グローバルマーケット、特に米国株式市場では、むちゃくちゃ強気が蘇っています。「2020年景気後退」「2019年バブル崩壊」説が大きく後退しているのです。(『藤井まり子の資産形成プレミアム・レポート』藤井まり子)
※本記事は有料メルマガ『藤井まり子の資産形成プレミアム・レポート』2019年2月5日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にご購読をどうぞ。当月配信済みのバックナンバーもすぐ読めます。
シーゲル博士「2019年の米国株は10~20%の上昇」と上方修正
アメリカ株式市場では既に強気が蘇っている!
グローバルマーケット、特にアメリカ株式市場では、既にむちゃくちゃ強気が蘇っています。
昨年2018年秋から12月にかけて、「アメリカ株式市場はバブル崩壊」なんて言ってた人は誰でしょう?投資銀行では、モルガンスタンレーが弱気(=アメリカのバブル崩壊)の論陣を張っていたような記憶があります。日本国内では、日経新聞さんがじっくり1年くらい時間をかけて、極度の弱気の論陣を張っていたような記憶があります。経論家では山崎元氏、学者さんではアンチリフレ派の小幡績氏などが、弱気派の筆頭でしたね…。
彼ら「2018年から2019年にはバブル崩壊」派の論陣の中身は、
・イールドカーブがフラット化している
・アメリカの失業率が3%台にまで下がったら、アメリカの景気後退は近い
などと、危機前の高インフレ時代に使い古された旧態依然の経験則で弱気の論陣を張っていました。
バカを言ってはいけません!
サブプライム危機後の今は、アメリカでもユーロ圏でも(もちろんこの日本でも)、「多くは望まないけれども、せめて日本経済のようなデフレやディスインフレ状態に陥るのを回避して、2%前後のインフレ率を長期間維持してゆく」ということが、最優先課題になっているんです。
「労働分配率の低下」「格差の拡大」が深刻な問題に
危機「前」ならば、(日本を除けば)世界経済では2%インフレはらくらく達成できました。ところが、危機「後」は、その2%もの比較的低めのインフレ率でさえ、あのアメリカでも達成し続けることが危うくなりかけているのです。
しかも、あの中国は2011年からず〜っと経済のソフトランディングに四苦八苦し続けていて、周期的に世界中に「デフレ圧力」をまき散らし続けているんです。
「トランプの大型減税がノイズ」になって分かりにくくなっていますが、FRBもECBもそして日銀も「金融緩和の継続」のほうが長くなってしまいがちなんです。
しかも、今は、賃金上昇率がグローバル規模で安定し過ぎていて、なかなか上昇しない状態。IT化やロボット化やAI化やグローバリゼーションが賃金上昇率に歯止めをかけています。
直近では、優良企業でさえも渋ちんになってきて(アマゾンなんかがその代表例ですね)、いくらバカスカ稼いでも単純労働者の賃金を上げなくなっているんです。労働分配率が下がっているんです(悲しいことに、この労働分配率の低下は株式市場にとっては朗報です)。
マクロ的には、労働者が二極分解してしまって、中間層がどんどん下層へ落ちて行ってしまって、グローバル規模で高い成長率を維持できなくなってしまっています。格差が拡大しているんです。
ですから、アメリカ政治でもヨーロッパ政治でも「ポピュリズムのうねり」がどんどん大きくなっていっているんです。
2016年にはイギリスでは国民投票でブレグジットが選択されて、トランプ政権の誕生を許してしまいました。2018年にはドイツではメルケルが失脚、フランスではパリが燃え、ヨーロッパ各地で極左・極右政党が躍進しているわけです。
この「労働分配率の低下」「格差の拡大」は本当に深刻な問題です。
こういう時代こそは政治家が頑張って、せめて日本並みくらいには、税制を「中間層に手厚く行き渡るようにする」流れが欧米でもぜひとも必要なんですが、
アメリカっていう国はどうしようもないですね…。
あのアメリカでは、トランプ大統領の「お金持ちと大企業に超甘の大型減税」が成立して、労働者階級がトランプ大統領にすっかり騙されてしまっているわけです…。
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「2020年景気後退」「2019年バブル崩壊」説は大きく後退へ
話をもとに戻しましょう。こういった「インフレ率」が低い時代は、昨年12月からお伝えしておりますように、1970年代から2008年までの「高インフレ時代のイールドカーブの経験則」では将来は予測できません(きっぱり)。
さらには、昨年夏以来ずっとお伝えしておりますように1970年代から2008年までの「高インフレ時代のフィリップス曲線の経験則」では、将来は予測できません(きっぱり)。
あのアメリカでも、失業率が下がっても、「将来不安」を理由に、あるいは「長生き時代の生きがい」を求めて、高齢者を中心に再び労働市場に戻ってくる人々が増えています。かくして失業率がどんどん低下して「人手不足」になっても、続々と参入する労働者が増えるので、労働市場がひっ迫しません。労働市場がひっ迫しないので、賃金がたいして上昇しません。
ですから、あのアメリカでも、失業率が3%台に下がっても賃金上昇率が勢いよく上昇しないので、インフレは落ち着いたままです。すなわち、「従来型のフィリップ曲線の理論」が通用しなくなっているのです。
昨年夏からいや、1年以上前から繰り返しお伝えしておりましたように、
・2019年1月にはパウエルFRBは利上げを先送り
・2019年1月にはパウエルFRB議長は金融緩和策へと大転換
となったわけです。
ただし、これには大前提があります。アメリカの長期金利が上昇しないことです。
かくして、モルガンスタンレーや日経新聞さんや一部の識者の方々が声高に唱えていた「2020年のアメリカ経済の景気後退入り」説や「2019年のバブル崩壊」説の可能性は、目下のところ、大きく後退しています。
シーゲル博士「2019年の米国株式市場は10~20%の上昇」
ジェレミー・シーゲル博士もアメリカ株式市場について強気を強めています(ちなみに、ロバート・シラー博士も、JPモルガンをはじめとする投資銀行たちも、一斉に強気へと転じています)。
昨年2018年末には、シーゲル博士は、他の強気派の投資銀行やシンクタンクたちと同様に、「2019年のアメリカ株式市場は5%〜15%上昇する」と予測していました。
しかし、2月1日発表の「絶妙とも言えるアメリカの1月の雇用統計」を受けて、シーゲル博士はこの予想を上方修正します。同じく、2月1日の雇用統計を受けて、JPモルガンも「アメリカ株式市場は2018年の最高値を超える可能性が出てきた」と予測を修正しています。
では、その「1月の雇用統計」の中身はどんなだったのでしょうか?
