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“天命”を担う安倍首相。「日本会議」の隠されたアジェンダと解釈改憲

今回のテーマは、新興宗教「生長の家」にルーツを持つ右翼的政治運動団体で、安倍内閣をウラで操るとされる「日本会議」の隠されたアジェンダについてである。

いまやっと日本の主要なメディアでも「日本会議」の存在を取り上げるところが次第に増えてきているが、「日本会議」を詳しく知ることのできる本や記事はまだまだ少ない。いまのところ、ジャーナリストの菅野完氏による「草の根保守の蠢動」記事と、塚田穂高著「宗教と政治の転轍点(花伝社)」が入手可能な数少ない情報源だ。(未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ・高島康司)

安倍政権の道しるべ、国民が知るべき「日本会議」の行動計画

真の活動目標を示す内部資料『神国への構想』の発見

もちろん「日本会議」の最終目標は憲法改正による天皇制国家の復活である。しかしながら、憲法改正という手続きを経ることなく目標を実現する方途を示す文書が発見され、菅野氏のサイトで公開された。

ちなみに「日本会議」を実質的に運営しているのは、「生長の家」の創設者である谷口雅春氏の信奉者が集まった「日本青年協議会」である。会長の椛島有三氏は「日本会議」の事務局長を務めている。「日本会議」と「日本青年協議会」は一心同体の関係にある。

その谷口氏が1979年に「生長の家青年会」から発刊した内部資料『神国への構想』が、菅野氏によって発見された。

現行憲法解体の「天命」を担った安倍晋三

この資料には次のようにある。

占領憲法体制の解体は、何よりその成立の暴虐的過程を糾弾し、占領軍の強制々定のあり方が、大日本帝国憲法に於ける法的違反および、国際法違反であることももって正統憲法復元を克ち獲らなければならないが、そのためには復憲の大義に、自己生命を捨て得る内閣総理大臣の出現(中略)しなければならない

ちょっと読みにくい文章だが、要するに、「現行の日本国憲法はGHQが強制的に制定したものなので、国際法に違反している。だから絶対に改憲しなければならないが、そのためには自己の生命を捨てる覚悟のある総理が必要だ」ということだ。

この「復憲の大義に自己生命を捨て得る内閣総理大臣」として見られている存在こそ、「日本会議」が全面的に支持する安倍首相だということだ。「日本青年協議会」はこのように見ているに違いない。いわばこれは、安倍首相が天命を担っていると彼らは見ているのだろう。

特徴的な「憲法改正手続きの無視」

「日本会議」と「日本青年協議会」の目標を明確に示している箇所がある。以下である。

それ故、先ず、われらの今日的課題は(中略)、現占領憲法下に於いても可能な限りわが国を防衛する対策を樹て、これ以上失ってはならぬものを死守するために非常なる努力を為さねばならないということである。その第一が、反憲的解釈改憲の“たたかい”に他ならない

これも少し読みにくいが、「現行憲法に違反する解釈を行い、憲法を実質的に骨抜きにして改憲した状態にしてしまう」ということである。これを特に「国防」の分野で行うとしている。

周知のように憲法を改正するためには、衆参両院の3分の2の賛成と、国民投票における有効投票の過半数が必要になる。これは大変に高いハードルである。

「生長の家」創設者・谷口氏の文章を見ると、「現行憲法はそもそも国際法違反なので、憲法が定める改正の手続きは守る必要性はまったくない」とする理解が前提になっているように見える。恐らくそうだろう。そうでないと、「反憲的解釈改憲」などという言葉が使われるはずはない。

Next: これは日本会議と安倍政権の「改憲マニュアル」だ


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日本会議と安倍政権の「改憲マニュアル」

これはとんでもないことである。憲法改正の手続きのハードルが高いので、現行憲法を全否定し、憲法の解釈を変えることで改憲してしまうという姑息な方法だ。しかし、まさにこれにあたるのが、現在の「集団的自衛権」である。

