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強固な反日は2022年まで続く…独善主義でルール無視、韓国「硬直化経済」に大きな落し穴=勝又壽良

韓国・文政権が落ち着いて政権運営できるのは今年と来年の2年間です。雇用を破壊した「最低賃金引き上げ」は継続され、日韓外交の冷却化も2022年まで続きます。(『勝又壽良の経済時評』勝又壽良)

※本記事は有料メルマガ『勝又壽良の経済時評』2019年2月4日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にご購読をどうぞ。当月配信済みのバックナンバーもすぐ読めます。

プロフィール:勝又壽良(かつまた ひさよし)
元『週刊東洋経済』編集長。静岡県出身。横浜市立大学商学部卒。経済学博士。1961年4月、東洋経済新報社編集局入社。週刊東洋経済編集長、取締役編集局長、主幹を経て退社。東海大学教養学部教授、教養学部長を歴任して独立。

文在寅政権は「雇用を破壊しただけ」という最悪の政権になる…?

2022年5月までは「日韓外交の冷却化」が続く

韓国は、文在寅政権の出現で大きな曲がり角に立っています。「86世代」と言われる民族主義グループが、大統領府の実権を握っているからです。

「86世代」とは、1960年代生まれ、1980年代に学生時代を過ごし、強烈な学生闘争に参加人たちのことです。政治意識が先鋭で、北朝鮮の「主体(チュチェ)思想」に心酔しています。政治思想は、「反日米・親中朝」路線が鮮明です。

文政権が生まれた2017年5月以来、日韓関係はすべてご破算になったのは、この「86世代」による「反日路線」の結果でしょう。となると、文政権が続く2022年5月までは、日韓外交の冷却化が続くものと見るほかありません。

問題は、この間に韓国経済が世界経済の激変について行けず、通貨危機に遭遇した場合、どこへSOSを打つのか、です。

日本が、韓国の問題について心配する必要はありません。ただ、過去2回の通貨危機では日本へ資金の緊急支援を求めてきました。現在の日韓関係は、冷却状態です。その日本へ「お願いします」とは言えないでしょう。

このように、韓国政府はアマチュア集団と言えます。韓国外交部(外務省)には過去、日韓交渉に関わった「ジャパン・スクール」と言われる人々が、文政権によってすべて追放されました。日本との交渉を「積弊(積年の弊害)」扱いしている結果です。

文大統領は、口を開けば「日韓関係は未来志向」と言っています。現実は「過去志向」で、未来の問題は何一つ語っていません。本腰を入れた「日韓首脳会談」は一度も開かれていないのです。

両国は、近くて、最も遠い国の関係となっています。

文大統領の腹心が「選挙に関する世論操作」で実刑判決へ

文政権は、日本に対してだけ「独善主義」を貫いているのではありません

韓国国内でも、同じような姿勢を取っています。大統領府も与党「共に民主党」も、自らの反対派には容赦ない攻撃を加えています。これが、「革新派」の看板を掲げる政党の言動だろうか。そういう疑問を持たせるほどです。

文大統領の腹心とされる金慶洙(キム・ギョンス)慶尚南道知事は、文大統領が当選した2017年の大統領選挙に関する世論操作事件でつい最近、2年の実刑判決を受けました。金被告が国会議員だった2016年から、不正プログラムを使ったインターネット上の世論工作を元「共に民主党」党員に指示し、17年5月の大統領選で文氏に有利になる操作を行って、その罪が問われました。

この事件は、発覚後の警察捜査がずさんだった点も問題になりました。大統領側の圧力か、警察の忖度かは不明ですが、この事件をうやむやに葬り去る動きが鮮明でした。韓国司法が、権力に対していかに迎合的であるか。それを示す典型例でした。

さらに驚くべきことは、この事件の担当裁判長へ「弾劾」という個人攻撃を始めているのです。日本であれば、「判決を真摯に受け止め、国民に謝罪する」というコメントが出るものです。そういう気配が全くないどころか、韓国与党は要旨、次のような挑戦的な談話を発表しました。

「前大法院長の逮捕に対す報復裁判であり非常に遺憾に思う。我が党は『司法介入勢力・積弊清算対策委員会』を構成するだろう。前大法院長の司法介入にかかわっている判事の人的清算が行われなければ司法改革は難しい。法的手続きである(裁判官)弾劾を含むさまざまな方策を考えたい」