シーゲル博士曰く、
- 目下のところ、最大のリスクは、「インフレが予想以上に高進してFRBが引き締め過ぎる」ことだが、明らかにこういう話は出ていない。
- 1月30日のFOMCで、マーケットはパウエルFRB議長とFOMCから「これ以上ない贈り物」を受け取った。利上げを停止するだけでなく、「バランスシート縮小」も当初予想より小幅になるという内容の「ハト派スタンスの贈り物」だ。これで、「金利上昇への心配」だけでなく「流動性逼迫の心配」も後退した。
- 合わせて2月1日発表の「アメリカの雇用統計」も「完全にすばらしい数字」だった。特に、労働参加率の上昇は良かった。労働参加率は6年ぶりに高水準だったことは、株式市場にとってはとても朗報だ。これで、労働市場のひっ迫が少なくなり、「労働市場のひっ迫から賃金上昇へ、賃金上昇からインフレ上昇への波及」の心配が小さくなった。
- これは、労働市場に戻って来る人たちが多いので、労働市場がひっ迫せずに、賃金が急騰しない。結果、インフレ昂進が起こらないといった「株式市場にとっては絶妙に好ましいバランスだ。
インフレを恐れる必要のないFRBは、当面はハト派的なスタンスを継続できることでしょう。
その結果、シーゲル博士は、昨年末、「2019年のアメリカ株式市場は5%から15%上昇する」との予想を「2019年のアメリカ株式市場は10%から20%の上昇をするだろう」と上方修正しました。
(アメリカ株式市場は今年に入ってからすでに7〜8%上昇していますから、差し引いてもまだまだ「2〜3%から12〜13%」前後は上昇する可能性が残っているわけです。)
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ワイルドカードは「米中貿易協議」
シーゲル教授も、やはり、たとえトランプが国家非常事態宣言を発動して政府機関のシャットダウンを再開させようとしても、裁判所がこれを却下するので、「シャットダウンが再び起こることはない」と見ているようです。
一方で、博士は、米中貿易協議は「ワイルド・カード」だとしています。米中貿易協議の今後の進展次第では、上方リスクも下方リスクもあるとしています。
「3月1日のタイムリミットまでに米中の貿易交渉がうまくゆけば、そして、その時のアメリカの長期金利がまだ低ければ、アメリカ株式市場はまだまだ5%くらいの上昇が期待できるだろう。」としています。
「長期金利の上昇」が米国株式市場の最大の敵
2018年のアメリカ株式市場は、長期金利の上昇が壁になっていたことは、皆様ご存知の通りです。2018年10月の下落は、長期金利が3.25%にタッチしたときに始まりました。
やはり、2019年においても、長期金利の上昇がアメリカ株式市場の「最大の敵」になるようです。
シーゲル予測やJPモルガン予測は、あくまで「アメリカの長期金利が安定している」ことが前提の予測ですが、今のアメリカ株が2019年にはうまくゆけば10%〜20%の上昇を示すことでしょう。
ということで、今年もアメリカの長期金利の上昇には要注意です。
当メルマガでは、ラガルドIMFなどの通貨マフィアたちから、黒田日銀は、アメリカの長期金利の上昇を抑え込むためにも、3月か4月には「外債購入」という「追加の金融緩和策」を求められている可能性が高いと、予測しています。
【要注意!】なお、資産形成および投資は、必ず「自己責任」でお願いします。この記事は藤井まり子の個人的見解を述べたもので、当メルマガ及び記事を読むことで何らかの経済的及び精神的被害を被ったとしても 当方は一切責任を負いません。
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『藤井まり子の資産形成プレミアム・レポート』(2019年2月5日号)より一部抜粋、再構成
※太字はMONEY VOICE編集部による
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