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円が信任を失ったとき日本の財政は破綻する。その行方を左右する「市場」の正体とは=田中徹郎

前回、日本の財政破綻を左右するのは「市場」であるという話をしました。その市場とは、いったい何なのでしょうか?今回はそれについて詳しく紐解きます。(『一緒に歩もう!小富豪への道』田中徹郎)

プロフィール:田中徹郎(たなか てつろう)
株式会社銀座なみきFP事務所代表、ファイナンシャルプランナー、認定テクニカルアナリスト。1961年神戸生まれ。神戸大学経営学部卒業後、三洋電機入社。本社財務部勤務を経て、1990年ソニー入社。主にマーケティング畑を歩む。2004年に同社退社後、ソニー生命を経て独立。

日本の財政が正常なのか異常なのか、それを決めるのは市場

日本円はいまのところ、市場から信任されている

前回のメルマガで、以下のような話しを致しました。

『通貨の信任は、中央銀行によって通貨供給量が適切に管理されていれば維持できる(注)』という考えには僕も賛同しますが、逆にもし通貨供給量が適切に管理できないほど大量の国債を、日銀が購入を余儀なくされたらどうなるでしょう。

注)野口旭著「アベノミクスが変えた日本経済」より一部抜粋、筆者加筆

さきほども申しましたが、何が適切で何が異常なのかを決めるのは、エコノミストや学者ではなく『市場』です。
※参考:日本の財政はほんとうに破綻するのか?正常かそうでないかは市場が決める=田中徹郎

上記で僕は『市場』という言葉を使い、通貨の信任は『市場』の判断にかかっていると書きました。では、その『市場』とはいったい何なのでしょう。

今回はその点についてさらに掘り下げてみたいと思います。

『市場』が日銀や政府の政策を適切だと考えれば、通貨すなわち日本円の信任は維持されます。

逆に『市場』が適切だと考えなければ、日本円への信任は維持されません。つまり「円の暴落⇒ハイパーインフレ⇒財政破綻」という、よく煽り系の方々がおっしゃるシナリオです。ですからこの、『市場』とはいったい何なのかという論点は、とても重要だと思うわけです。

では改めて…『市場』とはいったい何なのでしょうか。

年金やファンドなど、大きなおカネを動かす機関投資家が市場の構成要素であることは間違いありませんが、それだけではあまりに浅すぎると思います。

なぜなら機関投資家のマネーをたどってゆけば、その源流は年金生活者や投資信託の保有者、あるいは生命保険などを通して私たち個人に行き着くからです。

リッチな人、そこそこのおカネを持っている人、日々の生活でカツカツな人…保有資産の額は様々ですが、それを含めて機関投資家マネーは、すべて私たち生活者に行き着くわけです。

さらに、例えばスーパーマーケットで野菜や靴を買う、あるときは銀行にいって預金をしたり、少し気の利いた人なら投信を買ったり株の売買をする、そしてたまに外貨に両替し海外に送金する、こうやって私たち一人ひとりが生活の中で日本円を使い、日々直接おカネに触れているわけです。

そのような観点でいえば、私たち一人ひとりの集合体こそが、『市場』そのものだといってよいでしょう。

ですから私たち生活者の集合体が日銀や政府の政策を信任する限り、通貨は通貨であり続け、ハイパーインフレも財政破綻もないということです。

逆に私たちの信任が失われた時点で、即通貨は元の紙やデータに戻ってしまうといえるでしょう。

Next: この先、日本円の信任が失われる可能性は?



一方向に流されやすい日本人、信任が低下すれば…

今のところ財政破綻を懸念するのはほんの一部の人たちで、逆に昨今の日本国債の金利の低さなど見ていますと、日本円に対する市場の信任は盤石のようにすら見えます。

政府が発行してきた国債のうち、過半を日銀が保有するという現状を加味しても、いまのところ日本円に対する市場の信任は、揺らいでいないといってよいでしょう。

ただしそのような現状に、あぐらをかいていてよいとも思えません。

日本人は一方行に流れやすい国民性を持っているように見えますので、いったん通貨に対する信認が低下すれば、一気に市場に動揺が伝染するという懸念は、持っておくべきではないでしょうか。それが危機管理だと思います。

経済学が自然科学と違う点は、人間の心理によって結果が、いかようにも変わるという点ではないでしょうか。

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一緒に歩もう!小富豪への道』(2019年2月1日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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