出典:『朝鮮日報』1月31日付

前大法院長(最高裁長官)が、朴政権当時に旧徴用工問題の判決遅延に関与した、という文政権の強引な主張により逮捕されました。前記の裁判長は、この前大法院長の秘書役をやったという言いがかりを付け、無罪にさせようという魂胆です。暴力団並の難癖です。

Next: 韓国は信念過剰で現実を見ていない?韓国経済を貶めた最低賃金の大幅引き上げ



身勝手な理想主義

韓国は、道徳主義を標榜しています。

慰安婦問題で、徹底的に日本を批判する上で、道徳主義は最高の「攻撃武器」になっています。韓国の道徳主義は、自らが教養を高め修練を積んで、他人に寛容になるという意味ではありません。相手を攻撃する手段に使っているのです。

前記の裁判長は、朴槿惠・前大統領の裁判で有罪判決を下しました。この時、「共に民主党」は素晴らしい判決であると裁判長を激賞しました。ところが、自分が不利になると「弾劾だ」と騒ぎ立てる。韓国の道徳主義とは、この程度のものです。

この道徳主義は、身内に優しく外部に冷淡という特性を持っています。

韓国経済を語るとき、必ず出てくるのが最低賃金の大幅引上げです。経済の実態を無視し、去年と今年で約30%になる最賃引き上げに耐えられる中小・零細企業は限られます。

それにも関わらず、大幅引上げに踏み切った背景は、文政権の支持母体が労働組合と市民団体であるからです。彼ら仲間の要求を満たすことが、韓国流道徳主義なのでしょう。

その結果、多くの国民が職を失ってもわれ関せず、なのです。前記の支持母体は、選挙運動になると大車輪で活動してくれる大事な味方なのです。

多くの経済界の人々が、文大統領による1月10日の新年記者会見を見て、次のような結論を下しました。「新年の経済政策基調がこれまでと大きく変わるとは思えない」というものでした。今回の新年の挨拶で、文大統領は現政権の経済路線のトーレードマークである「所得主導成長」と、所得主導成長を支える核心政策である「最低賃金引き上げ」はそれぞれ1回ずつ言及に抑えました。

その代わり、経済(35回)・成長(29回)・革新(21回)などの単語が踊りました。だが、演説の最後で、「『革新的包容国家』を成し遂げる」と締め括ったのです。これによって、最低賃金の大幅引上げの目的である、分配政策重視の所得主導成長=包容成長にこだわっていることが分りました。これを実現するためには、失業者を増やし経済成長率を低下させても構わない。「革新的包容国家」のための「必要コスト」という認識と思われます。

文大統領は、「一度も経験したことのない国をつくりたい」とも言っています。文氏にとってそれは「正しいこと」であり、従って「変えられないもの」だという位置づけのようです。

「一度も経験したことのない国…」とは結局、自分たちはこれまでとは全く違う世の中をつくりたい、という意味のようです。韓国の識者には、革命をやりたいという意味に受け取られています。

信念過剰で現実見ず

文大統領が金科玉条とする「革新的包容国家」は、労働者が高い賃金を得て生活できる理想図を描いています。

これを実現するには、高い経済成長率を実現し、公平な分配政策を行なうことです。文氏には、前段の高い経済成長率の概念が消えており、後段の高い分配率だけが頭にある、偏った理想図に囚われています。とうてい実現不可能な代物です。

文大統領が、この「革新的包容国家」にこだわるところに、韓国式の「道徳主義」が顔を出しています。自分の描く夢は絶対的に正しいものである。反対する者は「不道徳者」であるという位置づけと思われます。

だから、最低賃金の大幅引上げが、経済的混乱をもたらしても、それは過渡的な現象である。必ず軌道に乗って成功すると確信しているのでしょう。

優れた政治家の条件は、自らの理想と客観的な現実のギャップを調和する能力が必要とされています。すなわち、政治家としてのバランス感覚です。文大統領にはこれが著しく欠けているのです。政治の理想は信念倫理、現実に対する態度は責任倫理と呼ばれています。

文氏は、信念倫理>責任倫理が目立ち過ぎます。理想型は、信念倫理=責任倫理です。

信念倫理=責任倫理という政治家は、まれな存在なのでしょう。韓国特有の「道徳主義」は、自己反省を伴わず、ひたすら相手を罵倒する手段に堕しています。日韓関係では、こういう道徳主義を頻繁に聞かされます。その度に日本は、嫌悪感を覚えるだけです。韓国も、こういう点に気付く時期です。

