値を大きく上回る上げ余地があるという多くの市場参加者の共通の認識があるからこそ、あらわれている動きであると推測できます。

日経平均株価が9月から10月にかけて本年の最高値を更新する動きは、少なくとも年末へ向けて、下げ難い状況があることを示唆しているからだと推測できます

年末へ向けて十分な下げ余地があるなら、7月~10月の下げやすい時期に、価格が十分に下げていて、高値を更新できるような値位置になっていないと考えられるからです。

2018年は大きな転換点となった

本年は、10月に年間の最高値を更新したにもかかわらず、年末の値位置が1月4日の始値2万3,073円を大きく割れて、今年が弱気に推移する年になりました。

たったこれだけのことですが、来年以降、(半年程度の)長期的な視点から値幅で利益を得るためのポジションを持つことが難しくなります。

違いを説明する前に、基本になる考え方を2点おさらいしておきます。

それは、「価格が上げやすい時期に上げ幅を拡大して、下げやすい時期に下げ幅を拡大する」「長期の目標は人が作るものなので、小目標をクリアしながら積み上げてゆくことで達成することができる。したがって、長期シナリオは、日柄を経過するごとに絞り込むことができて、そのシナリオの信頼性が高まってゆく」ということです。

2019年からの考え方は?

これまでと、今後の違いは以下のようなことが挙げられます。

今年までの考え方で、来年、弱気パターンの年として推測していた場合、6月以降、6月までの高値を基準にして積極的な売りを入れることができます。価格が下げやすい時期に下げ幅を拡大して、上げやすい時期に上げ幅を拡大するという考え方ですから、6月から9月までの下げやすい時期にそれまでの高値を更新する動きなどあらわれず、売り圧力が強まるという見方であって、過去にそうなってきたからです。

したがって、6月以降、上値の限界がはっきりした時点では、損切りの場所など気にせずに、6月から10月までの期間に下げるのをただ待っていればいいわけです。

来年以降の考え方は変わります。弱気に推移する年であっても、6月以降、一時的に上げが勢いづいて、年間の最高値を更新してしまう可能性があると考えておく必要が出てきます。その高値更新の動きは、そのまま年末へ向けて上昇の流れを作る動きになるのか、想定していた通り、弱気パターンの年となって、戻り高値を更新した後、大きく売られる展開になるのか、高値の突破によって判断することができません

長期シナリオは、上げやすい時期に上げ幅を拡大するか否か、下げやすい時期に下げ幅を拡大するか否かを見極めて、日柄を経過するごとに精度が高まるという考え方で組み立てています。だからこそ、積極的に仕掛けられる場所があるのです。しかし、来年以降、イレギュラーがあることを前提として、長期シナリオを考えてゆく必要が出てきます

日柄の経過は、予測に対する信頼の高まりへとつながるからこそ、一定の損失を受け入れて、その後も積極的に仕掛けることができますが、予測の信頼性がゆらぐ場合、今の損が次の利益への信頼につながらないことになります。この違いの恐ろしさが皆さんにはわかるでしょうか。

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2019年以降、早い段階で2万4,448円を目指す?

来年以降は、今年の値動きとの違いを確認しながら、どのような状況だと、本年のような値動きになるのかを確認してゆくことになります。

来年以降の展開を推測する上で、現時点で気になっているポイントは、10月2日に年間の最高値を更新した強さです。現在の下げの勢いと下げ幅の大きさを考えると、本年がダブル・トップの天井型を完成する動きとなって、10月の高値2万4,448円が天井となり、アベノミクスの終焉を示しているのではないかと見たくなる場面です。

値動きが多くの市場参加者の思惑のあらわれであって、未来を予知している部分があると考えてきた私としては、9月から10月にかけての上昇を無視できません。

これから上昇を開始するとはとても考えられませんが、来年以降、早い段階で2万4,448円を目指す動きがあらわれるのではないかと疑っています。そのチャンスがまったくないわけではありません。

2018年9月・10月の上昇が暗示するもの

12月に新刊『勝ち続ける投資家になるための 株価予測の技術[決定版]』を出しました。この93頁以降に書いたこと(当メルマガでも紹介しました)ですが、9月から翌年1月までの安値を2月に割り込んだ年は、政府・日銀が大規模な経済対策を実施、金融緩和を実施することで、年内に底値をつけて、1年以上継続する大幅な上昇の流れへ入っています。

日経平均株価日足

上図の実線で示した通り、10月以降の下げが5つの波のパターンになる場合、5波の終点をつける時期は、(2波と同程度の4波を経過した後の下げ場面のため)早くても2月以降になると推測できます。

本年は、4月に統一地方選、7月に参議院選挙、10月に消費税引き上げがあります。選挙に勝たなければいけない安倍首相が、1月にしょぼい2次補正で終わりということにはならないはずです。

日経平均株価は、2008年10月以降の長期の上昇局面が現在も継続しているのだとした場合、本年10月以降の下げが15年6月~16年6月までの下げ幅(6,088円幅)と同程度の値幅の調整で終わり、15年6月から次の安値までが上値、下値を切り上げるジグザグの動きを経過して、高値を大幅に上回る新たな上昇を開始するという見方ができます(下図参照)。

日経平均株価月足

その場合、現在の下げの下値の目安は、1万8,360円前後が挙げられます。2月以降、1万8,360円を下回った地点で押し目底をつける展開になるなら、その押し目が底値となって、新たな上昇を開始するかもしれません。

本年、9月・10月の上昇は、その可能性を暗示しているのではないでしょうか。

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※本記事は有料メルマガ『少額投資家のための売買戦略』2018年12月23日号を一部抜粋・再構成したものです。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にご購読をどうぞ。今月配信済みバックナンバーや本記事で割愛した全文(NY金の展望、日経平均の今後のシナリオ)もすぐ読めます。

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『少額投資家のための売買戦略』』(2018年12月23日号)より一部抜粋・再構成
※太字はMONEY VOICE編集部による

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