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From キッコーマン CMギャラリー

「醤油のキッコーマン」が外国人にとって特別な日本株になった理由=若林利明

かつてディフェンシブ銘柄の代表格だった「ケチャップのカゴメ」と「醤油のキッコーマン」。しかしここ数年でキッコーマンの株価は急速に上昇し、ハイテク株以上のPER水準まで買い進まれました。元日本株ファンドマネージャーの若林利明氏は、この躍進の背景には「外国人投資家から見た企業価値の見え方の変化」があると指摘します。

別々の道を歩み始めた、似たもの同士のディフェンシブ銘柄

外国人にとって特別な日本株になったキッコーマン

カゴメ<2811>とキッコーマン<2801>はかつて、典型的な国内消費関連銘柄として位置付けされてきました。

カゴメは数ヶ月前にも取り上げましたが、防衛的銘柄(ディフェンシブ銘柄)として、市場全体の下落時には相対的に良い動きが期待できる銘柄の代表例です。2008年から2012年までカゴメはその動きを示した典型的な銘柄として紹介しました。

キッコーマンも同じようなイメージを持つ銘柄として2008年以降機能してきたようですが、ここ数年、急速に株価は上昇、カゴメと同一に語ることのできない銘柄に変身しました。

その変化の様子を見るために日経平均の2005年6月末を1とし、その後の半年ごとの月末株価をプロットしました。同時に、外国人投資家の持ち株比率も見てみましょう。アベノミクス登場以来、キッコーマンの株価は大変身しています。

日経平均、カゴメ、キッコーマンの株価の推移(半期末ベース、2005.6=1) ―2005.6~2015.10―

外国人投資家の持ち株比率

醤油ビジネスが海外で好調、新たな「消費関連国際株」に

カゴメの場合、防衛的銘柄として、さらにトマトケチャップは元来外国からきた食品ということもあり外国人投資家が積極的に買うような銘柄ではありませんでした。2012年の外国人投資家保有比率5.6%はそれを反映した結果です。

2012年秋以降の市場急上昇期には成長指向の銘柄への乗り換えもあり早速売りの対象となり、現在では2.8%とさらに少なくなりました。

いっぽうキッコーマンの場合、もともと醤油という外国にはないユニークな食品を製造するメーカーとして一定の人気があり、トマトケチャップのカゴメより高い外国人投資家保有比率でした。2012年段階で外国人保有比率は14.1%でした。

2013年に市場が急上昇すると、当社株を防衛的銘柄として2008年以降に保有していた外国人投資家は、いわゆる乗り換えの為、売りを積極的に出しました。しかし、その段階でカゴメとはまったく異なる動きを示し始めたのです。

この売りを吸収し、値を上げながら買い進んだのは、やはり外国人投資家です。国内消費関連銘柄・防衛的銘柄から、新たな消費関連国際株とも言えるイメージチェンジが行われることになりました。

醤油ビジネスの海外展開を積極的に取り組む中で、円安による輸出環境の好転、また日本の食文化の浸透等が広く投資家の関心を呼ぶことになり、国内消費関連銘柄から脱皮して新たな株価形成へと動き始めました。

Next: ハイテク株以上の期待感!日本発「新消費関連国際株」の条件


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ハイテク株以上に買われたキッコーマン

2013年の東京市場全体は57%と大きく上昇しましたが、2014年、勢いは急速に鈍化し市場全体では8%の上昇に留まりました。しかし、キッコーマンは2013年、61%も上昇した後、2014年さらに49%も上昇しました。

ハイテク企業並みのPER水準まで買い進まれたのです。利益の伸びの中心は、日本以外の地域における醤油ビジネスの貢献です。海外における和食文化の普及は、世界遺産登録もあり急速に高まっています。

2020年のオリンピックもあり、また最近の海外からの観光客急増もあり、この動きがさらに加速しているようです。

この社会的背景の盛り上がりを織り込む形で、また当社の実際の経営上の実績も好調であり、日本独自の発酵技術をベースとした醤油の魅力を代弁するキッコーマン株は特別な日本株として外国人投資家に映るようです。30倍以上のPERはハイテク株以上の買われ方です。

キッコーマン以外には?「新消費関連国際株」の条件

いっぽう醤油以外の日用品の分野でも、同じ類の新消費関連国際株ともいえる銘柄群があります。花王<4452>は日用品で日本の消費者に浸透した企業ですが、その日本国内で確立した商品の信用をもって海外へと進出しました。

とくに、アジア地域の発展途上国における消費者は日本の日用品に対する評価が高く、現地では大変人気があります。この需要を上手く取り込んで業績を浮上させている企業の代表例なのです。

花王もかつては国内関連企業として位置付けされ、比較的安いPERの株価であったことを考えると大変身の銘柄と言えます。あらためて消費関連国際株として花王、キッコーマンに共通している内容を挙げると次の点になります。

これら銘柄は日本発であり、ハイテク分野でない消費関連国際株として高い評価を今後も持続する可能性があります。また同種の内容、あるいはその事業資質を持った銘柄群が今後も各種分野で登場してくる可能性があります。新たなジャンルの定着です。

筆者プロフィール:若林利明
外資系機関投資家を中心に日本株のファンドマネージャーを歴任。現在は創価女子短期大学非常勤講師、NPO法人日本個人投資家協会協議会委員。世界の株式市場における東京市場の位置づけ、そこで大きな影響力を行使する外国人投資家の投資動向に精通する。著書:「資産運用のセンスのみがき方」(近代セールス社)など。

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投資の視点』(2015年11月6日号)より一部抜粋

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