Next: さらなる賃上げも?消費刺激論に乗ると、韓国経済は取り返しの付かない事態に…



2020年が韓国経済のタイムリミット

文大統領の任期は、2022年5月までです。21年は次期大統領選挙の年です。

この年は、韓国社会の政治的な注目が、選挙運動に向けられます。政策議論は二の次となります。こうなると、真に政策議論に集中できるのは、今年と来年だけとなります。この貴重な2年間が、道徳主義の「革新的包容国家論」に時間を費やされる。そういうリスクを考えたことがあるでしょうか。

来年の最低賃金の引上げ議論は、これから始ります。昨年(16.4%)、今年(10.9%)と引上げられた後、来年はどの程度の引上げになるのか。

文政権ですでに、約30%の引き上げた後だけに、引上げ幅をめぐり議論が沸騰すると思います。これまでは、使用者側の意見を完全に無視し、労働者側の主張がほぼ受入れられる形で決定しました。

韓国経済は、昨年10月から不況局面に入っています。あるいは、これを理由に最低賃金の大幅引上げによる消費刺激論が出されるかもしれません。この手の議論は、間違いです。

賃上げ率を生産性上昇並みに抑えて、企業収益のバランスを取るしかありません。それが、設備投資を刺激し雇用を増やすからです。消費を刺激するには、減税政策によるべきでしょう。

大幅賃上げによる消費刺激論に乗ると、韓国経済は取り返しの付かない事態に至ると思われます。

最賃で雇用を破壊

昨年、起こった雇用悪化に注目すべきです。それが、大幅な最低賃金引上の結末です。

18年1年間の就業者増加幅は9万7,000人にとどまりました。17年の就業者増加幅の3分の1にすぎません。2009年のグローバル金融危機以降で、最も少ない年となりました。失業者数は107万3,000人と、同じ統計基準で比較が可能な2000年以降で最も多かったのです。失業率は3.8%と、17年ぶりの最高水準となりました。18年の雇用成績は失格でした。

先に、昨年の就業者は9万7,000人増えた指摘しました。これには、次のような問題点を抱えたものでした。

<雇用減少要因>

雇用の核心である非農業民間雇用は、1万6,000人も減少しました。最低賃金引上げの影響を直接受け、宿泊・飲食店業、卸・小売業業はもちろん、「持続可能な良い職場」といえる製造業就業者も5万人以上減りました。

<雇用増加要因>

公共・社会福祉など「税金型雇用」の増加です。54兆ウォン(約5兆2,200億円)の「雇用税金」を投入して、公共機関を通じた短期雇用を急増させました。大学の教室で電気を消すアルバイト採用を増やしたという、笑うに笑えない実話が報じられました。また、高齢層中心の農林漁業の雇用で埋めたのです。

以上の増減要因を見ますと、質的な雇用状況がかなり悪化していることが分かります。今年の政府による就業者増加目標は、15万人増となっています。

今年の景気情勢は昨年よりも悪化しています。民間での安定的雇用が減って、「税金型雇用」の増加になるのでしょう。昨年は、約5兆2,200億円もの財政資金を投入して確保した雇用増でした。今年は10兆円近い財政資金の投入を迫られるでしょう。

実態を無視した最低賃金の大幅引上げが、こうした財政負担をもたらしたのです。

Next: 文在寅政権は「雇用を破壊しただけ」という最悪の政権になりかねない



文政権が落ち着いて政権運営できるのは、今年と来年の2年間だけ

高齢化で社会保障費が増えている中で、間違った最低賃金の引上げが新たな財政圧迫要因になっています。文大統領の固執する「革新的包容国家」論は、韓国財政を圧迫し、民間活力を奪う最悪の政策になっています。

先に、指摘したように文政権が落ち着いて政権運営できるのは今年と来年の2年間です。

今年は、すでに最低賃金の大幅引上げに踏み切っています。残りは来年の政策運営ですが、再び、大幅最賃引き上げにこだわるでしょう。

となると、文政権は、これといった経済政策を何もやらず、「雇用を破壊しただけ」という最悪の政権になりかねません。

世界不況に無防備

最近、世界的な政治・経済リスク分析機関であるユーラシアグループのイアン・ブレマー会長が、韓国経済について指摘しています――
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勝又壽良の経済時評』(2019年2月4日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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勝又壽良の経済時評

[月額864円(税込)/月 毎週木曜日(年末年始を除く)予定]
経済記者30年と大学教授17年の経験を生かして、内外の経済問題について取り上げる。2010年からブログを毎日、書き続けてきた。この間、著書も数冊出版している。今後も、この姿勢を続ける。

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