周知のように「集団的自衛権」は、政府答弁によると、日本に対して直接の武力攻撃をしていない国に対して、防衛出動、武力行動をすることは法律上可能になり、さらになんと、日本に対する攻撃の意思がない国に対して、日本から攻撃する可能性を排除しないともしている。これは、「先制攻撃」を禁止した現行憲法の明白な違反である。

圧倒的に大多数の憲法学者が違憲としている「集団的自衛権」を強行採決で突破する安倍政権の手法は、まさに生長の家・谷口氏の前掲文章「反憲的解釈改憲」の手法そのものである。この文章こそ、「日本会議」と安倍政権の「改憲マニュアル」だと言ってもよいだろう。

「集団的自衛権」が抵抗なく可決されてしまうことで、この手法は憲法の「国防」のみならず他の分野にも適用され、憲法全体が実質的に骨抜きにされていってしまうことだろう。

日本会議と安倍政権が目指す「天皇制国家」は超階級社会

こうした「解釈改憲」の先に見えるものこそ、「天皇制国家」である。戦前の経験のない我々には、「天皇制国家」と言ってもすっきりとイメージできにくいかもしれない。しかし、現在「日本会議」と安倍政権が目指している「天皇制国家」とは、日本版の「超階級社会」のことでしかないはずだ。

このメルマガの読者であれば周知だろうが、いま先進国は成長の限界に突き当たりつつある。このまま行くと、経済危機と失業率の増大から国内の不満は爆発し、社会が不安定になる恐れがある。

そのため超富裕層と支配層は結託し、国民を徹底的に管理して不満を押さえ込み、彼らの既得権益が維持できる体制の構築を模索している。これは現在の階層間格差を固定することになるので、「超階級社会」と呼ぶことができるはずだ。

結局「天皇制国家」とは、戦前の支配層の末裔と現在の支配層、超富裕層、そして戦前を理想化する一部の宗教団体が既得権益を維持するための装置でしかないと言ってよいだろう。

今上天皇は護憲派か?

だがいま、「集団的自衛権」への抗議は全国的に拡大し、安倍政権の支持率も30%台に低落している(編注:本稿初出の2015年8月14日時点)。支持率の低落が今後も続くと、たとえ「集団的自衛権」が可決された後でも、「反憲的解釈改憲」による現行憲法の全面的な骨抜き化は難しくなるだろう。

さらに、安倍政権の戦前回帰の動きに明白な抗議の姿勢を鮮明にしているのが今上天皇である。主要メディアでは報道されない場合もあるが、今上天皇は憲法擁護を示唆する発言が多い。

もちろん、天皇は日本国の「象徴」であるので、政治的な発言は憲法上できない。しかし今上天皇は、憲法の枠内のギリギリのところで、そのような発言を明白にしている。

ところで、天皇は「内奏」という制度化された機会が与えられており、そこでは天皇自身の意見がやんわりと表明されているという。もともと「内奏」は、天皇がときの情勢を知り、世間を理解するための個人的な学習の場であった。

しかし「内奏」はそれにとどまらず、天皇の政治的な意見表明の場として利用され、その意見はときの政権の意思決定をも左右する大きな影響があるともされている。

Next: 米研究者「昭和天皇の政治的影響は明らか」では今上天皇は?


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米研究者「天皇が政治的発言を続けたことは明らか」

もちろん、「内奏」における天皇の政治的発言は絶対的に秘密であり、外部に漏れることはない。ケネス・ルオフの名著『国民の天皇』(岩波書店)は、昭和天皇の「内奏」とその影響について詳しく述べている。

たとえば1950年から53年まで続いた「朝鮮戦争」について以下のようにある。

天皇は「火は既に門前に迫っている」と考えていた。敗戦まで四十年間、日本の植民地だった朝鮮半島が共産化されれば、昭和天皇にとっても見過ごせない脅威となるはずだった(153ページ)

さらに北海道の防衛では次のようにある。

北海道北部はソ連から近距離にある。昭和天皇は長期間、東アジアの覇権をめぐって争ったソ連を危険な軍事上の脅威と見なしていた(155ページ)

