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安倍政権、絶望の「GDP600兆円」高齢者が低賃金で働かされる国へ=三橋貴明

安倍政権の新目標「名目GDP600兆円」の達成に向け、TPPや女性・高齢者の雇用促進などを軸としたGDP積み上げ策が11月4日の経済財政諮問会議で示されました。この内容について、作家の三橋貴明さんは「策にもなっていない策」と評価。「実際には、女性や高齢者を低賃金でも働かざるを得ない状況に追い込む政策が推進されることになる」と懸念を隠しません。

記事提供:『三橋貴明の「新」日本経済新聞』2015年11月6日号より
※本記事のタイトル・リード文・本文見出し・太字はMONEY VOICE編集部によるものです

安倍政権の「2020年GDP600兆円目標」は未達に終わった

「安倍総理、ご苦労様でした」

まさにオオカミ少年のごとく、「オオカミが来るぞーっ!!財政は破綻するぞーっ!」と、10年以上も嘘を叫び続け、財務省の御用学者として国民や政治家を煽り続けた、マクロ経済に無知な伊藤元重大先生らが主導している時点で、すでに2020年のGDP600兆円は絶望でございますね。

政府は4日、経済財政諮問会議(議長・安倍晋三首相)を開き、民間議員が「名目国内総生産(GDP)600兆円」達成に向けた積み上げ策を提示した。環太平洋パートナーシップ協定(TPP)を活用したインフラ輸出の増加や賃金の引き上げ、女性の雇用促進などでGDP(2014年度で491兆円)を約110兆円上積みし、20年度ごろに600兆円を達成すると説明。安倍首相は「緊急に実施すべき対応策を11月中にとりまとめてほしい」と指示した。

伊藤元重東大教授ら民間議員の提案によると、約110兆円のうち60兆円強は経済の実力を示す「潜在成長率」を現状の1%弱から2%程度に引き上げることで達成。残り50兆円弱は、物価や賃金の上昇などでGDPを底上げするとした。特に賃上げについては、消費拡大に向けて政府の名目成長率目標並みの3%の伸びが必要と強調した。<後略>
出典:経済財政諮問会議:GDP600兆円達成へ具体策 – 毎日新聞(2015/11/4)

安倍総理、ご苦労様でした。という感じです。

ちなみに、一応、経済財政諮問会議の策にもなっていない策について説明しておくと、600兆円達成のために必要な110兆円分の内訳は、

とのことでございます。実質GDP60兆円+物価上昇分50兆円で、名目GDP600兆円を達成するというわけです。

逆効果にしかならない「構造改革」が始まる

物価上昇分はともかく、実質GDP増大の手段が、今さら「潜在成長率の引き上げ」――。何十年間、同じ間違いを繰り返せばいいのでしょうか。

しかも、潜在成長率引上げの方法が、

と、徹底的に「構造改革」と「外需依存」というわけでございます。

何が悲しくて、完全雇用を達成しているわけでもない我が国で、強引に労働力供給を増やさなければならないのでしょうか(もちろん実質賃金を引き下げるためですが)。

2015年8月の労働力調査によると(就業状態別人口)、

と、男性の生産年齢人口(15-64歳)で「労働市場に参加している人(労働力人口)」に限ってすら、123万人もの「労働力」があるのです。生産年齢人口(男性)で見れば、706万人(!)です。

もちろん、生産年齢人口(男性)であっても、学生さんなどは労働市場に参加しませんが、それにしても100万人を超す生産年齢人口(男性)の潜在労働力が我が国に存在するのは、確固たる事実なのです。

それにも関わらず、なぜいきなり「女性」「高齢者」なのですか。賃金を引き下げたい、以外に何か理由があるなら、教えてほしいものです(ちなみに、三橋は女性や高齢者が働くことに反対しているわけではありませんので、念のため)。

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女性や高齢者が追い込まれる。低賃金で働くしかない未来

政府の財政出動を切っ掛けに、国内の需要を膨らませ、生産年齢人口の男性が全員働いても人手不足が続き、実質賃金が上がり続け、女性や高齢者も「豊かになる」ために働く環境を作るというならば分かります。

が、実際には配偶者控除廃止や、成年男子の賃金引き下げにより、女性や高齢者が低賃金でも働かざるを得ない状況に追い込む政策を推進するに決まっています。

増えない需要(=仕事)という環境下で、労働供給を無理矢理増やせば、実質賃金はさらに下がります。国民を貧困化させ、安い賃金でも働かざるを得ない状況に追い込むというわけです。

国民生活無視の法人税減税と規制緩和

また、内部留保がひたすら積み上がっている状況で、法人税を引き下げて何をしたいのか、さっぱり分かりません(いや、分かっていますが。利益を増やし、グローバル投資家の配当金や企業の自社株買いを増やしたいのです)。

もちろん、設備投資減税や地方移転減税を拡大するというならば分かります。とはいえ、現実には経済財政諮問会議の連中が主張しているのは、無条件の法人税減税です。

さらに、規制緩和で設備投資を増やすに至っては…。デフレで儲からない環境で、企業が設備投資を増やすはずがありません。もちろん、規制緩和で既存の所得のパイに新規参入し、別の国民の所得(付加価値)を奪う「レント・シーキング」をしたいというならば、話は別ですが。

TPPを活用して、インフラ輸出…。久しぶりに「orz」を使いたくなりました(編注:orzは人が四つん這いになってうなだれる様子を表現したアスキーアートの一種)。いったい、どこの国に、いくらのインフラを輸出するのでしょうか。インフラって、具体的に何ですか?

しかも、訪日旅行外国人依存。どこまで、自虐的なのでしょうか。

「日本経済は内需中心では成長できない」を疑え

結局、日本経済は「内需中心」「国民の所得中心」で成長できるとはまったく思っていない連中(あるいは思いたくない連中)が、政府の財政出動により需要を創出し、日本国民の所得を増やすことで、

インフレギャップ⇒生産性向上⇒国民の購買力上昇⇒インフレギャップ

という、正しい経済成長に背を向け、経済政策のグランドデザインを書くから、我が国の経済は長期低迷しているのです。

残念ながら、安倍政権の「2020年GDP600兆円目標」は、未達に終わりました。

伊藤元重ら、過去の日本をダメにしてきた御用学者たちが退場しない限り、日本経済の復活は極めて困難と断ぜざるを得ません。安倍政権は、このままでは時代に取り残された連中と手を携え、日本国を巻き込みながら沈んでいくことになるでしょう。

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