そしてこの本では、「内奏」全体について次のようにまとめている。

天皇が政治的発言を続けたことは明らかである。共産党対策をとった方がいいとはっきり口にしているし、首相が選んだ閣僚についても疑問を呈した。側近の更迭にも反対した。日本が米国と同盟関係を結ぶことも望んだ。戦前における天皇の政治的関与は、戦後も継続した(157ページ)

反共」や「日米同盟」などは、実際に戦後日本が辿った方向である。この方向性の決定に天皇の非公式な発言が影響を及ぼした可能性は否定できないように思う。

ところで日本では、終始戦争に反対であったとする昭和天皇のイメージが定着している。ルオフは昭和天皇の戦前の「内奏」をまとめると、以下のように結論できるとしている。

さまざまな機会に昭和天皇が外国との開戦に留保を表明しているとき、最大の関心は日本が勝てるかどうかに向けられている。その上、日本を降伏に導く過程で昭和天皇がいちばん関心を持っていたのは、国体ないし万世一系の皇統の維持であって、これ以上犠牲を多くしないようできるだけ早く戦争を終わらせることではなかったのである(191ページ)

これは平和主義者としての昭和天皇のイメージとは掛け離れている。しかし、これが実態なのであろう。

今上天皇の「内奏」その内容は?

このように、「内奏」で行われる天皇の政治的な発言は、ときの政権に非公式に影響を与えるほどの力がある。では今上天皇の「内奏」はどうなのだろうか?

今上天皇も昭和天皇以上に頻繁に「内奏」を行っていることは知られている。このビデオの冒頭部分に今上天皇の「内奏」が出てくるのでぜひ見てほしい。

今上天皇が安倍首相から「内奏」を受けている状況が非常によく分かる。

今上天皇が「内奏」で何を発言しているかは秘密にされており、我々ではうかがい知ることはできない。だが、陛下の憲法擁護の姿勢を明確にしたこれまでの発言から、「内奏」でも安倍政権の戦前回帰的な政策に対して、突っ込んだ発言をしている可能性は否定できない。ぜひとも期待したい。

Next: ジム・ロジャーズも予期。日本滅亡と忍びよる「超階級社会」


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ジム・ロジャーズも予期。日本滅亡と忍びよる「超階級社会」

ところで、ちょっと話は変わるが、アメリカの著名な投資家、ジム・ロジャーズは雑誌『現代ビジネス』とのインタビューで次のように発言している。

株価が上がり、それに舞い上がる人々がいる一方で、人口減少に歯止めがかからず、借金は膨らむばかり。日本の若い人に言えることがあるとすれば、「外国語を覚え、日本株を持って、国外に逃げ出したほうがいい」ということですね。

いまから10年、20年経って日本人の皆さんは気づくでしょう。「安倍総理が日本を滅ぼした」と。

これは衝撃的な発言だが、このまま行くと10年や20年ではなく、下手をすると3年から5年で「安倍総理が日本を滅ぼした」ことがだれの目にも明らかになる時期が来るように筆者には思われて仕方がない。

いま「アベノミクス」で一見景気がよくなっているかのように見えるが、結局「アベノミクス」とは、岩盤規制で官僚の既得権益が守られた60年代製の古いポンコツ車を、燃料を満タンにして最高スピードで突っ走っているようなものである。

いずれ、限界にぶち当たり、車体が大破することは目に見えている。

この「大破」の後にやって来るのが、「超階級社会」なのか、または中央集権と官僚制の解体による「分散型経済」かの選択である。

低成長でも持続可能な「分散型経済」のほうが、我々のような一般人にとってはよいに決まっている。

しかし、いま本気で安倍政権に抵抗しないと、戦前の支配層の末裔と超富裕層、そして一部の右翼的な宗教教団が結託した「超階級社会」に向かって突き進んで行くことになる。

この動きについては継続して伝えるつもりである。

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未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ』(2015年8月14日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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